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沈丁花の咲く家  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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ダフネに捧ぐ⑨

『あ、俊葵君?さっき、店に警察来てさ、オーナー居なくて、俺が応対したんだけど、写真見せて、『この人見た事ないですか?』って聞いてきてさ、あれ俊葵君だった。一応、知らんとは言っといたけど、いや、いいんだよ。礼は、

隠し撮りじゃねぇの?写りの悪い写真で、だから分かんなかったとか、ま、後でいくらでも言い訳は効くからさ、

それより、何で俺が警察に知らんって言ったかって、今日来た警察官、不穏そのものって感じの奴でさ、おそらく明日も来る。もう、俊葵君がここのバイトだって知ってて来てるからなあいつ。あんな奴に連れてかれたら無事に帰ってこれない。だからほら、弁護士とか連絡取った方がいいと思ったからさ、今のうちに。俊葵君のお祖父さん代議士じゃん?伝手つてとか有んじゃないの。俊葵くん真面目だからさ、そう言うの使いたくないかもしんないけど、今回ばかりはさ、ツテでもコネでも使ったほうがいいって、マジでヤバイ奴だったから、それだけは言っとくよ。」


電話は俊葵の通う高校にほど近い、バイト先の居酒屋の店長だった。


話の内容にまるで身に覚えが無く、首を捻っていた俊葵だったが、一方で、長年夜の世界で生きて来た店長の感覚を俊葵は信頼している。

俊葵は店長の言う通りに祖父ではなく、叔父の戒田 糺の電話番号を表示させた。



俊葵は、この四月から学んでいた通信部から同じ高校の通学部に転部していた。

島を出て戒田邸でウイークデーのほとんどを暮らしている。


郵便局のアルバイトは真司が正式に引き継いだ。

今井工務店では代替わりが行われた。真司が高峰 稀世果との関係を追求すると、真司の父親はあっさり白状したという。長男に経営を譲るつもりだと言った次の日から高峰 稀世果とは連絡が取れなくなり、それからは関係していないと話したそうだ。やり手で本島にまで顔が広かった豪傑だったが、今は見る影もないとの事だ。


葵はなぜか東京には進学せず、同じ中高一貫校の高等部に進学した。

高峰 稀世果のその後について、俊葵は何も知らない。



翌日、居酒屋に出勤すると、店長が目配せしてきた。例の警察がカウンターの奥に座り込んでいる。目付きの悪い男だ。


「橋本 俊葵さんですか。」

「はい。」

「これから警察署まで一緒に来ていただけますか?」

「行きますが、弁護士を同行させます。少々お待ちいただけますか?」


男は、これ以上は無理だろうというほど、眉間の皺を深く刻んだ。













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