いちばんすてきなプレゼント
きょうは たのしい クリスマス。
みんなが しあわせになれる すてきな日。
もりのちかくの ネズミのむらも この日ばかりは だいすきなチーズで おいわいです。
たくさんたべて しあわせいっぱいの 子どもたち。
よるには ワクワクしながら ベッドに はいります。
サンタさんは なにを プレゼントしてくれるかな?
きたいに むねを はずませながら 子どもたちは ねむりに つきました。
つぎの日の あさ。
子どもたちは むらのひろばに あつまって おおさわぎです。
「ぼくは すごく おおきなチーズを もらった!」
「ぼくは あたらしいくつを もらったよ! ゆきの中でも あたたかいんだ!」
「ぼくは ピカピカの どんぐりさ!」
みんな サンタさんからもらった プレゼントを うれしそうに 見せあっています。
おやおや? それなのに ひとりだけ すみっこで しょんぼりしている子どもが いました。
(……どうしよう。ぼくは なにも もらえなかったよ)
なんということでしょう。
どうやら この子のおうちには サンタさんが プレゼントを とどけわすれてしまったみたいです。
しょんぼりする その子をよそに ひろばの子どもたちは たのしそうに おしゃべりしています。
「そうだ! あした むらじゅうの子どもを あつめて だれが いちばん すてきなプレゼントを もらったか 決めようよ!」
「それは いいや!」
「そうしよう!」
それを きいて プレゼントをもらえなかった ネズミの子どもは こまってしまいました。
だって かれには 見せあうプレゼントが ないのです。
みんなが すてきなプレゼントを 見せあうのに ぼくだけ なにも もっていなかったら ばかにされるにちがいない。
そうかんがえると とても みじめなきもちになりました。
(そうだ! いまから もりへ行って なにか すてきなものを 見つけてこよう)
もりで見つけた すてきなものを サンタさんに もらったことにすればいいんだ。
そうかんがえた ネズミの子どもは さっそく もりの中へと はいっていきました。
ネズミの子どもが もりをすすんで行くと イヌの子どもに出会いました。
「おはよう イヌさん」
「おはよう ネズミさん どうしたの?」
ネズミは イヌに わけを話しました。
「そうか プレゼントが もらえなかったんだ。それは ざんねんだね」
「イヌさんは なにを もらったの?」
ネズミが たずねると イヌは 口に くわえていた ほねを 見せました。
「ぼくは このほねを もらったんだ」
そう言う イヌは とても うれしそうです。
ネズミは いっそう みじめな きもちになりました。
「いいなぁ。ぼくは なにも もらえなかったよ」
「よかったら ぼくも いっしょに さがすよ」
ネズミは おどろきました。
「いいの?」
「もちろん。クリスマスは みんなが しあわせでなくっちゃ。ぼくは はなが いいから きっと すぐに さがせるよ」
それをきいた ネズミは とても うれしくなりました。
「うん! ありがとう いぬさん!」
イヌさんと いっしょなら きっと すぐに すてきなものが 見つかるにちがいない。
ふたりは さらに もりのおくへと すすんで行きました。
しばらく すすんで ネズミは イヌに たずねます。
「どうかな? イヌさん すてきなものは 見つかった?」
イヌは こまったような かおをしました。
「うーん……ごめんね。どうやら ぼくの はなでは 見つけられないみたいだ」
ゆきに おおわれた 冬のもりでは においも 消えてしまうようです。
あやまるイヌに ネズミは あわてて 言いました。
「気にすることないよ。ぼくひとりじゃ においで さがすことなんて できなかったんだから」
「ありがとう。むずかしいけど すてきなものが 見つかるように がんばるよ」
そうして ふたりは さらに すすみます。
すると こんどは トリの子どもに 出会いました。
「こんにちは トリさん」
「こんにちは ネズミさん イヌさん どうしたの?」
ネズミは トリに わけを話しました。
「プレゼントが もらえなかったなんて それは気のどくだね」
「トリさんは なにを もらったの?」
ネズミが たずねると トリは くわえていた きのみを おとしました。
「わたしは この きのみを もらったの。わたしの だいこうぶつなのよ」
