177話『決して寄り道ではなく、共に辿る長き道の途中』
朝早く、テイルネットワーク社の食堂に集まって重々しい空気を放つテーブルがあった。
目が覚めてから奇妙な確信に難しい顔をしているイリス。彼女に急かされながら朝食を腹に押し込んだ靖治、アリサ、ナハト。そして四人が囲むテーブルのそばには、突如として現れた幽体の騎士ロムルが立ち厳しい顔を見せていた。
張り詰めた雰囲気の一行を、この店の主人である岩おばさんも仕事をする傍らしきりに気にしていた。
事態が肩にのしかかるのを感じながら、靖治が眼鏡を掛け直してイリスを見た。
「情報を整理しよう。イリス、君は天羽月読という、300年前に死んだはずの女の子のことを感じたんだね」
「ハイ!」
問われたイリスは膝の上に両手を押し付けて、硬い表情でテーブルを見つめたまま口を開く。
「私がどういう経路でこの情報を会得したのかは自分でもわかりません。でも確かにわかったんです。この世界のどこかで、月読さんが私の助けを求めている。私は行かなくちゃいけないんです……!」
要領を得ない、しかしながら強い真実味に満ちた口調に、アリサとナハトは訝しがりながらも真剣に聞いていた。
「300年前の虐殺が起きた日、目の前の人が死んでいったのは仕方がないことだとずっと考えてました、でもそれだけじゃなく、本当は悔しいとも思ってました。そうだ、私は悔しいんです。だからあの日あの時あの場所にいた、あの月読さんが私を呼ぶのなら、私の存在に懸けて助けに行かなければならないんです……じゃないと、どうして私が生まれてきたのかわかりません……!」
イリスにとっては、ある意味、過去を取り戻すかのような望外のチャンスと言っても良かった。それで既に起きたことは変わらないけれど、これを果たさなければ過去の惨劇がイリスにとって『意味なき出来事』へと成り下がってしまう。
過去を埋もれせないために、イリスはこの問題に立ち会う必要があるのだ。
そこに話を聞いたアリサが、眉を寄せながら疑問を呈した。
「300年前に死んだ子供の声ってのも眉唾だけど、機械がそんな予知能力みたいな真似できるわけ?」
「わたくしどもが知らぬ要因がいくつも重なった結果かもしれませんよ。なにせここはワンダフルワールド」
「この世界は何でもありか……」
ナハトの言葉に、アリサは渋々受け入れる。
いくつか疑問点が残るものの、ここは摩訶不思議なことが起き放題の未知と驚嘆の世界だ。
むしろ自分の体験を詳細なメモリーで残せるロボットのイリスが、直感でそんなことを言い出したところが逆に真実味があると言っていい。
仲間たちは首を傾げながらも、真偽を疑うことはほとんどしなかった。もし気のせいの取り越し苦労で済めば、むしろありがたいくらいの心持ちだ。
だがどちらにせよ簡単には行かないことは、騎士ロムルからの情報から感じられた。
「そしてロムルさん、あなたは月読ちゃんのことを知ってるんですね?」
「うむ、その通りである」
靖治の問いかけに合わせて、ロムルがズズイっと前に出る。裸で巨漢で筋肉ムキムキの爺さんの圧力にアリサが「服着ろよジジイ……」と愚痴っていたが、ロムルは気にせず話し始めた。
「吾輩、守護者に倒されてから気ままな浮遊霊ライフを満喫しておったのだがな、霊体になってから今までにないものが視えて聴こえる。そして吾輩のナイトイヤーが助けを求める少女の声を確かに聞きつけたのだ。すかさずそこに向かったが、そこにいたのは生きた人間や動物を取り込み材料とした、モンスターのような要塞のような、巨大な蜘蛛型の魔獣だった」
話し始めてすぐに周囲は息を呑むことになった。その魔獣、どう考えてもまともな相手ではない。
