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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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メランコリック アポロン⑮

ーーいつも一緒に行動してるわけじゃない。だから、田村と菰田は同類じゃないだろうーー

俊葵はただ、そう言いたかっただけだった。

意外な二神の反応にただオロオロとしてしまう。


「あ…はい。当日、『昨日の警察官今日も来てる。』って、前の日は『警察の人が一人来た。』って…」


二神は、握り締めた拳を、腰の高さで何度も上げたり下ろしたりして、

「警察官は、よっぽどの事がない限り、二人一組で行動するんです。危険を回避したり、援護し合う為に。居酒屋に来た時、田村巡査部長一人だったとすると、捜査本部の捜査方針は一枚岩ではない可能性が出てきます。」

と、早口でまくし立てた。


「!」「え?」「どういう事だ?」


「俊葵君を重要参考人とする動きは、」


そこまで言って二神は、俊葵に真顔で謝る。

俊葵が緩く首を振るのを見ると、

「田村巡査部長を含む一派の方針に過ぎないのではないでしょうか。

ところで、糺社長、」

と言い、糺に向き直った。


「ああ、分かってる。漁労長だな。姫島でアリバイを聞き回った警官が誰なのか聞けって言うんだろう?」


二神は一つ頷き、

「一緒に行動している人物がいなかったかも聞いてください。もしかしたら島内に拠点にしてる家があるかもしれません。新たに借り手が、若しくは買い手が付いた物件は無いか、」

と続けざまに言った。


糺は頷くと携帯を開き、キッチンの方へ歩いて行った。


「ということは、二神先生。先生は、その田村巡査部長と大野氏が繋がっていると考えているのですか?」

ずっと話を聞いていた鈴木が口を開いた。


「いささか短慮ですが、狭い島の中のことです。繋がっていると考えるのが自然だと思います。」


俊葵はそれを聞いて大きな目をますます大きく見開いた。

「拠点にしてる家って、そこに真司もいるとか?」


「あるいは、」


二神は短くそう言うと、眼鏡を外し、コーヒーテーブルの引き出しから出した小さなボトルから眼鏡に液体を吹き付け、ゆったりとした手付きで拭き取った。

話の続きを待つ俊葵は、拭き具合を確かめるように眼鏡を灯りにかざしている二神の横顔を眺めていたのだが、ふとその面差しが以前から知っているもののような気がして、目を擦った。


カチャッ、

電話で話しながら玄関前の廊下まで出ていた糺が戻ってきた。


「二神先生、ビンゴだ。姫島で聞き込みをしていたのは、田村巡査部長一人だけだった。一緒に行動していたかどうかはまだ分からないが、中華料理店の店主が、田村巡査部長と大野氏が一緒に食事に来たと言っていたそうだ。不動産に関しては、ほとんど出物がない島だから動きがあったような話は聞いてないと言っている。ところで、一つ妙な話を聞いたんだが、」


「何?」

俊葵が先を促す。


「それがな、例の波間のお屋敷、四、五日前から警察の規制線が張られているんだと、」


「ほお!」

俊葵と鈴木は関心したような声を上げた二神を振り返った。


「ああ、規制線の意味ですか。警察が事件現場などで証拠などを保全するために設置する立ち入り禁止の境界線の事です。分かりやすくイエローテープを張り巡らせる場合もありますが、張らない場合もあります。なるほど、規制線とは考えましたね。」

二神は感心するように頷いている。


「島では、高峰 稀世果の家だという話はもう誰もが知ってるんだそうだよ。心霊スポットのようになってしまって侵入者が相次いだと、それを理由に警察が規制を敷いた。だから近づく者は誰もいないんだとさ、」


俊葵がフラフラと立ち上がった。

「波間の地所の名義人は、高峰 由稀世…」


「正確には、由稀世と名乗る人物からの情報ですがね。」


二神が律儀にそう正すと、俊葵は弱々しく頷いた。


「今、糺社長のご友人の漁労長に様々な調査を依頼しています。

が、しかし、島のその家が拠点に使われているかどうか、そこに今井君が捕らわれているか否か、それを知るには実際に島に乗り込んで調べない事には…」
















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