そう言う トリも とても うれしそうです。
ネズミは とても うらやましくなりました。
「いいなぁ。ぼくは なにも もらえなかったよ」
「わたしも あなたたちと いっしょに さがしてあげる」
トリは 空たかく はばたきました。
「わたしは 空を とべるから たかいばしょも さがせるの。すてきなものも すぐに 見つかるわ」
「うん! ありがとう トリさん!」
ネズミは とても うれしくなりました。
トリさんも いっしょに さがしてくれるなら きっと すぐに 見つかるにちがいない。
さんにんは さらに もりのおくへと すすんで行きました。
しばらく すすんで ネズミは トリに たずねます。
「どうかな? トリさん すてきなものは 見つかった?」
トリは かなしそうに 言いました。
「ごめんなさい。どこも ゆきで かくれちゃってるみたい」
ゆきで おおわれた 冬のもりでは すてきなものも かくれてしまうようです。
あやまるトリに ネズミは あわてて 言いました。
「気にすることないよ。ぼくひとりじゃ たかいところからなんて さがせなかったんだから」
「ありがとう。がんばって さがしてみるわ」
そうして さんにんは さらに さらに おくへと すすんで行きます。
すると こんどは クマの子どもに 出会いました。
「こんばんは クマさん」
「こんばんは ネズミさん イヌさん トリさん どうしたの?」
ネズミは クマに わけを 話しました。
「プレゼントが もらえなかったんだ。それは かわいそうに」
「クマさんは なにを もらったの?」
ネズミが たずねると クマは もっていた つぼを 見せました。
「ぼくは つぼ いっぱいの ハチミツを もらったんだ。あまくて おいしいよ」
おいしそうに ハチミツをなめる クマを見て ネズミは やはり うらやましくなりました。
「いいなぁ。ぼくは なにも もらえなかったよ」
「ネズミさんたちは すてきなものを さがしに来たんだね?」
クマが たずねると ネズミは うなずきました。
「ざんねんだけど ここから さきには なにも ないんだ。あぶない ばしょも たくさん あるから すすまないほうがいいよ」
「そうなんだ。こまったな」
ネズミたちは ここに来るまで ずっと すてきなものを さがしていました。
この先にも すてきなものが ないとなると もう どこを さがしていいか わかりません。
がっかりした ネズミに クマは 言いました。
「きょうは もう おそいから うちに とまって いくといいよ。あしたになったら ネズミさんのむらまで おくっていってあげる。かえりみちでも いっしょに さがせば もしかしたら すてきなものが 見つかるかもしれない」
「うん。ありがとう クマさん」
そうして さんにんは クマの おうちに とめてもらうことになりました。
わらをしいた ベッドの上で たくさんあるいた 三人は すぐに ねむってしまいました。
あさになると クマは さんにんを せなかにのせて ネズミのむらへと しゅっぱつしました。
かえりみちの あいだも よにんは すてきなものを 見つけようと さがしますが やはり なにも 見つけることは できません。
そうして あるくうちに 気がつけば ネズミのむらに とうちゃくしていました。
むらでは ひろばの方から にぎやかなこえが きこえます。
ですが すこし ようすが おかしいです。
にぎやかだと思った こえは なにやら 言いあらそっているようでした。
「いちばん すてきなのは ぼくの おおきなチーズに 決まってるよ!」
「なにを 言うんだい! チーズなんて 食べたらなくなっちゃうよ! ぜんぜん すてきじゃないさ! ぼくの くつが いちばん すてきだよ!」
「くつなんて ダメになったら あたらしいのが かってもらえるよ! そんなものが すてきだなんて! ぼくの どんぐりこそ いちばん すてきさ!」
どうやら みんな じぶんのプレゼントこそが いちばん すてきだと言って けんかをしているようです。
それを クマの せなかから 見ていた ネズミの子どもは とても ふしぎに思いました。
だって どのプレゼントも とても すてきなものだったのです。
それなのに どうして じぶんのプレゼントじゃないと すてきじゃないなんて 言うのでしょう?
