他種族との交流のしかた
「太陽を消すってそんな無茶苦茶が出来る奴が居んだ・・・」
スケールの大きさに今まで静かに話を聞いていたシャルが驚く
だが気持ちは分かる、太陽を消す事自体もそうだが気になるのは目的だ
(太陽とバグに因果関係が?それが本当に世界を守る方法なのか?)
記憶を手繰りリムジン車内での黒服との会話を思い出す
陽が昇らぬ世界について疑問を投げた時
彼・・・奴は天上人の功績を謳い悦に入っていた
あれは天上人が太陽を消し世界に何らかの措置を施した事を示唆していたのか
「太陽を消す儀式の前、演説で天上人は言っておりました
太陽が云わば灯台の明かりの役割を担って災厄を呼び寄せている、と」
さらりと告げられた言葉に、つい前のめりになってしまう
「演説って姿を見たんですか!?天上人をッ!?」
「いえ、何かの細工か魔術かで声だけが響いてきまして
儀式が行われた際も徹底して姿を現すことはありませんでした」
少しでも謎の天上人の情報を知れればと淡い期待を持ったが
そう都合良くはなかった、取り乱した無礼を軽い一礼で謝罪し
気を取り直し話の続きを聞く
「では太陽を消し去って以来、そのブアルも消えたと?」
「はい、変わらず他の世界と見られる異なる文化圏の産物や
種族の来訪は続いていますが」
「ブアルに対処を施したと・・
荒療治ではあるけど一応の解決策って事なのか
なら案外・・・」
この世界に呼ばれた役割を果たしてはいるんだなと思った時
「冗談じゃないわッ!!!」
夜の帳を裂かんばりの大声に一同驚き、発言元であるミィへ視線が向かう
「これ!ミィ」
「お婆はなんとも思わないの!?天上人がこの世界を牛耳ってから
ミィ達の生活がどんなに滅茶苦茶になったのか!!」
「・・詮無いことを言うんじゃないよ」
肩を落としペールさんがミィを諭す
状況を理解できないでいる俺達に
「ミィに任せては感情が先走って説明ができませんね・・
わかりました、もう少しお付き合いください」
さて、と軽く腰を上げ座る体勢を整えたペールさんから説明された事情は
「天上人が太陽と引き換えに齎した安息の享受を許されたのは
人類種に限った事だったのです」
「人類のみって・・」
「天上人は純粋なる人間、只人こそが
栄えるに相応しい優良種である、と。その神託に沸き上がり己が元に集った人類へ
与えた知識、技術を駆使し侵略戦争を仕掛け、みるみる世界の版図を広げ
己を祀り上げる都市を建造させたのです」
(人間至上主義か・・また極端な奴が居たもんだな)
だがこの世界に住んでいる人間以外の命にとっては堪ったもんではないだろう
「思惑通りに世界の主導権を人間に掴ませた天上人が施した蛮行の最たるものは
人類以外の他種族を貶めた事、我らから人を取り上げたのです」
ペールさんは渋面に歪めた口から血を吐くように
「こちらのミィのような妖精を始めとした幻想伝説に謳われた亜人種や
元来人ではなかった物を人に擬えた擬人達を純粋な人ではないとして
人の種を名乗る資格を剥奪し亜擬という蔑称をつけたのです」
その忌み名を吐露した
(亜擬・・この世界で何度か聞いた
桃郷でキレた黒服が叫んで、森で遭遇した男もそんな事を言っていたな)
耳慣れず、頭の片隅に残っていた言葉にそんな意味が込められていたとは
「天上人が擁するは人、ただ一つの種のみ
奴めが新しく掲げた世界の掟は人に非ずば命に非ず」
「天上人の加護を受けた人類に敗退した我々は迫害を受け多くが命奪われ
私達のように運良く逃げ延びた者達はこうして息を殺し
隠れ潜むように暮らしているのです」
そう言いペールさんは物憂げに窓から朽ちかけた家々を見る
言葉を失ってしまった、今までのミィの態度や人間の言葉の端々に
何やら確執めいたものを感じてはいたが、こんな背景があったとは
そしてその理由が天上人によるものだったなんて・・・
「あぁいけない、随分と長くお話ししてしまいましたね
満足なおもてなしは出来ませんが、どうかお休みになっていってください
こちらの庵は誰も使用しておりませんので気兼ねなく利用下さって結構です」
だがペールさんは表情を曇らせ
「ですが皆の不安を煽りますので・・その」
言い難らそうに言葉を選ぶペールさんの様子を察し、先を引き受ける
「はい、長くご迷惑はお掛けしません
少し体を休めたらすぐにお暇・・」
「なんで!?」
言い終わる前にミィが異を唱える
「なんでそんなさっさと出てけって言えるの!?
