男子との打ち解けかた
集落へあと少しという距離を歩いてる折
「ぁ~・・・」
前方に見える木々が揺れ聞き慣れた声と共に
「ぃぃ~・・!」
ガサガサと枝葉が擦れる音が段々と近づき・・・
「スッ!!」
ザッ!と頭上から捕食者の構えで飛び掛かってくる影
「おっと!」
咄嗟に風を柔らかく操作し、空中でシャルを受け止める
「はは、出迎えは嬉しいけど新しい仲間を連れてるんだ、今は勘弁してくれ」
「マ!?んぅ~・・よっと!」
シャルは身体を捻り華麗に着地を決め
俺とその頭、旋毛の辺りで座り込むミィ
そして人の視線から逃れるように縮こまり背に隠れている人物を順に見やり
「みんな!おかえりッ!」
「あ・・」
背後でキララが小さく安堵したように息を飲んだ
突如として現れた人間に警戒を露わにした様子だったが
白い歯を見せ快活に接するシャルに幾分不安が和らいだようだ
「ほらほら!荷物降ろして!アタシが持つからさ!」
荷の前でオーライオーライと腕を振るシャルにゆっくりと荷を降ろし預ける
「んで、どだったん?成果は」
「調達品ならまずまずってとこね
賊の根城探索って意味なら芳しくはないわ」
「あぁ、今回の連中も木っ端って感じだったな」
この世界に於いて人類以外の種族は大別して3種存在する
以前ペールさんから説明を貰った亜人族に擬人族
そして敵性種、ゲームのエネミーに該当する種族だ
見かけは集落でも見かける妖精小鬼や巨躯亜人、獣人と変わらないが
生活体系や思考が全く異なり言葉も意志の疎通も不可能な
人類、亜人族擬人達に共通する完全なるエネミーだ
人が営む町々で運営しているギルドは冒険者を派遣し
際限なく湧き続けるエネミー種に焦点を当て、狩り続けている
装備の新調に必要な材料として亜人達も狩りの対象になってはいるが
飽くまでエネミーへの対応が主にされているらしい
そしてエネミーには目もくれず亜人達の討伐略取を精力的に行っているのが
非正規のギルドや何処にも属さぬ野盗崩れ達
なんでも裏で亜人達を売買したほうが正規の依頼報酬よりも美味いから
一攫千金の為、懲りずに襲い来る・・
という訳で、そいつらの本拠地を探して叩き襲撃の手を剝がそうとしているのだが
中々当たりを引く事が出来ないでいた
「寒村の倉庫を根城にしてたし、ありゃあ逸れの賊ってとこだな」
「そもそもさぁ賊の本拠地ってガチで在るん?」
パンパンの荷を軽々と持ったシャルが首を傾げる
「ここまでハズレが続くと分からないわね
非正規といっても連中は法の規制対象じゃないし
逃れようと思えば何処にでも行けるし何処にだって拠点を構えられるしね」
「え?法で規制されてないのか?非正規っていうからてっきり・・」
「正式な資格が無いだけで違法じゃないらしいわ
ましてや、連中にとって亜擬達を狩るのが誰であろうと構わないのよ」
「はぁ~・・ッん!!テンション下がる話は置いといて!着いたってばさ!」
場の空気を切り替えてくれるシャルの一声に気を取り直し
集落への帰還を果たすと
「わ”ぁ”~~ッ!おがえ”り”なざい~ッ!!」
待ちかねたとばかりにイアがバタバタ駆け寄ってくる
「ウ”ァッ!た、ただいま・・・」
腹に突貫してきたイアをノーガードで受け
肺から押し出された空気と共に挨拶を返す
イアはぐりぐりと一通り顔を押し付けた後、顔を上げ
俺が背負っている人物を確認し
「あわっ!?わ、私!ご飯とお湯を用意してきます!」
「え?あ、あの・・」
困惑した様子のキララに
「疲れ切ってる貴方にご飯と身体を拭くお湯を沸かしに行ったのよ」
「私・・そんな」
「遠慮ならだぁめよ!この集落に集ったんなら家族なんだから甘えときなさいな」
恐縮するキララにミィが諭すように言い含める
「に、してもあの娘のヤキモチも最近は場を選ぶようになったわねぇ」
「?」
「あの娘ってアンタの近くに女の子が居ると
顔をぶんぶくらせてたじゃない?それが今じゃ分別つけるようになってさ」
「お前ねぇ・・流石にこの状態を見てそんな嫉妬、とかしないだろ・・」
「んなことないっしょ!イアちゃんは構ちょ心を一瞬だけ抑えて
後でべったりするスタンスに変えただけだし!」
「後でって・・あッ!もしかして!ダイスの背中が
たまにこんもり膨らんでるのって!」
「そーそ!コートの中に潜り込んで背中に張り付いてんの!
