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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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メランコリック アポロン⑧

そこで内線が鳴り、二神が部屋を出て行った。


糺も自分の携帯に目を落とす。

「あれ、洋子からだ。なんだろう?」

そう言いながら窓辺まで行き、携帯を耳に当てた。


「あ、洋子。どうしたんだい…え、何?君は大丈夫か?うん。良かったぁ〜、矢野さんは?そうかそうか、良かった。警備会社は呼んだ?…良くやったね。すぐに帰るよ。警察は…僕たちに付いて来るだろうからね。じゃ、」


戒田家で何かあったのだ。内容が丸わかりの通話に、鈴木も糺を見つめている。


「今さっき家に、週刊誌、新聞数社の記者が押しかけてきたそうだ。その中の少なくとも一人は、敷地の中に侵入したようだ。すぐに警備会社に通報して、急行しているという連絡を受けたところだと言っている。二人とも無事だ。」

糺は一気にそう言うと、肩で息をした。


ガチャ、

二神が戻ってきた。

「どうしたんですか?何かあったんですか?」


糺は今話した同じ内容を話してやった。


二神が眉を顰め、顎を摩っている。

「そうなる事も想定はしてはいましたが…」


「ん、ああ、」

上着に腕を通しながら、糺が生返事をする。


「それにしても、早すぎる、」

「首都圏では昨日発売だろう?例の週刊誌、」

「その中に、俊葵君が橋本代議士の後継と目されていると書いてはあっても、戒田家で暮らしているとは書いていなかったはずです。」

二神が鋭い目で糺を見返した。


「ああ、そうだった…」

糺の帰宅準備をする手がピタリと止まった。


「それに、糺社長と俊葵君は今は帰らない方がいい。今ご自宅に警備会社が向かっているんですよね?」


糺がコクリと頷き、携帯を手に取る。

二神が代われとジェスチャーで示した。


「奥さま、お電話代わりました。二神です。ご無沙汰しております。はい。警備会社は到着しましたか?ああそれは良かった。奥さま、記者は俊葵君を名指しして在宅かどうか聞いてきましたか?そうですか分かりました。そういたしますと、外が明るい内に糺社長と俊葵さんがそちらに帰るとかえって混乱を招くと思うんですよね。ええ、その旨を警備会社の方にも、はい。それから、今日これからはこの番号以外電話に出ないようにしてください。はい。事務所の仕事が片付き次第、私も一緒に伺います。はい。では、」


二神は、苦々しい表情で電話を切った。

「間違いない。事件の情報がリークされている。」

と、呟いた。


それを聞いた三人の顔色が見る見る青くなっていく。


その様子を気にも留めず二神は、鈴木を見据える。

「鈴木さん。」

呼びかけられた鈴木は、

「はっ、はい!」

まるで、苦手な計算問題を当てられた小学生のようにしゃちほこ張ってしまった。


「先程のお話の中で、鈴木さんは、鈴木さんの叔母さまが土地の事で悩んでいる事、俊葵君が大変な目に遭っている事を、高峰 稀世果の父親を名乗る人物から電話が来るまで分からなかったと仰いました。」

「え、はい、そうです。」

「叔母さまに関しては、実際に叔母さまをお訪ねになって、事情をお知りになったわけですよね?」


鈴木はコクコク頷いた。


「では、俊葵君に関してはどうでしょう?高峰 由稀世氏が話したんでしょうか?」


「いいえ。それは由稀世氏ではないです。誰から聞いたいうか、又聞きなんです。」


「又聞き?」


「はい。弟の店の客が話していたそうなんです。弟は、ターミナル駅の側で喫茶店をしているんですが、その客が果島の水死体の話をしていて、その犯人は姫島の島民、しかも有名人だとやけに言い切るので、突っ込んで聞いたらしいんです。弟は普段お客さんの話に首を突っ込んだりしないんです。だけど、その前の日に僕が叔母に会いに行ったばかりで、その話を弟にも話していたので、」


「なるほど。前情報があったから突っ込んで聞けたと、だから、」

合点がいったのだろう。二神が穏やかなトーンで呟いた。


「それで、その人物が誰か、心当たりはありますか?」


鈴木は首を傾げ、

「常連のようですし、自己顕示欲も強い方だとか、名刺くらいは置いていってるかも知れません。弟に聞いてみます。」

と言って自らの携帯を開いた。

何度かコールさせるが出ないようで、

「あー済みません。今一人でお店を回してるのかも知れないです。また掛けてみます。」

と、申し訳なさそうに携帯を仕舞った。


「自己顕示欲か、どんな風にか聞いてますか?」

二神が聞くと、


鈴木は丸い目をキョロリと天に向ける。

「うーん。弟はお客さんの事はあまり話さない男なんですよね、顔と名前を一致させる目的のために、そのお客さんの場合、“自己顕示欲”とタグ付けしているってだけで…あ、でも、この方に関しては以前に、一悶着あったんですよ。」


「へぇ〜、それは?」


「弟の店、昔オウムが居たんですけど、比較的ゆったりした広さの店内の、調理スペースや客席とは離れた所に、パティオを模した植栽コーナーがあって、そこにオウムの籠を置いて透明な仕切りをぐるっと巡らせていたんです。保健所もクリアーしてたのに、その客が不衛生だと言い始め、それをマスコミにも嗅ぎつけられて、騒ぎになりそうになって、」


「保健所もクリアーしてるのに?」


コクリ、鈴木が頷いた。


「風評被害は怖いですから折れるしかなくて、オウムは自宅に連れて帰りました。それで騒ぎは収まったんですけど…

あとで聞くと、その人、鼻炎だったそうです。なんでも、ひどい鳥アレルギーだとか、」


「「鳥アレルギー!」」


糺と俊葵がおうむ返しに叫んだ。


























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