ダイス達が居てくれなかったらこの集落が見つかってたり
また、リ・・リィみたいに攫われちゃう子が居たかもしれないのよ!?」
「ミィ、皆の気持ちもどうかわかっておくれ・・」
「わかんない!ミィそんなのッ」
尚も食ってかかるミィに
「ミィ、ありがとう。でも、いいんだ」
「・・・ッ!うぅぅぅ!」
唇を噛みミィは壁の隙間から飛び出して行ってしまった
「あっ」
手を伸ばし咄嗟に追おうとしたが
「大丈夫です、落ち着きさえすれば聡い子ですから
考えを咀嚼する時間を与えてあげて下さい」
それにしても、と続け
「あの子が人の為に意見するなんて正直、驚きました
本当にお世話になったようで・・・」
深く頭を下げるペールさんにイヤイヤと軽く手を振る
──その後、自宅へ戻るペールさんに重ねて礼を告げ
三人、輪になるよう座り、避けては通れぬ今後を話す
「バグが既に消えてるとはなぁ・・」
「そーそ!実際どうなん?イアちゃん的にさ、バグの気配って?」
囲炉裏で温めた白湯を息で冷ましながらシャルがイアに意見を求める
「あの街に居た時もここに至る道中も探ってはみましたが
一度も感知できませんでした、ペールさんの仰った通りなら」
「不思議な事ではない、か・・・」
「はい」
「しかし、どうしたもんかね
俺達の目的としてならこの世界にはもう用は・・って感じなんだが」
バグが存在していない事は当然喜ばしい事なのだが
「でもなんか、な・・・」
明らかに意図して撃ち込まれた世界に深く根差してしまった価値観
その歪な構造を創り上げたのが他ならぬ召喚された現代人だというなら
「放って置けない、よね?」
頭を垂れ考え込む俺へ
いつの間にか隣に移動してきたシャルが顔を覗き込み言う
軽く頷く事でシャルに返答し顔を上げ、対面をしたイアは
「私はダイスさんの選んだ道行きにお付き合いします」
俺の考えを尊重してくれるイアへもウンと頷き答える
「お付き合い!します!」
「なんで2回言ったの」
「やっぱり天上人?狙うならやっぱさ!」
方針をバグから世界に撒かれた悪意を取り払う事に舵を切ったシャルの第一声
「狙うか、うぅん・・いや、結局は提唱した張本人をどうにかするしかない、か」
一度植わった価値観を覆すことは難しい
ならば端を発した元凶を民衆の前に引き摺り出して撤回させる
それが一番効果が出る方法かもしれない
(お上が白と言えば黒でも白ってな感じになってくれりゃいいが・・
あの黒服の心酔具合なら案外、あっさり言う事聞くかも?流石に楽観が過ぎるか)
「無駄よ」
頭上から、もはや聴き慣れたミィの声
「さっきは取り乱して悪かったわね」
「いや、良いさ。でも無駄って何がだ?」
問うた俺の肩にふわっと腰掛けミィは
「天上人に接触ってとこよ、アイツが根城にしてる街は存在を隠匿できるの
侵略大戦の最中に拠点攻めを画策した選りすぐりの戦士たちが
足と翼、魔法で索敵しても一切所在を掴む事が出来なかったわ」
「でもアタシらアソコから来たし、ただ戻ればイイじゃん?」
「反抗勢力が全く居なくなった時からは一転して
人類の威光を示す為にデカデカと姿を晒してたのよ
今回ミィはその隙をついて隠れて侵入出来たってだけ」
「手早く俺達の手配書を回してるあの慎重さなら
今頃あの街はもう隠れ蓑の中って訳か?」
「十中八九ね」
ミィは肩を竦める
「でも流石にあの規模の都市なら大体の場所は分かると思いますけど」