あれアタシもヤりたいのに屈まないといけないから腰痛くってさぁ~
小柄なイアちゃんが羨まし・・」
集落の日常になりつつあるイアの奇行について二人が盛り上がっていると
「なにやら拙者の心をくすぐる卑猥な会話が聴こえるでござるよ!・・うぅッ!」
にゅっと影から頭を半分出した跳影がシャルを視認した途端に退場する
「ちょっとちょっとぉ~また人の顔見て逃げるし~」
「いやはやこればかりは拙者自身にもどうにも出来ぬ業であるからして・・」
少し距離を空け再び出現した跳影がバツが悪そうに弁明し
「まぁ、それはそれとして・・ダイス殿、ミィ嬢、遠征お疲れ様でござるよ」
すぐに話を転換して労いの言葉をかけてくる
「次の機会にはまた拙者が同行致しますぞ」
賊の追い討ち隠れ家探索は跳影と組んでこなす事が多かった
癖はあるがこの忍、結構な実力者であり頼りになる、が
「あぁ・・まぁ、そうだなミィも一緒ならな」
「「!!!」」
何気ない一言にシャルとミィが目を剥く
「え・・えぇ~!どしたん?ダイスってばミィちゃんと仲良くなった感じ~?」
一瞬ガクっと足を止めたかと思ったシャルが何事も無かったかの如く明るく言う
「へぁ!?そ、そうね!ミィは?別に?そうでもない程でも
無かったりしない訳でもないけど?まぁ?な、仲よ、し・・」
「いや、ミィが居てくれないと亜人の人達が警戒を解いてくれなくてさ」
「ぶぉぉぉいッ!!アンタって奴はぁ!!もうもうもうッ!!!」
ミィが雄たけびと共に頭頂部へ連続でストンピングをかましてくる
「いてて・・大事なことだろ?俺はこの通り怪しさ全開だし
跳影は荒事や斥候で頼りになるけどさ
女の子が相手だと俺以上に不信感を与えるし」
キララを軽く揺すり背負い直す
「なんと失敬な!拙者よりも信の一字が似合う漢は居ないで・・」
熱弁する跳影の視線が背負っているキララへ移り
「う”ッ!うぅ・・・」
俯き、影に沈み込んでいった
「ほらな?ミィが取り持ってくれないと話にならないんだよマジで」
「しょ~がないヤツらねぇ!まったく!ミィが居ないとてんで駄目なんだから!」
ンフーッ!と鼻息荒く胸を逸らすミィ
「ならば自分ではどうでしょう?」
さり気なく会話に混じって来たのは
先日、集落の噂を聞き付け合流を果した
清き銀の甲冑姿、金色の髪を爽やかに靡かせ
深い碧の瞳を輝かせる美青年だ
「レディ、お荷物は自分が引き受けましょう」
「お、さんきゅ!」
自然な動きでシャルから荷を受け取った騎士然とした男は
嫌味を感じさせない笑顔で
「自分は腕に覚えもあり痛みに震える方々に寄り添う事も叶います
そして道中は・・ボルグ!」
呼び掛けると傍で佇んでいた大きな馬が
「ブルッ!」
返事をするように鼻を鳴らし
「彼の背で快適に進める事をお約束しますよ」
俺とキララを見やり安心させるように頷く
「確かにな、じゃあ今度」
一緒に行こうと言い掛けると
「こいつはやばいでござる!眉目秀麗な顔に騙されてはいかんでござる!」
復活した跳影から物言いが飛ぶ
「騙すも何も自分は皆さんと閣下のお役に立てればとの一心のみですよ」
唐突な言いがかりにもサラリと笑顔で躱すイケメン騎士
「閣下て・・俺は爵位なんか拝命されてないってば」
恐らく家系図をどれだけ遡ったとしても
俺の一族は貴族、華族であった事はないだろう
「いえいえ、これは自分の心が貴方を認めた証でありますれば
例え爵位をお持ちでなくとも、そう呼ぶことを許可願いたいのです」
綺麗な瞳で真摯に訴えられると無下にも出来ない
「はぁ・・ま、いいけど」
「おぉ・・なんたる!ダイス殿まで美麗な顔に絆されて・・・」
よよよ・・と大げさに腕で涙を拭う仕草をする跳影
「お前が言いたい事はわかるけどさぁ・・危険は無いと思うぞ?」
「いやいやいや!だってこの男はッ!!」
ーーー数週間前
頻発するハンターの襲撃を迎撃する為
集落の存在する森へと続く街道沿いで
跳影と張り込みをしていた時の事
「だからぁ!濡れ場は必要でござるよ!」
静かな街道に響くのは場にそぐわぬ単語
発信源は暗い色の装束を着込んだ怪しげな男
「まてまて、ラブコメの話だった筈だぜ?