「取り込まれた者の一人一人が苦悶の表情を浮かべ、自ら死を望んで殺してくれと叫んでおった。その中で耳を澄ますと、魔獣の一部分から正気を保った少女の声がした。魔獣から生えた肉の樹の一部に、少女の幽霊が何かに引き付けられたのか、めりこんだまま身動きが取れなくなっておったのだ」
「月読さんです!! 間違いないありません!!」
「うむ、本人もそう名乗っておった」
テーブルを叩いて立ち上がったイリスを、アリサが「落ち着きなさいって、座れ」とたしなめた。
「彼女からは詳しい話を聞いたが。どうやら昔に死んだあと、何か光のようなものに魂が導かれたらしい、しかしその途中で別の何かに引き付けられてしまい、魔獣の内側に閉じ込められたそうだ。ここはみんなが苦しんでいる、どうか助けて欲しいと吾輩に請うてきたよ。まさかそこな機械少女の友人だとはな」
導きとなった"光"というのは、俗に言うあの世のようなものだろうか。少し気にはなったが、今この場では重要なことではない。
それよりもナハトが聖騎士として尋ねた。
「騎士ロムル、あなたはそれを聞いて……」
「無論、助けようとしたとも! しかし何分、今は肉体を失って気合のみで動く身。力及ばず逃げ帰ってきて、ひとまず刃を交えたこともあるお前たちを頼りにしに来たのだ」
「えっ、じいさん気合で幽霊やってんの? 特殊能力とかじゃなくて?」
「フッ、心身ともに鍛え上げられたボディに不可能はぬぁい!!! 見よ、この踊り狂う筋肉を!!!」
「意志力で自由に活動してあまつさえ戦えまでする幽霊とは、悪霊より性質の悪い御仁ですわね……」
マッスルポーズを取り自在に筋肉をデコボコさせまくる筋肉オバケから視線を外し、アリサが組んだ手を枕に天井を仰いで声を漏らす。
「しっかしアカシの百果樹かぁ。目標だったキョウトとは反対方向じゃない、向かうとなるとまた数日かかるわよ」
「いえ、それは靖治さんを護衛しながらの時間です。私一人なら飲まず食わずで移動可能、単独で向かえば一日で……」
日本海付近に新造されたネオ京都の近くまで来ていた一行からすると、淡路島の近くに位置する明石の百果樹はすぐに行ける場所ではない。
しかしイリスであれば、人間と違い基本無補給で活動が可能だ。最近は自我の成長で睡眠が必要になってきてはいるが、それでも数日の不眠不休は問題ない。
それを聞いたアリサは目つきを鋭くして、イリスへ向かって叱責を飛ばした。
「馬鹿言うんじゃないわよ! 心配がって先走ってるやつ一人で行かせたって無駄死にするだけじゃない! あんた一人で行かせられるか!」
「で、でも今回のことはこれまででもっとも危険な問題かもしれません! 月読さんを助けたいのは私の私情です、みなさんまで巻き込むわけには……!」
イリスがいつもより自身の感情に振り回されている姿を眺めていたナハトが、どこか冷たい視線を靖治へと滑らせた。
「セイジさん、あなたの意見をお伺いしても?」
靖治は頷くと、テーブルに身を乗り出して淡々と考えを述べた。
「危険そうだね、だからこそみんなで行くべきだ。アリサとナハトはもちろんのこと、僕もギリギリまで近くにいて見守りたい」
「そんな、靖治さんはせめて安全な場所に! ここで岩おばさんに頼って……」
靖治の保護が最優先であるイリスは声を荒げていたが、それをナハトが手で制して口を挟む。
「わたくしもセイジさんの意見に賛成ですね。わたくしとイリスさんとアリサさん、三人の友好もそれなりに深まっては来ましたが、それでも我々が集った基点はセイジさんに他なりません。彼こそが我々の要、危険で困難であるのならばこそ、可能な限りセイジさんにもついてきてもらうべきです。それこそが結束を生み、もしもの時にも状況を打開する力を生むと考えます」
当然、これ以上は無理だというラインが目の前に来たらば、靖治はそこで置いていくしかないが、それでもそこまでは同行すべきとナハトは主張した。
