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22.デートフラグ?

「リリスの魔力か……」

「はい、タルタロスという男が最後に残した言葉が気になりますね……」



 あの後、タルタロスたちを捕らえたブラッディたちだったが、彼らは「俺たちを倒しても無駄だ。そのガキの魔力はわかるやつにはわかるぞ……それこそ、我らだけでなくて、魔物たちもなぁ」と捨て台詞を吐いて歯に仕込んであった毒で自害したのだ。

 一応リリスにセクハラしようとしたルックとやらが生きているが、何か恐ろしいものをみたのか、廃人となってしまっている。



「それにしても人気者ですね……ブラッディ様」

「ああ、この手紙か。アンダースタンさんからのお詫びだよ。あの人も娘を救うために必死だったんだろうな。相場より高い金をもらったし、ヘラ教はもう追放するらしいからひとまずは安心だな」



 今回の件はリリスがまきこまれたということで、ブラッディとしても話し合いを済ましてある。大事な愛娘の治療を焦るあまり新興宗教を屋敷に招きこのようなことになって申し訳ないと、謝罪と共にいくらかのお金をもらったのだ。

 それはもちろん、娘のニアを守ってくれたお礼のお金も入っているからだなのだが、正体がばれているとしらないブラッディは気付かない。



「そちらの手紙ではありません。何やら可愛らしい令嬢たちからお手紙をもらったようで……」

「ああ、これか……リリスの友人たちからいきなり今度食事でもどうですかって誘われたんだけど何なんだろうな? ブラッディとしては会話した覚えがないんだが……モテ期でもきたのかな?」

「なるほど……」



 明らかな好意をにじませてたお誘いの手紙の意図に全然気づかず軽口を叩くブラッディを見るナツメの目は冷たい。内心ではこの鈍感男とでもおもっているのであろう。

 ブラッディは正体がばれていると知らないから無理もないが少女たちは絶体絶命の危機を救ってもらったのだ。あの年齢の少女は英雄へのあこがれが強い。余計かっこよく見えたのだろう。それが仮に中二病な格好であってもだ。

 そんなナツメに気づかず仕事をしているとノックの音が響き扉が開かれる。



「お義兄様クッキーを焼いたのですがいかがでしょうか?」



 可愛らしいハートマークの焼きたてのクッキーが盛られた皿を手に得意げなリリスが入ってきた。彼女は趣味で焼き菓子をつくってはブラッディに持ってくるのである。

 それは彼女がこの家に引き取られた時に世話になったお礼にと作ってからの恒例である。ブラッディは気付いていないが、今回助けてくれたお礼を素直に受け取らないであろう彼への感謝をこうして伝えているのだ。



「ああ……置いておいてくれ。暇になったら食べる」



 ぶっきらぼうな口調で返答し、書類とにらめっこをしているブラッディだったが、その表情は緩みまくっていた。そして、ナツメがリリスにそれをアイコンタクトで伝える。

 いつも通りに光景である。ここまでは……



「お義兄様……その手紙は何でしょうか?」



 リリスの視線に入ったのは仕事で使う封筒ではなく可愛らしく少しこじゃれた封筒である。



「ん……ああ、気にするな。別にたいしたことじゃ……」

「お義兄様……その手紙は何でしょうか?」

「え? どうしたんだ?」



 いつもならばすぐ引き下がるリリスだったが、不気味な笑みを浮かべておりその放つプレッシャーにちょっとびびるブラッディ。

 視線でナツメに助けを求めると、彼女は任せろとばかりにうなづいた。



「リリス様の二人のご友人からお食事のさそいのようですよ。ブラッディ様は俺にもモテ期がきたぜ、いぇーい♪ と嬉しそうにお手紙を見せびらかしてました」

「別に俺はそんな風には言っていないだろうが!!」

「ふぅん……そうなんですね……流石はお義兄様おモテになりますね。それで、どうされるのですか?」



 さすがはラスボス令嬢というべきか、笑顔だというのになぜか恐ろしいプレッシャーを放つリリスにブラッディの全身からなぜか冷や汗がながれてくる。そして、脳裏に浮かぶのは選択肢を間違えたら、恐ろしいことになるというゲーマーの直感であった。



「今は領主になって間もないし、やることもいろいろとあるからな……断るつもりだ」



 これはブラッディの本音である。領主の仕事が忙しい上にリリスを守ると誓っているのだ。彼が転生してやることは貴族令嬢とのラブコメではなく、推しのリリスを見守ることなのだ。

 彼女の危機が去らない限りその気はなかった。



「そうなのですね……その……失礼なことを聞いてしまい申し訳ありませんでした」



 ブラッディの真剣な声に本心だとわかったのだろう。つい取り乱してしまったとへこむリリス。そんな彼女の様子を見てナツメが助け船を出す。



「そういうリリス様はデートをしたい相手とかはいらっしゃらないのですか?」

「え、私がデートですか……いない……わけではないです」




 先ほどまでのプレッシャーを放っていた姿はどこにいったやら顔を真っ赤にしてチラチラとブラッディを見つめるが、かんじんの彼は……



「は? まじかよ、リリスは気になっている相手とかいるのか?」



 キョトンとした顔で聞き返すざまである。一瞬ほほを大きくふくらますリリスだが、名案が浮かんだとばかりに笑顔を浮かべる。



「はい、ジャスティス仮面様とデートがしたいです!! お義兄様はジャスティス仮面様とご友人なのですよね? お誘いして頂けないでしょうか?」

「な、ジャスティス仮面だと……」



 リリスの言葉にブラッディはどうこたえようか迷う。ジャスティス仮面の正体はブラッディであることをリリスは知らないはずだ。

 まあ、ジャスティス仮面への想いは俺がヒーローにあこがれていたような感情だろう。なら、一回くらいデートをしても彼女の人生にはそんなに影響は与えないじゃないだろうか?

 リリスに……というか領民のほとんどに正体がばれているとは知らないブラッディはそう結論を下した。



「ああ、いいだろう。ただし、あいつは忙しいからな。すこし時間がかかるとおもえ」

「はい、ありがとうございます。お義兄様!!」



 よほどうれしいのか満面の笑みを浮かべ可愛らしい声で鼻歌まで歌ってさっていくリリスを何とかしかめっつらを保ちながら見送るのだった。



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