濡れ場って・・・風呂シーンや水着回じゃないだろ?それって」
応えるのはのっぺりとした仮面を被ったこれまた怪しい男
二人は平らな岩を挟んで向かい合うように座り、絵札を繰りながら話し込む
「ったりまえでござろ!?それも大事でござるが
拙者が見たいのは絡み合いでござるよ!」
「イヤらしい色の間接照明に照らされた部屋でするりとシャツを開け
1つ2つとボタンを外し、窮屈だったとばかりに弾け解放される双脂肪!
足下のアングルへ変わり細い足首にストンと落ちるスカート・・う”ッ!」
「そりゃあ駄目だろ!新学期のクラス替え、初めて出会う二人が恋仲に発展する
その間に許されてんのは少しのお色気と微笑ましいお笑い要素だろうが
付き合う前にキツいピンク要素なんか入れてどーすんだ・・・」
「ノン!ヤっちゃってから始まる恋もあってよかろうもん!?」
ヒートアップし主張と語彙が乱れる跳影に呆れながら
「そいつはもうラブコメのレーベルじゃねぇべ・・・
ほい赤短、こいこいしないっと!」
卓の上に並べた札に手持ちの札を重ねる
「んぉぉっ!そんな安い手で上がるなんて!
男ならば一発ドカンと狙うべきでござるよ!
雨四光まで完成させて尚もこいこいした拙者を見習うべきでござる!」
「そういうのはな、引き時を誤ったってゆーんだよ次行くぞ」
言って全回収し混ぜ変えた札を配る
行軍してくる敵を待ち構える状況であったが
男友達と馬鹿で下世話な話を声高にする
俺は久し振りに気兼ねなく楽しめる時間を過ごしていた
(なんというかこちらの世界に来て会話をするのは女の子が多かったしな)
我ながら極めて贅沢な事を言っているが
このガス抜きは彼女達相手にはとても出来ない
「大体よぉ濡れ場が見たいならエロ本でいいじゃんか
青短、こいこい」
「いーや!ラブコメでの描写だからこそ!
絶頂物の背徳感を味わえるでござるよぉ!はぁ・・・
赤短!こいこい」
わかっちゃいないな!とばかりに溜息を吐かれる
「早々に懇ろな関係になっちまったら
咄嗟に起きるハプニングの乳輪チラとかパンチラの縦筋のありがたみが薄いだろ」
「拙者は!どんな展開であろうと!
全てのピンクと肌色に感謝申し上げる!断じて軽んじたりはせぬ!
そら来たでござる!月見酒に花見酒!こいこいしないでござるッ!」
「うっわ、すげぇ敗北感」
覆面からチラリと覗く片目だけでドヤ顔を決める跳影に
げんなりしながら札を搔き集めていると
「・・・ならば」
「!?」
不意に、すぐ隣から聞こえた声に虚を突かれる
ここまで接近されてるのに全く気配を感じなかった
「疾!!」
問答無用で跳影が隣に立った鎧を着込んだ男の喉元へ小刀を滑り込ます
とぼけた雰囲気を醸しているが跳影は敵には容赦を一切持たない
「おっと!」
男は跳影の肘に軽く手を添えて曲げ、迫る小刀の軌道を容易く変えた
「できる!しからばッ!」
即座に次の動作へ移行する跳影に
「お待ち下さい!自分にあなた方への敵意はありません!」
両手を上げ無害をアピールする男、月明かりに白銀の甲冑が眩く光る
「お主・・・擬人、でござるか?」
依然として構えを解かず跳影が探るように疑問を投げる
「はい、自分はとある兵器とその担い手を合一し
創造された擬人で今は騎士ラッセルと名乗っております」
辺りを支配する剣呑な空気を意にも介さず悠然と名乗る騎士
「昨今この周辺にて人類に抗い亜擬に人を返す
御方が現れたと聞き及び参じたのですが何かご存じでしょうか?」
「あぁ、それなら」
俺の事と・・言う前に鋭く跳影が
「それを知ってなんと致す?」
相手を擬人と知って尚も警戒を緩めず問う
「無論の事、自分の力もお役立て出来ればと
末席に加えて頂きたく参りました」
上げた手はそのままに目で丁寧に礼をする姿に跳影が構えを解く
「・・あい失礼致した、こちらの大将は警戒心が緩く
拙者が過剰に反応し過ぎたでござる」
「んな人を3歳児みたいに・・・」
「3歳児の方がまだ身持ちが硬いでござるよ!