ナハトが考える最悪のケースは、切羽づまった状況になった時、心の拠り所を見失って個々人が活力を失うことだ。
すでに今の時点でもイリスは動揺が激しい、このパーティが全力で事に当たるには靖治の存在が絶対必要だと考えたのだ。
これを受けてアリサも納得して頷いた。
「……そうよね、あたしも二人に賛成。多分セイジは必要だわ」
「うぅ~、でもでも……!」
「イリスさん。これは無意味なリスクでなく、勝率を上げるために不可欠なものだと理解して下さい。セイジさんの安全を確保しても、それで我々が全滅すれば元も子もありませんわ」
ナハトは困惑しているイリスを真っ直ぐ見つめ、真摯に語りかける。
「目指すべきは誰か一人が死なないのでなく、全員が生き残れる確率がもっとも高い道でありましょう。少なくとも、わたくしはそれを前提として思考しています。あなたも望むところはそうでないのですか?」
自己の浅ましさを自覚しているナハトは自分が死ぬのは嫌であったし、同様に仲間たちのいずれかが命を落とすことも受け入れたくはなかった。冷徹な戦争屋の側面からは甘い考えだという糾弾の声もあったが、この価値観こそがこの集まりには相応しかろうと思っていた。
「……わかりました。私も他のみんなが死ぬのは嫌です」
イリスは握った拳を震わせながらも、ここは受け入れてくれた。靖治とナハトの理性的な姿に、少し冷静になりつつあるようだ。
一旦話が落ち着いたのを見て、靖治が再びロムルへと顔を向ける。
「ロムルさんはこれからどうしますか?」
「手伝いたいのは山々であるが、先の接触でだいぶ存在を損耗してしまった。そもそも現世から消えるべきを無理にすがりついてる身であるからな。これ以上は老骨に堪える。恥ずかしながら吾輩はここまでのようである。すまぬな若人よ」
「いえ、情報の提供ありがとうございます。おかげで方針も決まりました」
「吾輩はしばし大自然の流れの中を漂い、英気を養うとしよう。検討を祈っておるぞ」
ロムルはそう言うと幽体を煙状に変化させ、世界に溶けるかのごとく忽然と姿を消した。
ともかくこれで全員で向かうことは決まった、あとはどういう経路で向かうのかだ。
「しかしやっぱ移動に時間がかかるのが問題よね。ぶっちゃけあたしらが辿り着いた時には、もう他のやつが解決してましたってのもあるかもよ。そっちのが楽でいいんだけど」
「それでも月読さんが私を呼んでる以上は行かないわけにはいきません! 一日でも早く、その場所へ……!」
イリスがいきり立っている時、透き通った鈴のような声が通り抜けた。
「――時は来たれり」
どこか静かで、けれども存在感をまとった柔らかい声に、靖治たちは思わず口をつぐんで声の方向を見上げる。
食堂から続く階段の上にいたのは、白いトネリコの杖を携えたマナの姿であった。彼女の後ろには老人のロイ・ブレイリーが柄だけの聖剣を背負って従っている。
「マナさん……?」
「ウチがここに留まったのはそもそもこれのため。昨日のは思い出を埋めるための単なる寄り道に過ぎない」
マナが青い法衣を揺らしながら階段を降りてくる。その様子は昨日の彼女にあった無邪気な童心が消え、ひたすら神秘的で犯し難い神聖さがあった。
神の子のような静けさをまとったマナは、靖治たちと同じ視線に立つと琥珀色の視線で一行を射抜いた。
「イリスちゃん、あなたが超えるべき己の因果に立ち向かうというのなら、ウチがそこに送り届けましょう。これもまた人々の邁進の一つ、愛すべき宿業と超克の輪廻である。その大いなる小さき一歩の導き手になることこそ、ウチが持って生まれた本来の使命」
常人とはまったく異なる視点を語る姿に、イリスも、アリサも、ナハトも圧倒されていた。唯一言葉の意味をおぼろげながら捉えていられたのは靖治くらいか。
