プロローグ4
「ええっと次は……」
そうやってキョロキョロと迷っている素振りを見せている彼女は、可愛さで自身の無能さをごまかそうとしているのでしょうか。
ここまでいくつかのインターンシップをこなしてきましたが、そのどれもが私の趣味に合うとは言えず、控えめに言って、排泄物のような世界の数々でした。ええ、これ以上はダメです。しっかりと拒否しなければ。
「あの!」
私の声が真っ白な空間にこだまします。あるいはこだまと思える回数だけ、思わず声を上げてしまったのかもしれません。とにかくそれくらいに必死でした。やはりこのまま流されるのは良くありません。ここは断固、自身の主張を通しましょう。
「私、やはり転生なんてしたくありません」
「えー……。うぅ、どうして?」
ああ、そんな涙をためた上目遣いで私を見ないでください。何も悪いことはしていないと理解しながらも良心が痛みます。しかしここで引き下がるわけにはいきません。断固主張。貫くのです。
「私、思うんですよ。今まで普通に生きていた時にも寝ている時が一番楽しいと思っていたような人種なんです。私。だから、その、転生するよりも、その……」
何にしたって、あんなに恥ずかしいセリフの数々になれることなんてできません。
「だ、だめだよぉ。世界に存在できる魂の総量には限りがあるから、だから転生してもらって有効活用できないと……みんな何かしらの仕事・役割は果たさないと……」
はあ、なるほど、そんな事情が。なんだか超常的な何かが暗躍している様ですが……。いや、待ってください。
「だとしたらあなたは何の役割を担っているのですか?」
これは妥当な質問ではありませんか?
「わ、わたし? わたしは、えーっと……、ここでみなさんがよりよい転生を行えるように手助けをー……」
なんだかマニュアル的な答えですが、なるほど、合点が行きました。
「だったら、私もそれやります」
「え?」
「私、あなたの手伝いをします」
私がそう言うと、彼女はとても複雑な表情をしました。笑っているような、悲しんでいるような、かと言って嬉しそうな、それでも私を憐れんでいるような……。
「い、いいの? ここの仕事、大変だよ! たぶん転生した方がずっと楽しいし楽だよ!」
そうは言いつつも、少し顔をほころばせている彼女が、とても愛らしく思えました。
「ええ、どうせ何の取り柄も無い魂です。せめて人様の役に立てましょう」
生前の私では考えられないような物言い。死んでから分かることなのですが、私のような怠惰な人間にとっては、生きるという行為が生きている中で最もつらいのです。
「そっかぁ……! 分かった! じゃあこれから一緒にガンバロー!」
彼女はそう言って私に飛びかかってきました。いえ、抱き着いて来たという方が行為を表す言葉としてふさわしいのですが、何事も顧みない捨て身の抱き着きは、私のようなひ弱な体を有している人間には飛びかかりと等しいのです。
「はい、じゃあよろしくお願いします。……えーっと」
私がそう言いかけると、彼女は少し首を傾げましたが、直ぐに私の意図を掴んだようでした。そしてこの真っ白な世界でも霞まない、恒星なんかよりもずっと明るい笑顔でこう言いました。
「私はメルン! 今日からよろしくね!」
次から本編入ります。