メランコリック アポロン⑬
「もしもし…」
受話器から探るようなおどおどとした声が聞こえてきた。
「真司?」
『ぇ…はっ!と、しき…か?』
「うん。そう。」
「『お前大丈夫か?』」
「ふふっ、」『あはっ』
思わずハモってしまい笑いが漏れた。
『俺、お前に謝んないといけない事あって、』
「え、何?」
そこで二神が、【高峰 稀世果を見たと証言したか聞いてくれた?】と書いたメモを広げた。
俊葵が【まだ。でも、謝りたい事があると言ってます】と書くと、それを見た一同が固唾を呑む。
受話器の向こうの真司は
『その…』
と言ったきり黙ったままだ。
もし二神の推測が正しいなら、真司の言いたい事は分かっている。
「真司、お前が言いたい事は…」『真司!誰と話してる!』
俊葵が言い終わらないうちに、電話口から誰か別の声が聞こえてきた。
『あ、ああ、仕事関係っすよ。そ、それではまた…あーダメですって、大野さん!』
『あーもしもし、今井の同僚です。どちら様?』
ーーうわっ、ーー
内心俊葵は焦ったが、何とか頭をひねった。
「お世話になっております。就業時間外にすみません。宛先の住所番地の書き忘れがあったもので連絡を、明日一番に配達して欲しい荷物なもんですから、」
『フン、こんな田舎の島、名前さえ書きゃ、番地なんか無くたって届きますよ。要件はそれだけ?じゃ、』
携帯電話を見つめて固まる俊葵に皆の視線が集まった。
「切られたのか?」「荷物って何の話だい?」「違う人が電話に出た?」
二神を見遣り俊葵が頷くと、糺と鈴木が身を乗り出した。
「真司、嫌がってるのに途中から電話を取り上げられて、真司は相手の事、大野さんと呼んでました…」
「「ええっ!」」「うむ、」
「真司が咄嗟に俺の事を仕事関係だと説明したので、俺もそれっぽい返事して…だからどうにか、誤魔化せたみたいですけど、」
「やはり、繋がっていたか…」
と、糺。
「大野さん、かなり威圧的に話してた。『誰と話してる!真司!』って呼び捨てにして、」
俊葵が不安そうに糺を見る。
「真司、ビクビクしてる感じだった。何があったんだろう…」
「話し中に電話を取り上げられるなんて…今井 真司は大野氏に行動を見張られているのかも知れないな。」
糺が腕組みをして言った。
「今井君、何処に居るかは言わなかったんですか?」
二神の言葉に、俊葵は緩く首を振った。
「真司は何も…
あ、でも、大野さんは会話の中で『こんな田舎の島』と言いました。島以外に居るんなら、あんな《傍点》島と言うはずですよね。こんな《傍点》島じゃなく、」




