space rider 前日
SF好きで書いてみようと思いました。
よかったら読んでってください。
窓を開けて、ベランダに出る。
外は真っ暗で何も見えない。何も聞こえない。
風が冷たく、空気も冷たい。
顔を上げ、夜空を見上げる。
今日はどうやら新月で月はどこにも見当たらない。
そのせいか、いつもより星の輝きが強いと感じた。
手を伸ばせば届くような感覚、届かないと分かっているけれども、不思議と僕は目の前に一番強く輝いている星に手を伸ばしていた。
手は届かない。
いつか父親が言っていた。
「行けないからこそ行きたくなる、成れないからこそ成りたくなる、届かないからこそ届かせたくなる。 勇人、お前はそんな人間になれ。」
一年に数日程度しか家に帰ってこなかった父親が帰ってくる度に大きな声で言っていた。
そんな変なことを言う父親はもういない。
急にいなくなってしまったから、母はまだ父親の写真の前で泣くときがある。
僕も泣いた、もう涙が一生出ないくらい。
でも泣いたって父親が返ってくるわけじゃない。
もう僕は明日から中学に行かなければならない。小学校を卒業したのだからもう僕は大人だ。大人になるんだ。
大人に成らなければならない。拳を強く握りしめ、そう決心した。
もう一度星に手を伸ばそうとする、さっきより星は強く輝いていて、今度こそ届くんじゃないかと感じた。
でも届かない。
伸ばしていた手を降ろし、星を見上げる。
「あれ?」
手を伸ばしていた星がどんどん近づいてきている。光が強くなっている。星の光で辺りは昼のように明けていた。
「こっちに来てる!」
勇人は振り返り急いで部屋の中に入ろうとしたが。窓に手をかけた瞬間辺りを照らしていた光が消え、一瞬で暗く冷たい夜に戻った。
勇人はもう一度振り返り夜空を見上げる。
さっきまであったはずの星は消えていた。
「何だったんだ。」
多分疲れているんだろうと思い勇人はもう寝ることにし、部屋に戻ろうとしたときだった。
「みーつけた!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声の主は、屋根の上からベランダに飛び入り勇人を押し倒しそのまま上に跨る。
「君が、ゆうくんだーよね」
暗くてよく見えないが声からして女性だと分かった。
「誰だよ!お前!!」
「ゆうくんを連れ去らいに来ましたー。スペースライダーのスペ子だよ、これからよろしくね!」
スペコと言った訳の分からない女はそう言いながら立ち上がり手を差し出してきた。
その手はほんの一瞬だがさっきまで届かなかった星を思わせる。勇人は手を伸ばしスペコの手をつかむ。
その時僕は何だかわからない感情が胸の中で溢れた。
ご愛読ありがとうございます。