イリスは驚きで瞳を震わせながらも、席から離れてマナへと近寄った。
「ま、マナさん……本当に私たちをそこへ運べるのですか……?」
「いかにも、けれどそれには一つ問わねばならない」
マナは一拍を置き、朝霧のような冷たく、道行く人を惑わす試練の言霊を吐く。
「なし崩し的に巻き込まれてきたこれまでの運命とは違う、イリスちゃんの意思でみんなを危険に巻き込もうとしてる。その上で進みたいか?」
「それは……」
返答に迷い、イリスは後ろを振り返る。
そこにはテーブルについたままの靖治がいる、アリサがいる、ナハトがいる。イリスを大切にしてくれ、多くを教えてくれるこの仲間をイリスは自分の意思で危険に晒すのだ。
その恐ろしさと罪深さにイリスは胸を締め付けられながらも、それでも奥深くの慟哭に抗えず口を開こうとする。
「みなさん、ごめんなさい。でも私は……」
おずおずと言い出そうとする最中に、靖治が椅子を引いて立ち上がった。
「謝ることないさイリス。君のしたいことが僕らのしたいことだ」
「しょーがないでしょ、パーティなんだから」
「お気になさらず、ここで見過ごしてはわたくしとしても騎士の沽券にかかわりますから」
アリサとナハトも、涼しい顔をしながら席を立つ。
みんな優しさを湛えながらイリスの前に集まってきてくれる。そのことにイリスは大きな力を胸に与えられ顔の影を拭い去ると、表情を引き締めマナへと向き直った。
「行きます。大変かもしれませんが、みんなでこれをやり抜きます」
決意に満ちたイリスの言葉に、マナは幼い顔をわずかにほころばせた。
「ならば良し。では早速」
「いや、ついでだ」
言葉を遮り、靖治が前へ出てきた。
「テイルネットワーク社を仲介して、僕らからマナちゃんへの正式な依頼としたい。依頼内容は僕たち四人全員を然るべき場所へと送り届けること」
靖治からの申し出に仲間たちは不思議そうにな顔をしていたが、マナだけは驚いた様子で静かに眼を丸くしていた。
「そう来るとは予想外。あなたは簡単に周りの因果をかき乱すのね、まるで混沌だわ。死に触れたから?」
「さあね、僕は僕のしたいようにしてるだけさ」
靖治には靖治なりの考えがある。別に契約でマナを縛り付けるということでなく、自分たちの動向を伝えたい人が別にいたのだ。
それに必要なのはダアトクリスタルに触れること。だからこれのついでに、依頼という形でダアトクリスタルを使用しようと思っただけのことだ。
「報酬はどうするの?」
「お金は……アリサぁー、余裕あったっけ?」
「ないっ!!」
「じゃあそうだな、いつかマナちゃんが困ったことになった時、無償で手を貸すってのはどうだい?」
我ながらいい考えだと様子で靖治が指を鳴らしながら尋ねる。密かに練習してた素敵モーションだ。
それを聞いて、マナは肩を震わせて少し笑うと、年相応の幼さを見せながら答えた。
「うふふ。わかった、正直ちびっと不安だけどウチはそれでオゥケーィ」
「よし、よろしく頼むね」
それまで見守るだけだったロイ・ブレイリーが、マナの耳元に顔を近づけて話しかけた。
「マナや、いいんかいのう? 冒険者登録したがらなかったじゃろ」
「いいよ、登録のほうは気持ち悪いってだけだったし、害はない。運命のレールから外れるのは怖いけど、そろそろ因果が高まってくるころだ、ウチも気合入れなくっちゃとは思ってた。ってーなこーとでぇー、おーばさん登録おねがーい! カードちょーらいカード!」
どうやら冒険者登録もまだだったらしいマナは、カウンターに浮かぶダアトクリスタルに手をかざしながら、岩おばさんに頼んで冒険者カードを作ってもらっていた。
6人はそれぞれの陣営に集まって向かい立つと、岩おばさんの立ち会いのもとクリスタルの前でそれぞれの冒険者カードを持ち、呪文を謳う。
