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 1発10キロ弱で1弾倉20発。マガジンの重さもあるから約200キロ。

 これを2分で撃ちきるわけだよ。

 今はまだドーム内にも予備はあるから交換できるが、そろそろ下の階から次を持ってこないと。





 ……って無理だろこれ。いったい何人で運用する予定だったんだよ!

 階段1段上がっただけで膝が砕けるわ。


「いつまで掛かっているんだ! もういい、お前は周辺に集まってくる敵の対応をしていろ!」


 叫びながら杉林(すぎばやし)が両手にそれぞれの弾倉を抱えて階段を駆け上がって行く。

 あ、はい、そう致します。

 ああいったのが運用するのね。





 上に行くと、地上に上がった敵の相当数が一掃されていた。

 というか、その痕跡だな。

 地上は爆発の跡が生々しく残り、無数のビーンの屍が飛び散っている。


 圧巻なのは清水港だ。

 ここに配備されたモノと同じ88ミリ連装砲の群れによって、三保半島から清水港の間の海に入る前に蹴散らしている。

 しかもその砲撃はいつまで経っても止まらない。

 掃討に準備したあったんだな。


「あそこの海は奴等の巣じゃないのか?」


「海の全部が連中の巣って訳じゃないわ」


 さっきまでバカでかい音を立てて撃ちまくっていたこっちの88ミリ砲は、さすがに暫くは使えない。

 砲身が焼けついたせいだ。あれは今日はもう撃てないな。

 そんな訳で、来栖(くるす)が降りてきた。88ミリ砲は冷却のため、まだ暫く上げっぱなしだけど。


「海岸線とかはね、完全に油断があったのよ。だけど船の往来が激しい所なんかはある意味都市部のようなものだし」


「敵が来れば分かるか。でも以前戦った用宗って港はどうなんだ?」


「やっぱり規模の問題かしらね。過疎地の村なんかと一緒。敵が来れば守るけど、その届く範囲には限界があるのよ」


 つまりはそういう所もやられたって事か。

 まあここと群馬が分断されたってのはそういう事なんだろうが。


「とはいってもあそこまで市街地に近いんだ。そう簡単にはやられないだろう」


「静岡は安倍川を挟んで駿府城側がお町。こっちがお外。格差があるのよ。まあその頃、私はこっちにいなかったから詳しくは知らないわ」


「へえ」


 そんな事を話している間にも、三保半島からの上陸は抑えられている。

 清水港全体からも、敵が湧いてくる様子はない。

 あの辺りは来栖が言うように、まだ人類の支配地域なわけか。

 だけど上陸させてしまったらアウトか。


「最終防衛戦は3年生がやっているから、多分任せていいわ。こちらはこちらの仕事をしましょう」


 例の2人――じゃないか、3人いるんだったな。

 まだ1人には会ったことは無いが、火線を構成しているのは3門だけじゃない。

 そういや俺は他の人たちと共闘した事が無いが、普通の兵士の指揮や育成もしているのだった。

 俺もいつかそんな事までやる事になるのだろうか?

 ほんのちょっと前の俺だったら、そんな馬鹿な考えなど全力で否定した。

 だけど今は……どうなんだろう。


「ふう、暫く休憩です」


 そう言いながら高円寺(こうえんじ)もやって来た。

 今は杉林(すぎばやし)が周囲を警戒しているが、特に下を走り回るビーンを撃ったりはしない。完全に意味ないし。

 そんな訳で、暫しの休息だ。


 まあ来栖も高円寺も本人が休みたいわけじゃない。

 来栖は今は特にする事がないだけ。直近の害がない雑魚何ぞ相手に貴重な弾は使えないし。

 そして高円寺もまた、疲れたわけじゃない。まあいつもの銃身の焼け付きだ。

 俺の旧式銃に比べればマシな機構だが、それでもあれだけの大口径を撃ち続ければ限界はある。

 そして高円寺の銃身はそう簡単に冷えてはくれない。当たり前だが、熱した鉄に水をかけるとかは論外だぞ。


「それでこれからどうするんだ?」


 サンダースはここまでは来られないだろう。

 来たところで外のビーンと死闘を繰り広げるのがオチだ。

 となれば、予備の補充は無い。武器はここにあるだけだ。


 来栖や杉林、それに高円寺の予備銃なんかは弾やパーツの共有が出来る。

 しかし俺のはそうはいかない。銃も弾もオンリーワン。

 そもそも小口径だけに、最大の敵であるドリンクアーロンには厳しそうだ。

 純粋に硬いだけの相手には紳弾も意味は無いしな。

 まだ撃っていないが、正直俺の7.7ミリ弾では、徹甲弾を使っても有効射程は200メートル行くかどうか。

 しかもしれでは倒せない。そこに榴弾を撃ち込んでようやくだが、そんな至近距離の爆発に耐えられるのか?

 もう1種類弾はあるし、こいつに距離は関係ないが……。


「心配している事は分かるけど、私達も自殺しに来ているわけじゃないのよ?」


「どうせ余計な心配をしていたんだろう、一般人。100年早い」


「大丈夫です。第一波は殲滅しました。次までに補給する手はずです」


 補給と言ってもなあ……。

 外を走り回るビーンの群れ。数は少ないけど混ざっているあのクラゲ。

 TS毒とか死んでも食らいたくねえ。

 それ以前に、俺が喰らったら生きていられるかも不明だ。

 というか無理じゃね?

 それに――、


「少し気になったのだが、相手が集団で出てくるのって何で分かるんだ?」


「上よ」


 そう言って来栖が空を指さした。


「空には巣が無いっていったじゃない?」


「確かに聞いたな」


「それに巣と言っても、この世界全体を覆うようなことはしていないのよ」


「分かって老いるのは、そこがどんなに小さくとも中には広大な空間が広がっているくらいですね」


「ふーむ……そうか、人工衛星か!?」


「残念。それはもう全部落とされわ」


「あれば人類間の連絡ももっとスムーズなのですけど」


「じゃあ何の話をしているんだ?」


「貴方も自分で組み立てたでしょう? セスナよ、セスナ」


 あれか。


「巣の上空を飛行するとそれはもう凄い事になるので出来ませんが、私たちなら巣を刺激しないように境界ギリギリを飛べますので」


「それで連中が出てくるときの特徴は用宗港で見ただろう、一般人」


 ああ、分かった。

 少数ならともかく、集団が移動したらあの光で様子は分かるのか。





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