まったく、ダイス殿に何かあったらイア殿シャル殿に合わせる顔がないというに」
眉間を押さえ臓腑の奥からの深いため息を吐く
「道々の噂で聞いた通りの御方のようですね
亜人擬人であろうと構わず目・・顔を合わせて話をする方だと」
仮面で覆われている事は噂で持ち上がっていないらしく
言葉を少し訂正するラッセル
「この仮面がなければねぇ・・割かし良い人で通るでござるのにねぇ・・む?」
腕を組み片手を頬に当て、仕方ない人ねぇみたいなポーズで言われ
静かにムカッ腹を立てていると跳影が何かに気付く
「仕掛けた鳴子せんさぁに反応ありでござる!」
「なにそれ・・・」
「侵入者に掛った事を悟らせぬ高性能な警報装置でござる
あれなるは縄の代わりに赤外線を張りて」
「さよけ・・・」
跳影が大量に所持している怪しげな忍び道具の説明をスルーし
敵襲を迎え撃つべくウォームアップを始める
「敵の方角と距離を教えて頂けますか?」
ラッセルはガチャリと背負った武器を抜き跳影に問う
「方角は戌距離は約三町」
「確か、東国の表し方で北西、距離は・・・327mといったところでしょうか」
抜き放った武器を展開し示された方角を見やり
「確認しますがあちらの方角にお仲間は?」
「居らぬ、此度の要撃の任に就いたのは我ら二人のみ」
「ならば、問題はありませんね」
ラッセルは言いながら武器を掲げ狙いをつける
(あれは弓?いや、ボウガンか)
弩弓を片手で軽々と持ち上げ曲射の構えを取り
「この魂に刻まれた記憶は常に戦いと共に在り
大陸統一を果し侵略者を打ち払った
捧げた願いは不安に苛まれる民を救わんが為!」
ボウガンを掲げた腕が光を放ち始める
「堕ちし世界、流浪で擦り切れた身なれど
この一矢をもって今より自分の生を再び始めましょう!」
「捧げる願いを見つけたが故に!」
ボウガンの引き金に指を掛け放たれた矢が夜空を駆ける
昇った矢は放物線の頂点で一等強く光り
幾重に別れ地を舐めるように落着し行軍する部隊を薙いだ
「対多数戦が可能な武具、凄まじいでござるな・・・」
「助けて頂いて有り難うございます」
ふぅと一息つくラッセルに礼を告げると
彼は朗らかな笑みを向け
「お力になれたのなら望外の喜びです」
あまりにも爽やかに言ってのけた
「こりゃあ心強い御仁が加わってくれたもんでござるなぁ」
「えぇ、若輩者ですが何卒宜しくお願いします」
先程までの息が詰まるような空気が嘘だったように握手を交わす二人に
「さぁ、じゃあ集落へ戻ろうかラッセルさんの紹介もしよう」
踵を返し集落へ戻ろうとすると
「自分の事はラッセルとただそれでけでお呼び下さって結構です
それで、もう一つお伝えしておきたい事が」
「なんでござろ?」
改まるラッセルに跳影と顔を見合わせ頭上に『?』を浮かべていると
「お二人が話していたラブコメディに
過激な性描写はどうか?という議題についてです」
「え?あ、あぁ」
そう言えばその馬鹿話の途中で声を掛けられたんだったかと思い出し
(見た感じ清廉な人に見えるし破廉恥な会話は控えろってお叱りか?)
俺の噂を聞いて来てくれたんだから失望させる事が無いよう
気を付けるべきかと思案した時
「主人公とは清く明るい交際を続けている裏で実は
彼女は他の男性と粘液と欲に塗れた関係を持っていた・・で、どうでしょうか?」
「「?、・・・?。」」
何を言っているのか理解するのに数秒かかった
跳影と共にゆっくりと言葉を咀嚼し
「「・・・・・・・え?」」
同じ反応をしてしまった
「う~む、不味いでしょうか
お二方の考えを否定しない理想的な展開だと思うのですが、何より」
「いやいや御仁、一体何を・・あッ!さては!
