ダフネに捧ぐ⑭
「それは…祖父さん?葵?」
俊葵が震える声で言った。
「誰か、まだ分かりません。ただ、それを解明するためにも、高峰 稀世果が死の直前何をしていたのか知る必要がある。今、人をやって調べさせています。」
「も…しあお、い…葵だったら、」
「葵さんだったら何ですか?」
柔かな表情ながら二神の語気は強い、
「いえ…」
「いいえ。言ってください。」
糺は何も言わず黙ってそのやり取りを眺めている。
「・・・・」
「いいですか。俊葵君。君はまだ未成年だ。おまけにここは日本で、もうすぐこちらの、戒田 糺さんの息子になる。
君の動向は即、戒田社長の評判になるんですよ。
間違っても、葵さんの身代わりになってもいいなんて思っちゃいけません。」
俊葵は俯き、やがて涙が頬を伝い始めた。
「言い過ぎましたね。しかし、君はこうでも言わないと、自分から進んで誰かの踏み台になりそうで…私は、君自身を大事にする事が、お父さんをも大事にすることになるんだと、そう言いたいだけなんです。」
そう言って、懐からハンカチを差し出した。
俊葵が中々手を出さないので、糺が代わりに受け取り、俊葵の目に当ててやる。
「私は気休めは言いません。葵さんは高峰 稀世果の死に関わっていないなんて今は言えない。報告を待ちましょう。そろそろ警察も、さっきの糺社長の提案の答えを出すはずです。」
俊葵は、コクリコクリ何度も頷いた。
ずっと、もう、思い出せないほど長い間堪えてきた涙は、中々止まなかった。




