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21.邪教の会議

「まさか、ルックとタルタロスがやられるとはな……並みの騎士や冒険者ならば相手にならないだけの実力はあったはずだが……」

「生き延びた信者たちからの報告はどうなっている? あいつらのことだ。何かを見つけたのだろう? 徹底的に調査せねばなるまい」



 ここはブラッディ領から遠く離れた廃教会である。そこには顔を隠した数人の人影が集まり話し合っていた。

 彼らはヘラ教の司祭であり、予想外のことがおきたため招集したのである。


 

「はっ!! 報告によりますと、ジャスティス仮面と名乗る人物に全滅させられそうです」

「ジャスティス仮面だと……なんだ、それはふざけているのか?」



 部下の一人に司祭の一人が怒鳴りちらす。まあ、無理もないだろう。それこそ、絵本に出てくる英雄のような名前なのだ。

 ブラッディ領の近辺の人間でなければ真剣な場でその名前を出されれば一笑するか、彼の様に怒鳴るのが普通だ。



「彼の報告は正しいよ。ジャスティス仮面……ブラッディ領にて魔物や盗賊を狩る義賊だね。危険度はBだったけど、思った以上に強かったようだ」

「ヘクトル司教!! なぜここに?」



 送れてやってきたひときわ豪華なローブに身にまとっている青年の言葉に、司祭たちは言葉を止め尊敬の念の籠った視線を向けて、祈りをささげる。

 ある程度の活躍をすれば認められる司祭とは違い、ヘラの教の司教は女神の祝福を受け、強力な力を持つ存在ということもあり彼らの中では特別なのである。

 そして、その実力もまた司祭とは比べ物にならない。 



「ああ、天才である僕に気おされるのはわかるけど、気にしないで。僕はちょっと気になったことがあったから来ただけさ。報告を続けてよ」

「はっ!! わかりました」



 緊張しながらもヘラ教徒が先ほどの続きを報告する。



「ルック司祭たちはとある貴族と懇意になるために、祝福の薬をもって貴族令嬢の病を治療していたのですが、そこに強力な魔力を持つ人間がやってきたため、急遽計画をかえてその人間をさらうことにしたそうです。ただ、その際に入った邪魔者がジャスティス仮面と呼ばれる人物なのです」

「そのものの正体はわからないのか!? 仮面をかぶって正体を隠しているとはいえ、それだけの実力を持っているのだ。噂くらいはあるだろう?」



 司教がいるということで、良いところを見せようとしているのか司祭が急かすと報告していた信者も司教をちらちらと見ながら早口に答える。



「それが……正体を隠しているのですが、隠れていないのです」

「どういうことだ? それは……」

「それが、正体がバレバレなんです。冒険者や商人はもちろん、街の子供までみんなジャスティス仮面の正体は領主であるブラッディ=ナイトメアだと言っているんですよ」

「「は?」」



 司祭たちが間の抜けた声を上げるなか、ヘクトルのみが楽しそうにほほ笑んでいる。



「それならば、そのブラッディとやらを倒せばいいのだろう? そいつを倒してから魔力の持ち主を探せば……」

「はぁーーー、君らは実に安直だ!! 天才である僕が来てよかったよ!!」



 ようやくこれからの方針が固まったと安堵の吐息を漏らす司祭たちだったが、ヘクトルの言葉にびくっと体を震わせる。



「考えてみなよ。わざわざ顔を隠しているのに、正体がばれるようなへまをするわけがないだろう? それならば、あえてそのブラッディという男に注意を逸らす作戦に決まっているじゃないか。むしろ、ブラッディは白さ!! 彼と敵対しているもの、もしくは疎んじているものをしらべるんだ」

「さすがは知恵の司教ヘクトル様です!!」

「我らが女神の加護があらんことを!!」



 予想もしなかった言葉に感動しヘクトルに祈りをささげる司祭たちをみて、彼は得意げな笑みを浮かべて声をはりあげる。




「手始めに僕自らも調査に加わろう。震えるがいいさ、天才である僕の管轄で邪魔をしたんだ。生きていられると思わないことだね、ジャスティス仮面よ!!」



 ヘクトルの狂った笑いがあたりにひびくのだった。そうして、ブラッディのピンチは人知れずヘラ教徒の司教によって救われたのだった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 結果、バレバレのままで物語は進むとw
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