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第七話 ベルン王子からのお誘い

「私の姉がすみません……」


 その後、ベルン様にお会いすると、そう謝られてしまった。

 実はベルン様のところまでアイリス様とユリアさんとの三人で向かう事になって、そこでバレてしまったのである。

 アイリス様は「もう、姉さん!」とベルン様から少し怒られていたが。

 でもあれは、照れも入っていたと思う。仲の良い姉弟なのだなぁとほっこりした気持ちになった。


「いえ、ベルン様想いの優しい方ですね」


 私がそう返すと、ベルン様は顔を赤くした。

 王子に対して不敬かもしれないが、かわいいと思ってしまった。年下という事もあるかもしれない。

 ふふっと微笑んでいると。


「あの、イングリット」


「はい、何でしょう?」


「イングリットも、フレデリクとは仲が良いのですか?」


「はい、とても。……でもしょっちゅう怒られていますけどね」


 主に、引きこもり関係と、魔術オタク関係で。

 私が答えると、ベルン様はくすくす笑った。その表情がアイリス様ととてもよく似ている。


「……実は先日、フレデリクにイングリットの事を頼まれたのです」


「私のことを、ですか?」


「はい。あまり人付き合いが得意ではない妹が、緊張せずにお話が出来ているから、と。仲良くしてほしい、と」


 兄さん! 何てことをベルン様に頼んでいるんだ!

 ……もしかして、ベルン様から頻繁にご招待を受けるのは、それが理由なのでは?

 あわわ、と私が動揺していると、


「私も、似た年代でこうして話が出来る相手はいなかったので、嬉しいのです」


 と、ベルン様は仰った。

 そして。


「だから、イングリット。これからも、よろしくお願いします。……その、ご負担でなければ、ですけれど」


「いえ! 負担なんてそんな! むしろまともに人と話が出来るようになって、自分でも驚いているというかですね!」


「まとも?」


「さっき、アイリス様とユリアさんに会っても、そんなに緊張せずに話せたと言いますか……」


 ……いや、でも、それなりに緊張はした気がするな?

 前よりもだいぶマシになった、という方が正しいのかもしれない。

 ちょっと見栄を張ってしまったと私が思っていると、ベルン様は「そうでしたか」と嬉しそうに笑ってくれた。

 それからベルン様は、

 

「あの、イングリット」


「はい」


「その……これも、ご負担でなければ、なのですが」


 と、少し言い辛そうに少しの間沈黙した後、意を決した様子で、


「……でかっ」


「でか?」


「あっ違う、えっと。来月、姉上の誕生日で!」


「はい」


「……その、何を選んで良いのか、毎年とても迷っていて。一緒に……選んでくれませんか?」


 と仰った。本当に言い辛かったのか、顔が真っ赤になっている。

 どうやら来月はアイリス様の誕生日らしい。

 確かに異性の兄弟への相手のプレゼントって悩むよね。私も兄への誕生日プレゼント、毎回迷ってしまう。

 なので私は「もちろんです」と頷く。


「はい、私でよければ! あ、でも、あまりその……女性らしい視点でのものは、期待できないかもしれませんが」


「本当ですか!? いいえ! そんな事はありません! ふふ、良かった。嬉しいな」


 ベルン様が喜んで下さっている様子なので、良かったと思う。

 私みたいな引きこもりが……なんて何度も言っていると、兄からも「しつこいよ、イングリット」と言われるけれど。

 でも、私が誰かの役に立てるのは、本当に嬉しいと思う。

 

「では、当日、マロウ家にお迎えに伺いますね」


「いえ、ベルン様にそんな真似は……」


「イングリットより年下ですが、私も男ですから。させてください」


 ね、と押されて、私はお願いする事にした。

 誰かに迎えに来て貰えるなんて初めてである。

 ベルン様は「フレデリク達には私から説明しておきます」とも仰ってくれた。

 それはありがたいな……なんてその時の私は楽観的に考えていたのだが……。


 ベルン様とのお茶会を終えて帰った日の夕食時に、家族から神妙な面持ちで「大丈夫か?」と問いかけられた。

 何が大丈夫なのか分からなくて聞き返すと、三人からは真顔で「それはデートのお誘いだ」と言われた。


 ……デート?

 

 私がポカンとしているのを見て、家族達は「そういうところだよ」と言っていた。

 

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