拙者達に無理に話を合わせてくれてるでござるな?下ネタが不得手でも別段・・」
跳影が困惑しラッセルを諌めようと手を振るが
「自分の性癖にガチリと嵌まるのですが」
「「え?」」
再び跳影と二人、シンクロして肝を抜かれてしまった
「せい、へき・・・?こんなイケメン騎士がでござるか?」
「はは、いやお恥ずかしい事に自分は所謂NTRに一番股間が滾るのです」
「それは・・・本当に恥ずかしいでござるな」
「やはり、いいものですね・・この毒にも薬にもならぬ話が出来るというのは」
「今の世の皆には余分がありません、今日は何処に隠れ生き延びようか
明日の糧はどうしようかと切迫した想いのみが皆を支配し
卑猥な話で笑い合うなどあり得ない生活を送っています」
「ん?」
(なんだこの良い話してます感は・・そういえばさっき)
「あのさ、さっき矢を撃つ時に願いが見つかったとか言ってたけど・・」
いや、まさか・・・あの瞬間に荘厳な決意を見た、そんな訳は・・・
「はい!皆に不安の無い日々を取り戻したいのです!
生活に全く不要な猥談で盛り上がれるそんな無駄な時間を享受出来る毎日を!」
瞳を爛々と輝かせ少しズレた未来を語り続けるラッセルの印象は
ーーー
「変態でござるよぉッ!!」
集落の真ん中で慟哭する跳影に
「うん、知ってる~」
「今更ね、ミィも知ってるわよ!
アンタ達男3人でたまに集まってごにょごにょ変な話してんじゃない!」
あっけらかんと跳影の告発を流すシャルとミィ
「へいへい!一緒くたにされるのは心外でござるよ!
何せこやつの性癖は・・むがッ!」
「お前・・流石にやめろって、場所と相手を選べよな・・」
身を屈めキララを背で安定させ自由にした左手で跳影の口を塞ぐ
「それに性癖の一つや二つ勘弁してやれよ、普通の事だろうが」
「ぶはっ!うそでごぉざぁるぅ!
ツインテールにしとけばパッと見おじさんでも可愛く見えるって言う御仁の
普通なんか当てになんないでござるぅ!」
「へぇ、そうなんだ」
小声でシャルが呟き
「あれはパッと見の場合だ!一瞬シルエットだけみたらアレ?ってなるだけだ!」
「一瞬でもおかしいでござるよ・・・」
ロングツインテールの魔力について弁解しても
跳影は顔を振って手を払い尚も続ける
「ほかにも!好みの下着の柄とかぁ!?まさかぁ?あんな柄が好みとかぁ!?」
「おい、それは言わなくて良いんと違うか?
なんか調子づいて饒舌になってるしよぉ」
手を伸ばすが警戒し射程外に逃れる跳影に
「ねぇね!その話もっと詳しく聞きたいな~?」
ずいっと詰め寄るシャルだが
「う”ッう”う”ッう”ッ!!」
案の定、濁った声で屈み影に潜み逃げてしまった
「あ、そだった跳っちは繊細なんだった・・じゃあ」
次はラッセルに目を向けるが
「はは、申し訳ありませんが猥談の内容は秘中の秘
自分の口からはおいそれと他言は出来ません」
紳士協定の順守を微笑みと共に宣言するラッセル
(良い事言ってる風に見えるけど全然言って無いなコイツ・・・)
イケメンの誤魔化し力は凄いと改めて実感させられる
「ちぇ~!やっぱダメかぁ
アタシも男同士でやらしい~話してるの知ってたからさぁ
ダイスの好みを教えて貰おうと思っても
いっつもああやって逃げられちゃうんだよね~」
シャルは残念とばかりに手を頭の後ろで組み唇を尖らせる
「シャルさん!いつからそんな聞き取り調査を!?抜け駆けですよ!?」
いつの間にか戻って来たイアが牽制するようにシャルの裾を掴む
「抜け駆け~?戦法と言ってほし~な~?☆」
「むぅ~ッ!屁理屈です~ッ!!」
腕をぐるぐる回し突っ掛かるイアの額を押さえるシャル
「でも、しょうがないか!友達に聞けないならやっぱり・・・」
「はい、そうですね・・・」
わちゃわちゃとじゃれ合っていた二人がくるりとこちらを見て
「「本人に聞きましょう!(聞いちゃおう!)」」
わっ!と駆け寄ってくる二人を躱し
「だから!今はやめてくれってぇ!」
キララを背負い直し集落の療養所へ早足で向かい
猛禽類と化した二人から逃げる
頭の上で座り込んでいたミィが後ろ、キララへ振り返り
「どう?喧しい所でしょ?」
と、笑いかけ
「はい・・みんなが笑っていて素敵な・・場所ですね」
キララも不器用な、されど嘘の無い笑みを返した
ここまでお読みくださった貴方に感謝を
次回の更新をお待ち下されば幸いです