イアの疑問はもっともだ
「近づく者の認知や五感、あらゆる索敵をごく自然に阻害する
違和感も感じずに回れ右して遠ざかってしまう厄介な陣地なのよ」
首を振りうんざりと言わんばかりにミィは小さく溜息をつく
「なら本丸にカチ込むって戦法は無理か・・・」
「ねー!それなら速攻でケリ着いたのに!」
しゅしゅっとシャドーボクシングで意気込むシャルに
「アンタ達ねぇ桃郷は人類の最大拠点よ
警護についてる連中も半端じゃないってのに・・・」
「ん~、でもアタシ最近なんか調子イんだよね!」
「今日会ったばっかのミィに
アンタの最近の身体事情言われても知んないケド」
「そっか!☆」
八重歯を見せて笑うシャルだがその言葉は事実だ
元より強かったのは闘技世界で充分知っていたが
都市脱出の際のシャルの活躍は目覚ましかった
眼前に陣取った部隊の機関銃の乱射を槍一本で防ぎ切り
突進し多数の大男を薙ぎ払う様は明らかに強さの桁が変わったように見えた
──
「他に在る街で情報を集めるにしてもお尋ね者状態だしなぁ
迂闊に人と接触してこの集落が漏れる危険性は避けたい
かといって聞いた事情だと他の亜人の人達にも話を聞くのは難しいだろうな」
なんとも窮屈で宙ぶらりんな状況になってしまったものだ
「だから行くところが無ければここに」
「ミィがそう言ってくれるのは嬉しいけどな?
俺達の一存で決めて良い事ではないんだよ」
でもありがとう、とミィの小さな頭を人差し指でそっと撫でる
「あによ、馴れ馴れしんだから・・」
当のミィは腕を組みツンッ!と唇を尖らせ弱めの抗議をしている
「差し当たっては少しだけ逗留させて頂いて
旅立つ準備を整えさせて貰いましょうか?」
目が笑っていないイアの建設的な意見に同意し
就寝の支度を始めると
「悪かったわね狭い庵しか泊めてあげるとこが無くて
そうだ、仕切りを持ってくるわね?」
「え?仕切りって・・・何に使うんです?」
恐らくミィは異性同士が同衾する気マズさを気遣ってくれてるのだろう
その提案に心底から疑問に感じている瞳でイアが返す
「何にってだって・・」
「ダイスはそこに寝んの?おーっし!じゃあ今日のアタシはぁ・・こっち!」
寝床を整え腰を下ろすと同時にバッ!とシャルが素早く右腕に組み付いてくる
「え?」
「あーッ!もうッ!!油断も隙も無いですね!なら!私は当然こっちです」
シャカシャカと機敏にイアが左に回り込む
「は?」
ヘロヘロと漂うミィが当惑を顔にへばり付けている
「え?アンタ達ってそういう関係なの?」
「てぃひッ☆」
「にゅふ」
「「まだですけどぉ(だけどぉ)」」
「え~・・・」
常識外の返答に更にミィの羽の動きが歪む
「人間文化がおかしいのかアンタ達がヤバいのかわっかんないわね・・・」
─────
翌日、外に出かけるミィに行き先を尋ねると
「昨日、森の中程まで人間が入り込んでたでしょ?
だから結界の点検と張り直しをすんのよ」
「良ければ着いて行っていいか?」
「ん~・・いいわ!手伝ってもらう事もあるかもだし!
アンタ達は」
「「行きます!(行く!)」」
「だと思ったわ・・」
集落と森の境でミィが止まり
「ちょいまち、ホラ!気配消してないで挨拶なさいな」
と、何も無い中空に呼び掛けると
スゥ・・と輪郭が濃くなっていき
三角帽子とその奥に薄く光る眼が覗く靄が現れる
(おっと・・!)
