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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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ホリーホックホーリー⑭

目をカッと見開き、吃驚仰天びっくりぎょうてんといった具合の真司。

さらに説明を加えようと西崎が口を開きかけたその時、真司が二人との距離を測るような目の動きをしたのに気付いた太郎が、咄嗟に横に足を出した。

踏み出すのが一歩遅れた真司は、太郎の足に躓いて大きく体のバランスを崩していく、

「あっ!」

西崎は目を瞑った。

バサッ、

衝突音にしては軽い音がして、恐る恐る目を開ける。すると、真司の身体の下に、太郎の背中が有り、何とか地面に倒れずに済んだようだった。


「な、なな…何ですか?」

太郎の背中に乗ったまま、真司が叫ぶ。


「とにかく、そこ退いて下さい。」

何とか足は立っている状態の太郎が真司の下から少し苦しそうな声を出した。


「あ、あ、すみません…」

慌てて真司が体を起こした。


ぐぅ〜

と、思い切り伸びをした太郎は、真司の顔を覗き込んで、

「ケガは?」

と、にっこり笑った。



「荷物を配達しないといけないから局に帰らないと、」「今日は、家族に早く帰れと言われている。」「明日も仕事だから。」

次から次へと逃げ口上を繰り出していた真司だったが、


「郵便局の車はこちらの者が運転していく。」「荷物の中に速達は無かったから、翌日以降の配達で良いはずだ。」「実家を出て郵便局の社宅で暮らしているのは知っている。」「明日は休日のはずだ。」

と、その全てを西崎に封じられると、真司は項垂れるしかなかった。


間も無く伯方の部下が応援に来て、郵便局のワンボックスカーに乗り込んだ。


三台の車列は坂を登り、すぐに進路を西向きに変える。

間も無く先頭の二台は郵便局の前で止まり、

太郎、西崎、真司の乗ったコンパクトカーはそれを追い越した。


「どこに行くんですか?」

真司が上目遣いで聞く。


「うーん。そうだね〜、その右ポケットに入っている物をここに出してくれたら教えるよ。」

西崎が言うと、

ビクッと肩を震わせ、

はぁ〜、

真司は深くため息を吐いた。

そしてポケットの中から開いたままの携帯電話を出す。


「今時の若い人はブラインドタッチで、携帯メールも打てるらしいからね。」

西崎はそう言って、真司の手から携帯を取り、パタンと畳むと再び真司の掌の上に乗せた。


「えっ、」

真司は信じられないものを見たかのように目を瞬かせる。


「取り上げると思った?」


コクコクと真司が頷く。


「そんな事しないよ。ただ、これから行くところを誰かに知らされたくなかっただけ。ごめんね。大事な携帯触っちゃって。」


真司はぶんぶんとかぶりを振った。


「じゃあ約束だから、どこに行くか教えよう。それはね、“灯台下暗し”だよ。」


「灯台下暗し…はっ!」

真司は息を飲んだ。


「どこに行くか分かったみたいだね。」

西崎が微笑む。


「あんた達、本当に俊葵の味方なんだ…」

真司は安堵したように呟くと、シートにドサっと背中を預けた。


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