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サ終世界の歩き方  作者: 39カラットルビー
第一章 MMORPG ロストフロンティア・ヴァンガード
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決死

・・・ッッダンッ!!!

「うぉあっ!?」


何が起こったか把握するのに一瞬の()が必要だった


鼠が右腕を振って俺を吹っ飛ばしたのか・・・?


すぐに立ち上がり態勢を整える、幸いアバター体が痛覚を鈍く(カット)してくれている


まだ動ける、と顔を上げ鼠人間を見ると

先程まで暴れていた事が嘘の様に動かなくなっていた


両腕をだらりと下げ俺を睨んでいた視線は俺ではなく

イアを見つめていた


「ハaa・ァgy・・aァaa・・・」


何やら声を発しているが先とは比べ物にならないぐらい不快な音だ


「取り込んだ・・・?モンスターを、そんなことができ、るなんて・・・」


あの纏わり付きは浸食、または捕食だったのか


イアの顔は恐怖で蒼白に染まっていた


バグに取り込まれた鼠人間は気味の悪い声を呻きながら

ゆっくりとイアの居る方向に歩き出した


(まずい・・!)


もう鼠の意識も記憶も無いのだろう

あれだけ憎々しげにこちらを睨んでいた眼はもう俺に見向きもしない


恐らくバグが全ての主導権を握り

バグの存在を察知できるイアを優先して始末すると判断したのだろう


さっき俺が吹っ飛ばされた為、イアはバグを挟んで正反対の位置に居る


肝心のイアは恐怖でへたり込んでしまっている

その姿を見て逆に、自分がしっかりせねばと闘志が湧く


ここで動かなかったらイアを死なせてしまう、そんな事はさせない!


「おい!こっちだ!!」

バグに呼びかけ手頃な石を後頭部に投げつけるが相手にされない


(仕方ないッ!)


無防備な後ろ姿に向かって駆け

勢いのまま飛び付き腕を首に回し俗にいう裸絞めの体勢になる


「ぐッ!・・・くぅ・・・!!」


バックドロップよろしく重心を後ろに掛け全体重をバグの首に込める


だがバグの歩みは止まらない

依然ゆっくりとイアへ向かっている


鼠人間(ワーラット)としての身体の急所を狙っても効果が無いのか?


組み付きながら何処かに変わった箇所は無いか必死に探す


すると鼠人間の右腕のテクスチャが崩れ、赤黒い(あぶく)が明滅している


(此処に何かッ・・・!)


首に掛けていた右腕を解き、泡が弾けている鼠人間のの右腕に伸ばす


すると右腕を振り払い身体を揺すり抵抗してきた


「当たり・・だな!?ここだな!?」

叫び尚も手を伸ばすが


ドシャッ!!

「だっ!?」


必死の抵抗に振り払われ身体から引き剝がされてしまった


バグは仰向けに倒れ込んだ俺の頭を踏み砕こうと足を上げ・・


「ダメェェぇぇッ!!!」


バグが俺の頭を踏み抜こうとした瞬間

イアがバグに体当たりを仕掛け、バグが体制を崩す


「ぅああぁぁ・・」

寝ている場合ではない

恐らくこれが最後のチャンス


全力で首を絞め続け疲労し震える両腕に力を込め起き上がり


倒れるバグの右腕に殴りかかる


バグに侵された鼠人間の腕はぶにぶにと柔らかく殴打しても手応えがない


「うぐぅぅぅ・・・」

今度は腕に指を突き立て割り開くように左右に力を込める

すると開かれた腕の中心に赤く光る玉を見つけた


(これか?・・これが弱点、これさえ何とかすれば・・・)


だが両手は腕をこじ開けるのに精一杯だ

少しでも力を抜き片手を玉に伸ばせば、割り開いた腕は閉じてしまうだろう


残りの体力的にもう一度この状況を再現するのは不可能だ

イアは体当たりをした勢いで膝をつき荒く息を吐いている


俺がやるしかない

人間の一番強いヶ所は顎の力!もうこれしかない!


「開けぇッ!!!」


『ガシャッ!』

仮面を解放し口を露出させる


「がぁッ!!」

意を決し赤い玉に噛み付く、腕の感触と同じく柔らかく気持ち悪い


だが、そんな事を気にしている場合ではない


玉を齧ったまま食い千切るため頭を振り上げる

その瞬間バグの左腕がこちらに向かってくるのが視界の端に映った


『ゴギッ』

耳の奥で嫌な音が鈍く鳴り響く


顎が砕けたのかもしれない


まだ完全に嚙み千切れていないのにッ!


下顎の力が緩んでいく


このまま離してはもうトドメを刺せない


だがコイツ(仮面)にはまだこの使い道が残っているッ!


ふぉじろぉッッ!!(閉じろぉッッ!!)


『ガチッ!!』


開いた口元が再び閉じる


鼠人間の拳で押し込まれている首がメキメキと音を立てる


だが同時に


『ブチィッッ!!』


殴られた勢いでそのまま食い千切る事に成功した!


『ああ・・aアahAあhhアぁ・・・・・』


バグは不気味な声を上げ赤黒い砂粒状に変わっていき

そのまま煙のように掻き消えた。

ここまでお読みくださった貴方に感謝を



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