急な登場に内心驚きながらも刺激しないよう平静を装う
いわゆる幽霊系の住民だろうか
「コイツはファラン、結界魔法を担ってるの」
ミィの紹介に軽く会釈し挨拶すると
『 』
ぼやぼやっと揺らめいた
「くぉらッ!!コイツらがそんな事する訳ないでしょッ!吹き散らすわよ!」
言いながらミィが羽を構えると揺らめきが焦ったように激しくなる
そのやり取りで何となく幽霊さんが何を言ったのか察する
(結界の点検って事は要所を周るって事だもんな、そりゃ集落の生命線を部外者
しかも反目してる種族がついてくるって、そりゃ警戒するよな)
そこまで思い当たらなかった軽率さを恥じ
「スマン!よくよく考えりゃ結界の点検なんて大事に
同行するなんて不審過ぎるな!やっぱり行くのは」
「アンタ・・コイツが何言ってるか分かるの?」
「わかんないけどアレだろ?結界の場所を知られるのは不味い的な」
「そうよ!まったく失礼な話よねッ!」
「いや、当然だろ」
「いーのよ!言う事聞かないなら・・ッ!」
羽をパタタと震わせるミィに
『 』
「ほら!良いって言ってるわ!」
「それ脅してるだけだろ・・・」
一方幽霊と初対面したイアとシャルは
「へぇ~初めて見た!すっげ!」
「お帽子可愛いですね!」
テンションを上げていた
(ホント物怖じしないなこの2人は)
その後、森深い要所を周り結界の解れを直し
集落へ戻る道すがら
『 』
「はん?またアンタはすぅぐソレよ、もう!ビビりなんだから」
「どうした?」
「『大きな獣がこっちを見てる、襲って来るかも、怖い』って!」
「大丈夫なのか?」
「へーきよ!やり過ごす方法なんていくらでもあるわ
大体の獣はねぇ・・わッ!て驚かせば逃げてっちゃうのよ」
「随分と原始的な方法ですね・・」
イアがミィの動物回避方に脱帽していると
成程、確かに茂みを揺らす音がする
「どれどれ・・そんならアタシが」
手をワキワキさせながら音がする茂みに向かい合うシャル
すると
『ブオォォォォォッッ!!!』
3メートルはあろうかという巨大イノシシが飛び出してきた!
「いや、デッ・・・かぁ!!」
驚きつつもイノシシの突進を跳び箱の要領でひらりと躱し
両腕を伸ばしスタッと華麗に着地を決めるシャルを気にも留めず
木々を倒しながらイノシシは突っ走っていく
「あんなでっけぇの初めて見た・・」
ドシドシと走り去っていくイノシシの後ろ姿を見送り感想を呟いていると
『 』
「はぁ!?マジ!?」
ファランが激しく帽子を振り乱しミィも動揺している
「なんか不味いのか?」
(集落はイノシシが去った反対方向だし一体何が・・)
「アイツ向かった先の樹に張り直した結界の要の呪印が刻んであんのよ!
あの勢いで突っ込まれたら樹ごとぶっ壊されちゃうわ!」
「そりゃあ・・・なぁ?」
「うん」
「そうですねぇ・・」
3人顔を見合わせ
「「「不味いってぇッ!!!」」」
勢い駆け出し
「俺が正面に回り込んで止める!」
「ほいじゃあアタシが仕留めるッ!」
「えと・・わ、私は・・・」
「よし!イア!アイツの鼻先に俺を転移させてくれ!!」
「えぇッ!?わ、わかりました!
