2、私は追い付けるだろうか
☆八乙女四葉サイド☆
別に私は先輩を好いている訳じゃ無い。
そうだ。
私が先輩を好いている訳が無い。
だ、だからこそ私は先輩の彼女に裏切られても喜んでないしね。
そうなのだ。
「...まあどっちにせよ」
だけどそれはそうと先輩が可哀想だ。
どっちみちにせよ私が助けてあげたいと思える。
そう考えながら教室に向かうと志村三葉がやって来た。
同級生の女の子だが私が四葉で彼女が三葉なので仲が良い。
きっかけはそれだった。
「何だか顔が不安定な感じの顔色だけど大丈夫?」
「うん?...そうかな。不安定に見える?」
「そうだね。...何かその。悩んでいる様な」
「...そっか。...実は先輩の話なんだけど」
「あ。野木山先輩の?」
「そうだね」
そして私はヒソヒソな声で「彼女に浮気されたんだって」と話す。
「え」と唖然とする三葉。
私はその姿に頷きながら言葉を発する。
「だから励ましてあげたい」
「それはつまり付き合いたいって事?」
「ち、違うもん」
「アハハ。冗談だよ。...そうだね。じゃあ本屋さんに行ってみたら?本好きでしょ?」
「そうだね。...それは言えるかもね」
「うん。それが良いと思う」
私は納得しながら三葉に断りを入れてから椅子に腰掛ける。
それから荷物を下ろしてから教科書を準備する。
三葉は他のクラスメイトに許可を貰って目の前に腰かけた。
そして私に向いてから外を見た。
「...浮気とか最低だね。彼女さんがどんな人か知らないけど。やり方が汚い」
「そだね。...私は許せない」
「それだけ燃え上がるのはやっぱり恋じゃ?」
「ち、違うよ!わ、私は...」
「でもさ。四葉。陰から見たら四葉可愛いし」
「何を言っているの。三葉」
「だからもうアタックしても良いじゃないかって思うって言いたい」
私はその言葉に考え込む。
それから「私は釣り合わない。先輩とはね」と苦笑して肩を竦める。
だって先輩は天才だ。
今は特進クラスに居るし。
だからこそ私の様なアホでは釣り合わない。
「テストとか成績も優秀だから私じゃ無理」
「だけど...このままじゃまた」
「...それは言わない約束でしょう」
「でも四葉は後悔しているんだよね?」
「...確かにね。でももう小学校時代の初恋の話だから。彼には伝え損ねたけどね」
「...四葉。それと同じでまた後悔する事になるよ」
「ならないよ。私はどうあっても釣り合わない」
私の初恋。
それは甘酸っぱいものだった。
小学校2年生の頃の話だ。
膝を怪我をしていた時に通り掛かった男の子。
その日の数分しか会わず顔を覚えて無いが上級生のその少年に助けられた。
だけど少年は翌日になりお礼を言おうとしたら直ぐ学校から居なくなったのだ。
聞いた話では親の都合で転校したという話だった。
「...私はその人もそうだけど先輩も...まあ大丈夫」
「...大丈夫?何が?今と昔の初恋は違うよ。...もしかしたらその少年が野木山先輩の可能性も」
「無いよ。小学校の時の彼はアメリカに引っ越したらしいし」
「...」
三葉は私を見ながら複雑な顔をする。
だって私はアホだしね。
天才の先輩が取られる姿を想像するのは嫌だけど。
だけど仕方が無いんだ。
私はあくまでバックアップだから。
そんなものだ。
「...でもやっぱり何かその...四葉には幸せになってほしいし」
「...?」
「...どうにかする」
「どうにかするってどういうの?」
「四葉と野木山先輩がくっ付く様に」
「...有難う。だけどそれは...」
「後悔先に立たずだよ」
三葉はそう言いながら笑顔になる。
いつも三葉が言っている言葉だ。
私はその言葉に「まあそうだね」と曖昧に返事をした。
どういう作戦をしても私は先輩の隣に立つ自信はないから。
その様な意味で曖昧に。




