前日II
続きです。
楽しんでいただけたら幸いです。
世界は動き続ける、変わることなく夜は明け東の空から太陽が昇る。
昨日の夜、僕にとっては世界が変わったっておかしくないことが起きたのに、変わらず朝はやって来る。
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スペ子と名乗った女は、僕の手を引いて立たせた後、これから宇宙に行くから付いて来てと言い出し、首から下げている星型をしたネックレスを外しそのまま頭上に投げた。
宙に飛ばされたネックレスは光り出し、眩しくて何も見えなかった。
目を開いたら、そこには真っ黒の大型のバイクぽっい乗物が浮かんでいた。車体には大きな赤い星が描かれている。
「カッコいいっしょ」
スペ子は嬉しそうな声で僕に言ってきた。
勇人はありえない状況に驚いていたが、浮いてる乗物に目を輝かせていた。
「まあ、少しカッコいいんじゃない」
「正直じゃないニャ〜」
「うるさい、てかお前なんなんだよ!
その格好もおかしいよ!」
スペ子は背中に大きな赤い星が刺繍された黒のライダースーツを着ていて、下は同じく赤い星が小さくいくつも刺繍されている黒のダメージパンツを履いている。
そこまでは勇人もまだ理解できた、しかし、勇人にはどうしても分からない事があった。
スペ子が被っている黒のヘルメットと普通のマフラーよりも長さや幅が大きすぎる真っ赤なマフラーだ。
ヘルメットは顔を全体を覆っていてフルフェイス型のヘルメットであるが、形が丸ではなく真四角なのだ。
ヘルメットの中は前面のプラシチック部分からは何も見えなく顔がわからない。
「何を言ってんのさー、このカッコよさがが分からないゆう君こそカッコわるー」
「分かるくらいなら、カッコわるくていいよ別に。それよりさ、そのヘルメットとったら、話してるんだから」
勇人はスペ子が被っている真四角のヘルメットに指をさしながら言った。
「見たいー?、見たいんでしょー、私の顔」
スペ子はおちょくるような声で勇人に言う。
勇人は少しイラついて強引にヘルメットを取ろうとした。
しかし、伸ばした手はスペ子の気持ち悪い動きで簡単に避けられてしまう。
「ダメ、勇人が私と一緒に来てくれるならとってあげる」
「じゃあ、お前がヘルメットをとったら一緒に行ってやるよ」
勇人はスペ子の思い通りにになるのが気に食わないと思い、つい口走ってしまった。
「お前じゃないよ、スペ子だよ」
優しい声でスペ子はそう言い、ヘルメットの横の部分を指で押した。
ヘルメットは何かに吸い込まれるように消えて無くなり、スペ子の顔が露わになった。
勇人はスペ子の顔を見た瞬間心臓の鼓動が速く大きくなり、もう鼓動の音しか聞こえない。
まるで、時間が止まり真っ暗な世界は2人だけしかいないと感じた。
炎を思わせる真っ赤な髪、まっすぐに筋の通った綺麗な鼻、薄く小さな口、どのパーツも僕にとっては完璧だった。
真っ暗な星空に照らされたスペ子の顔は僕の12年の人生の中で一番綺麗だった。
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あの後スペ子は何も言わずに浮かんでいたバイクに乗りどこかへ行ってしまった。
昨日の夜は一体何だったのか、夢だったのかと考えながら勇人は眠たい体を動かしベットから起き上がって閉めていたカーテンを開ける。
「ゆうくーん、おはよー、さあ宇宙へ今行くぞー!」
窓の外から朝の耳には痛いくらいの甲高い声が聞こえた。
「夢じゃないのか」
勇人はため息を漏らしカーテンをゆっくりと閉めた。
ご愛読ありがとうございます。