5話『若者たち』
電気による照明の付けられたある一室で、一人の少女と、一人の少年がいた。
そこは機材の並べられた手術室のようであったが、かと言ってこれから何が行われるわけでなく、用意されていた器具も、トレーの上に使用済みの注射器が一本転がっているだけだ。
少年は薄い患者服を着て、部屋の中央にある寝台に安らかな顔で眠っている。
そのそばに立って彼を見守る少女は、なんともおかしな外見であった。
透き通るような銀色の髪を後ろでまとめポニーテールにした彼女は、なぜかメイド服を身にまとっていた。
病室に不釣り合いな姿の少女は、薄手の白い長手袋を嵌めた指先で、少年の頬をわずかになでた。
美しいことに、その少女の瞳は虹色の光彩だった。
「……靖治さん」
少年の名を呟く少女の瞳は瞬き一つせず、鮮やかな色彩で少年を見つめていた。
静かな時間が流れていた手術室であったが、突如として施設全体が揺れる感覚があり、少女はハッとして顔を上げる。
「侵入者……!」
壁を見つめているその虹の瞳は、ここ以外のどこかを見ていた。
少女は少年の寝顔を一瞥すると、スカートをはためかせて少年を置いたまま部屋から颯爽と飛び出していった。