くびをかしげる ネズミの子どもをよそに ひろばに あつまった 子どもたちの 言いあらそいは はげしくなっていきます。
だれもが じぶんのプレゼントを いちばんだと 言うのですから どのプレゼントが いちばん すてきかなど 決まるはずもありません。
こまった 子どもたちは むらの ちょうろうを 呼んできて だれが いちばん すてきなプレゼントを もらったか 決めてもらうことにしました。
子どもたちに 呼ばれて やってきた ちょうろうは みんなの プレゼントを見て 言いました。
「ほうほう。みんな すてきなプレゼントを もらったようじゃな。どれもこれも すばらしいプレゼントじゃ」
子どもたちは ちょうろうに だれのプレゼントが いちばん すてきか 決めてほしいと 言いました。
「どのプレゼントも もらうひとが いちばん よろこぶように かんがえられた すばらしいプレゼントじゃよ。どれも いちばんと 言ってよいほど すてきなプレゼントじゃ」
ちょうろうは そう言いましたが 子どもたちは なっとくしません。
だれもが じぶんのプレゼントこそが いちばんのはずだと ちょうろうに むかって 言いました。
子どもたちの ことばを ちょうろうは だまって きいています。
子どもたちが 話しおえると ちょうろうは ゆっくりと 言いました。
「なるほど。みんなは じぶんのプレゼントこそが いちばん すてきだと 思っているのじゃな?」
子どもたちが うなずきます。
それを見た ちょうろうは こう言いました。
「わしは そう思わん。わしが この中で いちばん すてきなものを もっていると 思うのは おまえさんじゃ」
そう言って ちょうろうが ゆびさしたのは プレゼントがもらえなかった ネズミの子どもでした。
子どもたちは たいそう おどろきました。
もちろん ゆびをさされた子どもも おどろきました。
だって かれは なにも もっていなかったのです。
それなのに いちばん すてきなものを もっているなんて どういうことだろう?
とまどう 子どもたちに ちょうろうは にっこりと わらって 言いました。
「よい ともだちを つれてきたのう。ともだちは どんなものよりも すてきなたからものじゃよ。だいじにしなさい」
そのことばを きいて ひろばにあつまった 子どもたちは しゅんとしてしまいました。
じぶんのプレゼントを ほめるばかりで だいじなともだちの プレゼントに ひどいことを 言っていたと だれもが きづいたのです。
それは なによりも だいじなともだちを きずつける おこないでした。
子どもたちは おたがいに あやまると それぞれが もらった プレゼントを ほめあうようになりました。
ちゃんと 見てみれば なんてことはありません。
ちょうろうが 言うとおり どのプレゼントも とても すばらしいものだったのです。
子どもたちは みんなが すばらしいプレゼントを もらったことを よろこびあいました。
そして プレゼントがもらえなかった ネズミの子どもも しあわせな きもちで いっぱいでした。
サンタさんに プレゼントはもらえなかったけれど かわりに とても すてきなものを 見つけられたからです。
「ありがとう! イヌさん トリさん クマさん よかったら これから ぼくの おうちに 来てよ。いっしょに あそぼう!」
ネズミの ことばに さんにんは よろこんで うなずきました。
もう みじめに 思うようなことは ありません。
だって かれは『いちばん すてきなプレゼント』を もらっていたのですから。
軽い気持ちで書いてみたけど、童話って難しい……。そう思い知らされました。
子供でも読めるように、余分な描写を省いて、漢字に気を遣って、果ては慣れない分かち書きに手を出して……。
考えれば考えるほどに「こうするべきじゃないか?」という部分が出てきて、お手上げでした。
「なんかそれっぽい簡単な訓話みたいなのを書けばいいんでしょ?」とか気楽に考えてた自分を殴りたい……。
何はともあれ、良い勉強になりました。
最後に、拙い作品ではありますが、読んでいただいてありがとうございました。