「こちらは送り手、名は万葉靖治。依頼内容は移送依頼、僕たち4人全員を然るべき場所へ送り届けること」
「こちらは手繰り手、名はマナ、及びロイ・ブレイリーが依頼を受領する」
「テイルネットワーク社のごちそう温泉宿店店主、名はロッキン・ネスがこれに立ち会うよ」
靖治とマナ、そしてロイの持っているカードが金色の光の糸で繋がり、惹かれ合う因果の光の中で互いに言の葉を交わす。
「「ここに我ら出会いを結び、願いの先に至らんと立ち向かうものなり」」
「承認し、見届けたり。ここに契約は交わされた。この契りが遂げられることを期待するよ」
契約が完了し、カードは光の粒となって足元に消えていった。
状況が整い、マナは薄く笑いながら靖治に歩み寄ると、後ろのイリスたちには聞こえないようこっそり話しかけた。
「セイジさん、愛読家によろしく」
マナはそれだけ伝えると「じゃ、外で待ってるから」と言って手を振り、ロイと共に店の外へと歩いていった。
この言葉に靖治はなるほどなーとどこか得心しながらも、仲間たちへと振り返った。
「よし、出発だ。僕もすぐに準備を整えるよ」
「ハイ! 急ぎましょう!」
パーティはドタバタと足音を立てて連泊していた部屋に戻ると、荷物をまとめて準備を整えた。
メンバーの中で一番時間がかかるのが荷物持ちの靖治だ、最後にバックパックを背負って部屋を出た彼は、出発間際に岩おばさんの前へ顔を出した。
「おばさん、どうも長いあいだお世話になりました」
「あぁ、そうだね……ねぇセイジくん、ちょっといいかい?」
去ろうとするところを引き止められ、靖治は不思議がりながらも岩おばさんの大柄な体を仰ぎ見た。
支払ってない代金でもあったかと考えていたが、出てきたのは別の言葉だった。
「本当に行くのかい? 話はチラチラとしか聞けてないけど、どえらいことのようじゃないか」
どうやら岩おばさんも事態の重さを察し、靖治たちのことを心配してくれていたようだ。
「アンタたち、まだみんな若いじゃないかい。ナハトちゃんだっておばさんから見りゃ子供だし、イリスちゃんだって心は育ちはじめたばっかりだ。アンタたちが危険に飛び込まなくたって、熟練の冒険者たちに任せてよかないかい?」
確かにこれは子供のお使いで済む範疇ではなさそうだ。そういった考えも至極当然なものであろう。
しかし靖治は迷わず答えた。
「イリスは行かなくちゃ納得できませんよ。なら僕らは一蓮托生、一緒に進むだけです」
「でも……」
「それに」
岩おばさんの言葉を振り切り、靖治は視線を外すとどこか先へ熱い眼差しで言葉を吐いた。
「誰かがやればいいことなら、僕らがやっちゃいけない理由なんてないでしょ」
眼鏡の下から力強い瞳を向けている。その色は日本人特有の黒い眼なのに、まるで青い炎が灯っているかのようだ。
彼はこの1000年後に、希望を持って時間を超えてきた。それまでありとあらゆる青春を諦めてきた彼だからこそ、燃えたぎるものが心にあった。
引き締まった横顔に何かを感じたのだろう、岩おばさんはどこか己を恥じるかのように肩を落とした。
「そうか、そうだねえ。あんたはもう、自分で行き先を決めれる子なんだね。ならおばさんはもう何も言わないよ、気張っていきなよ」
「ありがとうございます。解決したらまたこの街に来ますので、ではまた」
別れを告げ、岩おばさんに背を向けて店の扉をくぐる。
最後には信じてくれたおばさんに見送られ、靖治はイリスたちの元へ小走りで駆け寄った。
「みんな行こう! イリスの旅路は僕らの旅路。みんなで旅の続きだ!」
靖治「ところで思い出を埋めるってどういう意味?」
マナ「サブイベ埋めとかイベントCG回収的なー」
靖治「なるほどわかりやすい」
なおマナちゃんは契約の際、ちょっと術式に干渉して真名を隠して依頼を交わしてたりします。




