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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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ホリーホックホーリー⑫

「「「えっ、」」」


ガバッと一同が俊葵を見る。

その勢いに驚いた俊葵は齧ったクッキをポロポロテーブルや床に落としてしまった。


「あー、もう!何だよみんな!」


俊葵がテーブルの上のティッシュボックスに手を伸ばすと、


「そこは私がやるわ。それより、高峰 由稀世に会った事ある人って誰?」

洋子が、ティッシュボックスを取り上げてしまった。

矢野が布巾を取りにキッチンに走る。


「誰って、祖父さんだよー、じゃなきゃ長井さんだ。秘書の、」


「そうか!」

トンと、糺が握り拳で掌を叩いた。

「高峰 稀世果は未成年だ。進学するにも親の同意が必要だからな。東京の女子校にはお義兄さんの口添えがあったと言われているからね。書類を郵送でやり取りしたとも考えられるけど、直接会ったと考えるのが自然だ。」


一同は頷いた。

それは幸一の性格を知っているからだ。

幸一は、エゴイスティックであるのと同時に用心深い。

高峰 稀世果の身元を確かめる意味でも、両親のどちらかには直接会っただろう。

そして、高峰 由稀世が深見の言う通りの人物なら、自ら幸一に会いたがったに違いない。


「じゃあ、その写メを兄さんに送りましょうよ。私が?それともあなた?」


テーブルの下からひょこっと顔を出し、そうまくし立てる洋子に、糺は苦笑いして、


「俺が送った方がいいかな。さあー、何と言って切り出そう。」

と、首の後ろに組んだ両手を回した。


「単刀直入に聞けば?この人物は、高峰 由稀世さんですよね。って、」

俊葵が言うと、

「それは…」「すんなり答えるかしら?」

糺と洋子はお互いに顔を見合わせた。


「あの人は、自分の得になる事しかしないけど、嘘は付かないよ。言いたくない時は黙り込んだり無視するだけさ。だから、『この人を知ってますか?』なんて質問したらダメだ。欲しい答えは正面切って聞かないと。」

俊葵が鷹揚に言った。


「確かに。でも俊葵。理由を聞いて来たら何と言おうか?」


「そうだね。祖父さんから見れば、寝た子を起こすような真似に見えなくも無いからね。」

俊葵がサバサバと言うと、

洋子が、

「寝た子を起こすって…自分に累が及ばないからって見て見ぬ振りなんて許せないわ。元はと言えば、兄さんがあの娘を構い過ぎたからでしょう?」

と、口を尖らせた。


「まあまあ、これはシュミレーションだから…」

俊葵が洋子をなだめる。

それから糺に向き直った。

「お父さんの言う通りだよ。あの祖父さんならまず聞いてくるね。

下手な事言ったらストップをかけるネタを与える事になるし、祖父さんがしゃしゃり出る事なく、かと言って無関心では居られないような何か無いかなぁ〜」

俊葵は、数十秒間、空を見つめて片膝を抱え込み、身体を揺らしていたが、急に踵をストンと落とし立ち上がった。


「そうだ!こう言ったらどうかな?

西崎さんから、この男に付き纏われているっていう相談を受けたって。ぜひ、田村刑事が写ってる奴も送っておいて!」


言っている意味が分からず、糺が首をひねる。

俊葵は苦笑いした。


「西崎さん、祖父さんから疎まれてると言ってたよね。だけど祖父さん、その事後悔しているんじゃないかなぁ、オーストラリアでも相当西崎さんの事頼りにしてたし、実際優秀でしょ?辞めないでもらいたいけど、意地が邪魔して謝れないって感じ?そんな西崎さんが困ってたら、流石の祖父さんも無関心では居られないんじゃないかなぁ。」


腕組みをして聞いていた糺が口を開いた。

「しかし、高峰 由稀世が関わってるって言っただけで、窮状が伝わるもんかい?」


「だから、田村刑事の写ってる写メを送るんじゃないの!

俊葵を追い回していたのはこの刑事だ。この刑事と会ってるから、きっと高峰 稀世果の関係者だと思ったって、言えばいいよ。ちなみにこの刑事から俊葵の情報が漏れたと考えている。とかって言い添えたら完璧!」

そう言って俊葵は、へへ、と鼻の下を擦った。


「それはステキね。西崎さんが秘書を辞めるにしても、兄さんはキチンと西崎さんに向き合うべきだもの。」


「なるほど!これで、記者会見に利用されたお返しも出来るしな。」


「一石三鳥!」


矢野が声を上げると、全員が吹き出した。


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