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26.リリスの秘策

顔を真っ赤にしているリリスと共に二階席の個室に通されたブラッディ。椅子はなぜかテーブルの前に長椅子一つしかなく、横並びにすわり外の景色を眺められるようになっている。



「それではメニューを選んだら呼んでくださいね」



 店員さんが持ってきたメニューを見ると『ラブラブパンケーキ』というハート形のパンケーキ(なぜかナイフとフォークは一つしかない)と『ラブラブジュース』という巨大なハートのコップにストローの先が二つにわかれており、一緒に飲むジュースなど、バカップル専用のメニューが並んでいた。

 それもそのはず、このお店がゲームでも存在しており、主人公と誘ったヒロインの好感度をあげるイベントが発生するのである。



「リリス……無理をしなくてもいいんだよ。間違いでしたっていって出ても……」

「いえ……ジャスティス仮面様と一緒にここに来たかったんです。『ラブラブパンケーキ』をお願いします」



 リリスは顔を真っ赤にしながらやけくそ気味に店員に注文すると、まっすぐブラッディを見つめる。その目は何かを決意した様子である。



「ジャスティス仮面様と初めて会ったのは私が人さらいに襲われた時でしたね」

「ああ、懐かしいな……」

「あの時は……お義兄様が急にそっけなくなってしまわれて、不安だったので、(お義兄様に)助けていただいて本当にうれしかったんですよ」



 リリスは改めて感謝の気持ちを伝えているのだが、彼女が自分の正体を知っていることを知らないため、すさまじい罪悪感に襲われるブラッディ。

 そのため思わず、ずっと疑問に思っていたことをつい聞いてしまう。



「リリスはブラッディのことを嫌いになっているのか?」

「え……?」



 その言葉に一瞬きょとんとしたリリスだったが、即座に否定する。



「そんなはずはないじゃないですか!! お義兄様にはとっても感謝してますし、尊敬もしています。私がナイトメア家に引き取られて不安がっている時に優しくしてくれましたし、今だって領主のお仕事がお忙しいのに、ちゃんと私のことを気にかけてくださっているのはわかっていますから。まあ……もうちょっと構ってほしいですけど……」

「ああ、そうか。それならよかった」



 珍しく声を張り上げるリリスに驚きつつも、彼女に嫌われていないとわかりブラッディはほっと一息つく。ナツメやソラからも大丈夫と言われていたが、やはり本人の言葉が一番効くのだ。



「むしろ、お義兄様の方こそ、私のことを嫌いになっているんじゃないかなって不安なくらいです。私は結構わがままですし、愛想をつかされないか不安で……」

「そんなはずはないだろう。ブラッディはリリスのことを大切に思っているよ!! リリスがいるからこそ、魔法の訓練も頑張れたし、笑顔を見ているだけでどんなに疲れてても元気がでる。それに思い悩んでいる時に美味しいクッキーをつくってくれて、気が利くいい奥さんになるだろうってほめてたぞ」

「いい奥さんですか……お義兄さまがそんなことを……えへへ、なんだか恥ずかしいですね」



 そして、リリスもまた久々にブラッディに直接ほめてもらってうれしさのあまり表情を崩す。特に奥さんという言葉にちょっとした未来を妄想してしまったのも無理はないだろう。

 だが、嬉しそうなリリスにブラッディはつい余計なことまで言ってしまう。



「ああ、だから、リリスには王都の魔法学校にいって立派な旦那さんを見つけてほしいと言っていたよ」

「立派な旦那さん……ですか……私は昔、お義兄さまと結婚の約束をしたのですが……」



 すぅーっとリリスのハイライトが消えていくのにブラッディは気付かない。



「ブラッディは君にふさわしくないと思うよ。あいつはしょせん男爵だし、君を守り切るほどの強さもない。彼もリリスほどの素晴らしい少女ならばもっと素敵な人を見つけられるだろうって言っていたぞ。魔法学校はすごいぞ。王子や賢者、全属性魔法を使いこなす英雄の素質を持つ人間だっているんだ。だから、結婚相手には困らな……リリス? どうしたんだ?」

「いえ、これはここで白黒つけなきゃいけないなって確信しただけです」



 ゲームのメインキャラクターたちを紹介していくブラッディだったが、リリスはとっても不満そうに頬を膨らませていた。

 俺やっちゃいました状態だったが、リリスに詳しく聞く前に店員がやってきた。



「はーい、『ラブラブパンケーキ』お待たせしましたー。楽しんでくださいね」



 テーブルに置かれたのは大きなハート形のパンケーキにカップルが交互に食べさせるように、ナイフとフォークが一つずつある。



「ああ、美味しそうだな……どっちから食べ……」

「てい!!」



 不穏な空気に話題を変えようとするブラッディを無視して、リリスがパンケーキを大きく切ってフォークに刺して、ブラッディに差し出す。

 ただしそのサイズは顔の4分の一くらいの巨大なサイズである。



「ジャスティス仮面様あーん♡ です」

「いや、でもこのサイズはくちにはいらないし、仮面がクリームで汚れてしまう」

「それならば仮面をとればいいんじゃないですか? ジャスティス仮面様あーん♡ です」



 ほほを膨らましたままフォークを差し出すリリス。これが彼女とソラの考えた作戦だった。無理やり仮面をとっちゃえよという意見もあるだろうが、ブラッディに嫌われたくないし、彼を傷つけたくないリリスにはそんなことはできなかった。

 いろいろと精一杯考えたうえでの作戦なのである。恋する相手にはちょっと……? ポンコツなリリスだった。

 そして、わざわざ個室を選んだのもほかの人間にはその正体がばれないようにという配慮である。



「いや、リリス……」

「食べてくださらないのですか?」



 悲しそうな顔をするリリスにブラッディの抵抗が止まる。彼としても推しの悲しむ顔はみたくないし、推しが「あーん」をしてくれているのだ。

 食べたい……食べたいが、仮面が汚れてしまう。かといって仮面をとれば正体がばれてしまうのだ。それではこれまでの頑張りが無になってしまう。

 そんな優しくもまぬけな応酬をしている時だった。



「ふふふ、ようやくみつけたよ。ジャスティス仮面」

「うおおおおお?」

「きゃぁぁぁぁ」



 突然の乱入者に思わず悲鳴を上げながらもリリスを守るブラッディ。その様子を見て浮遊魔法をつかっている乱入者は笑う。



「初めまして、僕の名前はヘクトル。君たちが邪魔をしてくれたヘラ教団の……うわぁぁぁぁ?」

「なんで邪魔をするんですか!! もう、ばか!!」

「なんだ、この女!! 名前を名乗っている間にナイフをなげるんじゃない」



 激高したリリスにヘクトルが思わず悲鳴をあげるのだった。



『大切なお願いがあります』


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