来訪者
ピンポーン。
ピンポーン。
「ああ、今出るよ」
と中で行っても聞こえないだろうな。
ここは防火、防爆の部屋だ。外に人の声など届かない。
インターホンを使えば早かったのだろうが、まだここの複雑な使い方を知らないし、自分で出た方が早い。
「何か?」
そのまあドアを開けるが、そういえばドアチェーンを書けていなかったな。
というか、施錠すらしていなかった。
我ながら不用心だと思うが、ここで殺し合いが始まる様なら最初からおしましだ。
「あ、あの」
そこにいたのは高円寺円さんだった。
さっきまでのグリーンのカーディガンとは違う。見慣れた――でも全然見慣れていない少し変わった形の巫女服を着ている。
表情も凛々しく、先程までのおっとりとしたイメージとはだいぶイメージが違う。
というよりも胸の谷間がドンズドン。あの爆乳でだ。こいつ俺を殺す気か?
実際に死にはしないが、これで手を出すなとか拷問だ。だが出せば社会的に死ぬ。少なくともここにはいられないだろう。
「ええと、何か用かな?」
教官以外なら今は忙しいと言う予定だったが、俺は意識とは裏腹に、部屋の中へと招き入れていた。
「観葉植物のホロなんですね。緑がお好きなんですか? 私も好きなんです」
面白がって弄繰り回したままだった。クソ恥ずかしい。
恐ろしい事に、この部屋には武器の手入れをするためのテーブルの他、長いソファーが一つあるだけだ。
ちなみに防弾。底は収納になっているが、見た目も座り心地も普通のクッションと変わらない。
そんな事はどうでも良いと言いたいが、まさかほぼ初対面。それもこんな格好の女性をベッドルームに連れ込むわけにもいかない。
必然的に、彼女はソファーで俺の隣に座る事になった。
初対面だが、人との距離感があまりつかめない子なのだろうか?
それともわざとか?
とにかくソファーの横で色々と話すたびに、柔らかい物が――弾力が――神秘が――叡智が、俺の腕に当たる。しかも生の部分がだよ。理性が消える前に、いっそ殺してくれ。
「高円寺さんは、一体どのような御用件でございましょうか?」
意図せずにおかしな口調になる。恥ずかしくてマジで死にたい。
「ふふ、佐々森君は面白いのね」
笑っているけど目が笑っていない。
敵意というより緊張だろうか?
ただ胸の方じゃないな。そっちは意にも介してない感じがある。
これでわざとだとしたら、見た目に反して百戦錬磨だぞこの子。
まあ伝わって来る真摯な意思が、それを全否定しているけどな。
「勇誠で良いよ」
「あら、でもあたしの事は円って呼んでくれなかったのに?」
ごめんなさい。更に顔が近くにグイときた分、本当にグイと腕にめり込んでいます。
何がとは言うまいがもう今更言う必要も無いだろう。
というか、初対面の女性に名前で呼ぶとかハードルが高い。それこそエベレストよりも高い。
元々科目が違っていたとはいえ、商業学校には女性が多い。
それでも卒業までに、名前で呼ぶ仲になった相手はいなかった。
俺がストレートに名前を呼ぶのは義妹のけいとみねくらいなものだ。家族だからな。
「あまり名前で呼ぶことに慣れていないんだ」
「年下だから気にしないで。確か18よね? 亜梨亜ちゃんから聞いたわ」
話したっけ? と思ったが、来る途中に話題が無くて色々話したからな。
景色を見たり今後の事を考えてりで、何を話したかとかほとんど覚えてないや。
というか、こっちが話したならアイツも自分の年齢をその場で話せよ。
聞いていなかっただけかもしれないから迂闊に文句も言えないけど。
まあそれより――、
「あたしは17歳。一つ下よ。よろしくね」
「あ、ああ、よろしく」
ぎこちない微笑みが眩しい―!
なんかものすごい清楚というか、神々しさすらかじる。
衣装の問題だろうか? いやこっちはエロしか感じないが。
「それで高円寺――」
「円」
「円さんはどんなご用件で?」
「えと、もっとリラックスしてくれないと、こっちまで緊張しちゃうんだけど」
無理です。
少なくとも、その当たっているというかめり込んでいる物を外してください。
これでも男なんです。
……と言えたらどれほど楽だろうか。
というかもう遅いだろ。互いに愛想笑いをしているが、ひりつくような空気が伝わって来る。
「あたしがここに来たのは――」
そう切り出すと、完全に表情が消える。
ご挨拶は終わりといった所だろうが、こちらとしても早く本題に入ってくれる方が有難い。
もう耐えられないんです、男として。
「貴方の使ったというタヌ……神弾を見せて欲しいの。ううん、出来れば一発貰えないかしら? もちろん、お礼は何でもするわ。本当に何でもする。だからお願い」
彼女の瞳は真剣そのものだ。
実際、大真面目なのだろう。
だがさらにグイと迫て来た事で、俺の理性はもう噴火寸前である。
というか何でもするとか言っちゃダメでしょ、その格好で、しかもこの状態で。
男はみんな狼ですよ。それとも、男として――というより危険な存在とは見られていないのかもしれない。
TYPE―D。来栖の言う事に間違いが無ければ、彼女は見た目通りの女の子じゃない。
彼女よりワンランク下のスギ花粉……じゃなくて杉林ポレンが俺を一般人と見下していた事を考えれば、相当な実力者なのだろう。
この行為が俺を異性として認識していないのではと考えたら、なんか頭が冷えた。
「1発くらい構わないよ。というか、予備はそれなりにあるんだ。何発か譲るよ」
「本当に!? ありがとう!」
そういうと、俺の頭を掴んでむぎゅうと抱きしめた。
物凄い弾力に顔がめり込んでゆく。つか見て分かっていたが、完全にノーブラじゃないか。
少し中腰になったからこの体制になったのだろうが、冷めた心が一瞬で沸騰したぞオイ。
何でもするといったが責任は取ってくれるのだろうか。
いつも読みいただき感謝です。
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