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衣通美鈴は空手部の仮顧問をしています

当作は「ヤンキー女子高生の下僕はキックボクサーを目指しています!」の続きと「ヤンキー女子高生といじめられっ子の俺が心中。そして生まれ変わる?」第4章の間の話を想定した話になっています。


「やあっ!」


「とおっ!」


 早春のみぎり。


 空手の道着とメンホーと呼ばれる面を被った少女達の裂帛の気合を込めた凛とした声が響き渡っています。


 ここは都立立国川高校体育館。


 試合を控えた女子空手部の皆は自由組手で互いに競い合いながら技を高め合ってます。


 うーん……皆。強いけれど可愛いですっ!



「衣通先生。ボサっと見てないで悪いところを指摘してあげて下さい」


 私……衣通美鈴そとおしみすずは私より十センチは小さい二つおさげの女の子、周佐勝子すさしょうこさんに声をかけられた。


「うん! 皆良いよっ! 特に凛とした声が格好良くて凄く良い!」


「声って……確かに技を決めた時に必要ですが、もっと技術的な面でアドバイスは無いんですか?」


 周佐さんは呆れた様に言った。


「仕方ないじゃない? 私、日本拳法なら経験あるけど、伝統派空手は専門外だからね」


「でも日本拳法もやっていたのなら共通点も多いから何と無く分かるんじゃないですか?」


「いいえ。あんなスピードは重い防具を着けた日本拳法じゃあり得ないからね。皆へのアドバイスは周佐さんがやって欲しいな」


「全く……何で部外者の私が指導者紛いの事させられているんですかね? 私の指導ってお金貰えるんですよ? それを無料でやらされるなんて」


 事情を知らない人が聞いたらこの子は何を大袈裟な事を言うんだと言うかもしれないけれど紛う事の無い事実だ。


 信じられない事にこの小動物を思わせる小さな女の子は中学生時代にボクシングの全日本アンダージュニアで優勝し、将来の五輪代表候補とまで呼ばれ、更に空手でも天才少女と言われテレビにも放送されていた事がある逸材だ。


 まだ16才だけれどその実績と実力を買われ、キックボクシングのジムでボクシングクラスのサブトレーナーまでしているので、本当にこの子の指導はお金を出すのに値するレベルなのだ。


「まぁまぁ。空手部の顧問の荒加先生が産休で代理に私がやっている時だけでも人助けのつもりで手伝ってよ」


 私はピンチヒッターで荒加先生の代理で形だけの顧問に過ぎない。


 だから周佐さんが指導してくれるのは本当に助かる。


「それに、周佐さん最近出来た彼氏に付きっきりで朝練とか指導してあげているって噂だよ?」


「アイツは彼氏なんかじゃなくて下僕ですよ。勘違いしないでください」


「下僕って……一体どんな関係なの?」


 まさか下僕君を踏みつけたり「女王様とお呼び!」とかやっている訳ないよね……。


「下僕の事なんか如何でも良いです。それよりか大会が近いのに玖珠薇くすびが来ませんね」


 周佐さんは同じ学年の空手部員・玖珠薇桜桃くすびははかさんについて触れてきた。


 露骨に話題を変えてきたけれど、それは私も気になっていたところだ。


「あの子最近派手めな恰好をしだしたしね……年齢的にスポーツ続けるよりオシャレとか遊びたいのも仕方ないよね」


 私の高校時代は日本拳法の練習に明け暮れており、同世代の女の子と遊んだり男の子と付き合ったりした経験も無い。


 それが意味の無い時間を過ごしたとは思わないけれど、あの時練習なんかしなくて普通に遊んで、男の子と付き合ったり失恋したりするのも今の自分とは違う生き方も出来たんじゃないかなと思う。


「全く……サボりに理解を示す何て顧問失格ですよ? 荒加先生に叱られますよ?」


 周佐さんは呆れ果てた様に言った。


 確かに周佐さん言うとおりだし、真面目に部活に出ている子には不快だろうな。


 でも、人生は空手だけじゃない。


 高校生である今だけしか出来ない色んな事をしてみたいという気持ちは分かるし、例えそれが失敗したとしても、教師として出来るだけ支えてあげたいと思った。

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