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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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メランコリック アポロン②

次の日、警察署から、証拠物・・・高峰 稀世果が俊葵にストーカー行為を行っていた事を証明する、盗聴器の現物や監視カメラの映像を記録したビデオテープ・・・の提出を求める電話がかかった。

二神弁護士と再度話し合った結果、提出しないことに決め、正式に回答した。

警察が葵に接触してきていない以上、寝た子を起こすようなことは避けたいという俊葵の意思を糺と洋子も尊重してくれた。


西崎は、俊葵と糺が出掛けた後に、空港に向かうため戒田邸を出立する段取りにしていた。

朝食のテーブルで挨拶を交わした西崎は、

「葵さんを無事に橋本家に送り届けましたから、東京に戻ったところで、仕事はほとんどないんですけどね。」

と、自嘲気味に言いつつも、

「例の友人に会う予定も有りますし、とりあえずまだ公設秘書なので、この職分を使って色々調べてみようと思います。公設秘書の身分がこれほど有難いと思ったのは初めてですよ。」

と、照れたように笑った。


俊葵は、糺や洋子とも相談した結果、登校することにした。

高校には、糺の社用車で送ってもらった。道すがら後ろを見ると、やはりくだんの車が付いて来ていた。


糺は俊葵を学校に送った後、二神の事務所に向かった。夕べ遅く、高峰 稀世果についての調査の一報が届いたとの連絡が入ったのだ。

昨日とは違う部屋に通されドアを開けると、応接室テーブルの上いっぱいに紙を広げ腕組みをしている二神がいた。


「電話も来客も断ってくれ。」

お茶を置いて一礼した秘書にそう言うと二神は、立ち上がりドアの鍵を閉めた。


「おいおい、何だか物々しいな。」

笑いながら糺が言うと、

二神は眉根を寄せ、

「これを読めば、そうも言っていられませんよ。」

と、指先で紙の束を弾いた。

「先生は一通り読んだんでしょう?説明してくださいよ。」

尚も余裕で糺が言うと、

二神は、ハァ〜と息を吐き、

「分かりましたよ。」

と、姿勢を前傾気味に座り直した。


二神が派遣した調査員は、昨日の内に東京に入り、調査を開始していた。

昨夜、西崎が言っていた通り、高峰 稀世果は、都内有数の進学校としても有名な女子高に入学していた。

上京した当初こそ高峰 稀世果は、幸一の後援会が主催するパーティーや、若年層の取り込みのために組織された党の研修会に顔を出していたが、それも半年ほどの事で、その後表立った場所に姿を見せなくなっていた。


「それで、何をやっていたか分かったのかい?」

糺が湯飲みに口を付けながら聞いた。


「まだそこまでは…しかしやり手ですよ。高峰 稀世果は、入学早々生徒会に出入りし始め、部室として一部屋をもぎ取っています。そこにネット回線と電話を引かせて…」


「電話?ネット回線については分からんでもない。今時はな、しかしわざわざ加入電話を新規で引くとは…学校の番号や携帯電話では都合の悪い何かがあるのかねぇ〜」


「やはり糺社長もおかしいと思いますか?」


「ああ、思うね。あの娘は、一度しか会ったことはないんだが、やる事なす事一々若さがない…いや、実際は若いんだからその表現はおかしいな。何というか…そうだ!初々しさがないんだ。若年寄りというか…

大体、加入電話の番号なんてさ、携帯電話に比べて、落ち着いたイメージを与えられるから名刺に載せているようなもので、それにしたって年寄りチックな発想だろう?今時、わざわざ回線を引くだなんて、」


二神は頷き、テーブルの上の一束を手に取った。

「この報告によると、既に警察はパソコンを押収し、通話記録も手に入れています。」

「随分と早いな。」

「まるで、高峰 稀世果が被害者というより、容疑者であるかのようですね、」

「んん?」

「パソコンも電話も学校の備品ですから、押収するにはまず捜索令状を学校に示す必要があります。捜索令状は地裁が出すのですけど、それには多少なりとも時間がかかります。」

「つまり、その捜索令状を取得するやらパソコンを押収するやら通話記録を手に入れるやら、やたらと手際が良過ぎると、」

「そうです。果島で発見されて、高峰 稀世果だと身元が分かってから動き始めて、ここまで素早く行くものかどうか、」

「じゃあ何かい?警察は、高峰 稀世果の生前からそのパソコンと通話記録を手に入れる手筈を整えていたと?」

「そうです。」

「そりゃ一体どういう事だい?」

「そこまではまだ、調べはついていません。」


うーんと唸り、糺はソファーの背にドサリともたれた。


その時、二神の携帯電話が鳴った。

何かを聞き、一瞬息をのんだかと思うと、

「これ以上は危険だ。もう引揚げよう。うん。迂回路を取れよ。くれぐれも気をつけて。」

と言い、顔から電話を離し電源を切った。


「まさか…これを調査してる人かい?」


二神は頷いた。

「後を尾けられているようだと言っていました…」

「おいおい、大丈夫か、」

「大丈夫。彼はプロですから。」

二神は少し青い顔であったが、

「ところで、高峰 稀世果のパソコンを押収した課が分かりました。」

と、気を取り直し言った。

「え、」

「それが分かれば、何の容疑で家宅捜索が行われたかが分かります。」

「ああなるほど。で、それは?」

「警視庁保安課です。」

「保安課?」

「主に、不法就労・賭博・風俗の取り締まりを担当する部署です。」

「んん?」

「それで、インターネット回線と、特に加入電話を引いた理由が分かりました。」











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