ん~・・少し距離に余裕をもたせて・・・お気をつけて!」
手を伸ばしイアの手に触れ転移する
足下の感覚が薄れ次の瞬間、目の前には樹を薙ぎ倒し荒ぶる大イノシシ
「よぉ、っとぉぉぉッ!!?」
牙を掴み足腰に渾身の力を込め踏ん張るが爆走の勢いは簡単に死なず
何メートルも後ずさってしまったが何とか踏み止めた
吹きかけられる荒い鼻息を仮面に感じながら本命を待つと
「お待ちどぉ・・・っさまぁッ!!」
追い付き跳躍したシャルが巨大イノシシの頸椎を槍で刺し貫く
『オ”オ”オォォ・・・』
大牙の主は一声上げグラリとよろめき地響きと共に巨体は地面に倒れ伏した
村で解体し肉を食べようと興奮気味に言うミィの提案に乗り
イノシシを担いで集落への帰路につく
大きさ的に10トンを優に超える巨体だが運んでいても苦に感じない
(改めて、便利な身体になったもんだな・・)
以前の肉体なら昨日の密猟者にすら手も足も出ず
10トンは愚か50キロの荷を担いだ時点で腰が臨終しただろう
与えられたチカラをしみじみと痛感していると集落が見えてきた
姿が見えていなかったがファランさんが先に戻って説明しておいてくれたようだ
ペールさんだけでなく昨日は身を潜めていた住民の姿もチラホラ見える
「お疲れ様で御座いました、またもや集落を助けて頂いたそうで
なんとお礼を申せば・・」
深く頭を下げるペールさんに
行きがかり上の事だったと礼を辞退し
むしろ結界の点検に断わりなく同行した事を謝罪しながら
巨大イノシシをゆっくりと広場に横たえる
少しだけ言葉に詰まりながらも
「いえ、この度はお礼を尽くさせて下さい」
と微笑むペールさんの雰囲気を感じ取ったように
集落の住民も家々から姿を現す、未だ瞳は怯えを多分に含んでいたが
会釈をするとおずおずと返してくれる方も居た
獣人や小鬼、全身を花で鮮やかに彩った華人に
髪から服装まで全て機械の機人とぎこちないながらも挨拶を交わした
(本当に色んな種族の人が暮らしてるんだな)
ぐるりと見回すと多種族が身を寄せ合い暮らしていることがわかる
そして、そこに人間だけが居ない事も
犬獣人のゴードチャウさんが手早くイノシシを解体し
久し振りに肉が食えると喜び
機人族のチッカさんは絞った油を精製し
最近錆が目立つようになったをスカートを磨くんだとか
他の用途として燃料としても使えるらしくいたく感謝された
塩と華人族のヴィオーレさんの育てた香草で
蒸し焼いた猪肉はシンプルながら絶品だった
互いに距離を詰め切れない微妙な関係ではあるものの
決して迫害されるような人たちでないことは分かる
(天上人とやらは何を考えて馬鹿げた事をしたのかね・・まったく)
膨れた腹を寝転がって休ませ天井を睨む
「すぐ寝っと牛になっちゃうぞっと!」
「言って自分も寝るんかい・・ん?」
ゴロンと投げ出した腕の上に頭を乗っけるシャルから良い香りが漂う
「気付いた?ヴィっぴに貰ったんだ!花を搾った香油だってイイっしょ!」
(ヴィっぴって・・嫋やかな笑みを湛えた
ヴィオーレさんの呼び名としてはどうかと・・仲良くなったのなら良い事か)
「ふぃ~私もお休みします」
当然とばかりに反対の腕に口元が猪肉の脂で光沢を放っているイアが頭を乗せる
「アンタ達の関係性ってよく分かんないわ・・・」
言って俺の胸元に着地したミィがそのままうつ伏せになる
「ん~微妙に酢っぱ臭いけどまぁ暖かいし良い寝床ね」
ベタッと横になっているミィだが頭をもにょもにょ動かしている
「お前、まさか脂でテッカテカの口拭いてんじゃねぇだろうな?」
「ん~~なんのこと?ん~~~~!」
「うぉぉ!?お前!やめんか!二人とも頭を退けてくれ・・ッ」
「イヤで~す」
「アタシもヤ~」
───その頃、ペールの庵
行燈の明かりが落とす真下の影が微かに揺らめき
『 』
「なんと・・・森に人間達が迫っていると?」
ここまでお読みくださった貴方に感謝を
次回の更新をお待ち頂ければ幸いです




