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戦いの音が鳴る

 3日後、2人は新品のセスナで飛び去って行った。

 なかなか慌ただしいものだ。

 正確に言えば予備機を回収するために車で2度も戻って来ての往復だったから相当なものだった。

 ちなみに俺も手伝わされたのだが、基本的に荷物運び程度しかやる事が無い。

 ただその時に――、


「やあ佐々森(ささもり)君、ちょっといいかな」


 なんでもやっいてる一ノ瀬(いちのせ)さんから呼び止められた。

 まあ休憩中だから良いけど。

 というか、そうでなくてもこの人には逆らわない方が良いな。


「なんでしょう?」


「また君の銃と弾を貸して欲しいのよ」


「まあ構いませんよ」


 以前の用宗港の戦い以外にも、連日の射撃訓練でいつも俺の愛銃は悲鳴を上げている。

 その度に可能な限りのメンテナンスは行うが、パーツの交換なんかではいつもお世話になっている。

 戦っていない時くらい構わないさ。

 ただ――、


「量産は無理そうなんでしょう?」


「これはちょっと驚いたというか、どうしてそう思ったの?」


「いや単純に、来栖(くるす)から3Dプリンターの話を聞いたからですよ。あそこまで派手にぶっ壊れたストックが何であんなに完璧に修理出来たのか少し疑問だったのですけど、まあ納得です。ただもしコピーが出来たら、絶対俺に試し撃ちをさせると思ったので」


「君は見かけによらず鋭いよねえ。やっぱり群馬で育つと、野生も育つのかしら」


 関係ねえ!


「それで何で無理なんです? というか、無理と分かっていても試すんですか?」


「まあねえ。タヌキ弾は――あっと、神弾だったね。あれはあの銃でなければ撃てないのだから、やっぱり何丁か欲しくなるというものなのだよね」


「そういや何で無理なんです?」


「それはどっちかな? まあいいや。銃に関しては、素材の問題よね。当たり前だけど、普通の銃で炸裂弾なんて撃ったら粉々に吹き飛ぶわ」


「そりゃ、ありゃ爆発物ですからね」


「実際研究資料はあるのよ。実用化された物もあるにはある。確かに初速、射程、威力共に段違いだったそうだけど、兵器としての運用には耐えられないわね。とても携帯できるようなものじゃないし、同じ重量なら武器を軽くして装薬を使った方が良い。威力を求めるのなら、弾頭の方に炸薬を使えば良い。それが常人の結論だよ」


 ひい爺さんが異常と言われたようなものだが否定はしない。

 いくら威力があっても、まともな人間なら手りゅう弾で銃弾を飛ばそうとは思わないだろ? まあ炸薬を使うというのはそういう事だ。


「それと神弾だけど、こっちは火薬、弾頭、どっちを作ってみても効果が無かったよ」


「それは分かりますね。あれは神事によって効果を持つべきものですから」


「タヌキの神事ねえ……」


「なにか?」


「何でもないわよ。まあ今度送ってもらう時には、通常のライフル弾を神弾にした奴を送って貰って頂戴。今はそれで間に合わせるしかないわ」


「それがですねえ、一方通行なんですよ。こちらから連絡できないんです」


「そいつは困ったものだ。ただ送られて来るのなら連絡は取れそうなものだけどねえ。今度校長にでも聞いてみるといい」


「何か知っているんですか?」


「それは保証できないけどね。ただ偉い人ほど色々な情報に精通しているものなんだよね」


 ふむ。無駄かもしれないけど、アポを申請してみるのも良いかもしれない。


「参考になりました。ありがとうございます。もし群馬に戻る事があったら、神弾に関しても聞いてみますよ」


「期待しているよ」




 ◆     ◆     ◆





 まあそんな事があったわけだが、結論から言えば無理だった。

 校長はいつも指令室にいるそうなんだが、何度訪ねても留守。

 中に入る事も出来ず、インターホンからオペレーターを名乗る女性に追い返されるだけだ。

 教頭もセットで行動しているそうで、毎度居ない。

 教頭の意味あるのか? まるで秘書か護衛じゃないか。


「今日も難しい顔をしていますね」


「ああ、(まどか)か。そりゃもう1週間だぞ。本当にこの学校に校長なんているんだろうな。それこそ皆、タヌキに化かされているんじゃないのか?」


「ふふ、勇誠(ゆうせい)さんも言う様になりましたね」


「なんか散々言われたからな。しかしまあ、どうせ毎日訓練だ。いつかは戻って来るだろう」


「前向きですね。ちょっとうらやましいです」


「人間何とかすれば何とかなるものさ。円も、もしどうにもならない事があったら俺の所に来ればいい。1人くらい支えるだけの甲斐性はあるつもりだよ」


「え、それって――」


 急に高円寺(こうえんじ)が真っ赤になる。変な事を言ってしまったか?

 だが友人とはそういうものだろう。互いに支え合ってこそだ。


「俺だってもし自分だけで解決できない事があったら、円を頼らせてもらうよ」


「は、はい……その、末永くよろしくお願いします」


「あ、ああ」


 多分これからの学生生活のことを言っているのだろうが、なんか急に畏まられるとちょっと焦る。


 そんな訳でちょっと微妙な雰囲気になってしまったが、今日は講堂で座学となっている。

 相変わらず2年と3年は外なので――というか先日2年生は見送ったばかりだ。

 そういや3年生1人をまだ見ていないな。

 まあ癖が強そうだし、会わないなら会わないでいいや。


 そんな事を考えながら講堂へ向かったのだが――、


<ビー、ビー、ビー>


 いつか聞いたけたたましい警戒音が響く。

 またかよ。なんか嫌な予感しかしないな。





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