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ホルエルン到着

移動時間を使い、アルシュタインと話しをする、俺とルシフルエント。


「で?おぬし達は、かの地で何をするつもりじゃ?」


「実は……逆にお聞きしたいんですけどぉ」

アルシュタインはモジモジしている。


「なんじゃ?答えられる範囲で聞いてやろう」


「あのぉ、税金のような物は徴収されているのですかぁ?」


「魔族は部族の結びつきが非常に強く、また部族長の言葉は絶対じゃ。それを束ねる妾が一声かければいかようにも税や労働力は上納されるのじゃ」


「定期的な物はぁ、あるんですか?」


「城の維持管理や妾の身の回りの世話ぐらいかのう?まあ、しいて言うなら食料くらいか?そのような事を聞いてどうするのじゃ」


「一応ぅ、王様から、年間の租税を仰せつかっているので……でもぉ、無理ならばぁ、申請により免除するって言ってましたぁ」


「まあ、属国だしね。ちなみに……どれくらいなの?」


「年間金貨1万枚相当ですよぉ。領地面積に比べればぁ~格安ですぅ~」


「へ?1……万?格安かぁ?」


「格安ですよぉ~、一般男爵レベルの租税ですからぁ~。面積は国レベルぐらいあるのにぃ~。ちなみにぃ~、某有力公爵様はぁ~、なんと年間金貨100万枚相当ですぅ~。どうやって集めてるんでしょうねぇ?不思議ですぅ~」


「ふむ……人間世界の貨幣価値はよく分からん。おまえ様よ。任せた」


「おいおい!ちなみに、ルフェちゃんがお金を集めたことは?」


「無い。金なぞ使わずとも城などの修復はできる。どこぞで使う機会があるのかえ?」


「もしかして、かの地は貨幣が無いの?使用人達のお給料は?」


「無い。妾に使える魔族は、全て妾に使えることこそ至上の喜びといっておるぞ?給金?なんじゃそれは?」


「はぁ~」

俺は頭を抱えた。


「無償奉仕が至上の喜びなんてぇ~、素敵な皆さんなんですね?」

アルシュタインが両手を合わせ、朗らかに微笑んだ。


「そう言えば、大元帥ホホロンが、貨幣がどうのと言っておった気がするのぉ。150年前に」


「はぁ~……倒すんじゃなかった」

俺は自らの判断に後悔した。


「まあまあ。とりあえずは現物でも良いって言ってましたし、最悪、免除申請もできますのからぁ、気長に考えましょうぉ~」

俺に、にこやかに微笑みかけるアルシュタイン。


不味い。

天使に見えてきた。


そんな、俺の考えを見透かしたように、ルシフルエントがジト目で睨み付けてくる。


「おまえ様……鼻の下が伸びとるんじゃが?」


「いえ!伸びてません!!」

俺は背筋を正す。


「??」

アルシュタインは突然の俺の行動に訳が分からない感じだった。


「ねえ。アルシュタインさん」


「何でしょう?カール様ぁ」


「現物で納めるにしても基準がよく分からない。目安になる物ってあるの?」


「う~ん。やっぱり、金や銀などの貴金属が目安になると思いますぅ。あとは特殊綱などですねぇ」


「特殊綱?」


「ミスリルや、アダマンタイトなどの魔力を帯びた金属ですぅ。なかなか産出され無いのでぇ、金よりも高いんですよぉ」


「ふむ。無いこともない」


「え!あるの!?」


「北の炎を操るメラダー元帥率いる、獣魔族の領地に有るという事を、200年前、大元帥ホホロンが言っておった気がする」


『またホホロンか!』

俺は頭を抱え、更に後悔する。


というか……ホントに魔族の頭脳だな……大元帥ホホロンって。


「機会があれば見てみましょう!埋蔵量次第では交易だって夢じゃありませんし!」


「交易?」


「はい現物で納めると市場価格より安く買いたたかれますしぃ、輸出した利益で租税を払う方がずっとお得ですよぉ~」


「そうか……まあ、何にせよ今は、捕らぬ狸の皮算用だしな」


「私はぁ、王都でもぉ内政庶務……特に税制関連の筆頭執政官の一人なのでぇ~、お任せください!」


「あのさ……ちょっと失礼な事聞いていい?」


「はい?なんでしょうかぁ?」


「アルシュタインさんはいくつなの?」


「今年で26歳になりますぅ~恥ずかしいですぅ~」


「恥ずかしい?」


「こんなにおばさんなのに…まだ独身なんですぅ~。ちなみに王都女性の平均婚姻年齢は18歳なんですよ~。きゃ~!恥ずかしい!」


両手で頬を押さえ、顔を赤らめフルフルとぶりっ子の様に恥ずかしがるアルシュタイン。

左右に顔を振るたびに背中にかけて流れるような黒髪がフルフルと波打つ。


『どう見ても俺より年下みたいな言動だよなぁ』

彼女の言動は非常におっとりかつぶりっ子だ。


「ふん……やはりあの王も食えぬやつよのぅ。派遣団の代表が税制の執政官とは」


「お金は大事ですからねぇ~」

アルシュタインは苦笑いを浮かべる。


「まあ、なんにせよ俺は門外漢だし、任せてもいいだろ?ルフェちゃん」


「好きにするがよい」

ルシフルエントは腕を組みながら興味なさげに言った。


「ありがとうございますぅ!かの地で骨を埋める覚悟で頑張りますぅ~」

アルシュタインはなぜか可愛らしく敬礼をした。


あれ?……なんだか、アルシュタインがこちら側の人間のように見えてきた。

気のせいか?


俺は腕を組みながら考える。


流れるような黒髪でおっとりお姉さん的なアルシュタイン。

体型は標準的王国女性と言ったところか……。


「おまえ様……また、鼻の下が伸びておるぞ?」

いつの間にルシフルエントがジト目で睨みつけていた。


「いえ!伸びてません!!」

思わず俺はルシフルエントに敬礼をする。


「??」

不思議がるアルシュタイン。


「まったく……おまえ様も気が多い。先が思いやられるぞ」

ジト目がさらにひどくなるルシフルエント。


「はは…は」

俺は苦笑いで曖昧に濁す。



そうこう話しているうちに、馬車は首都ホルエルンの魔王城についた。


そして、玉座の間の隣にある広い多目的ホールに集められる。


「早速じゃが、顔合わせを行う。各自、仕事着に着替えたらここに参集せよ。よいか?」


「はい!」


ルシフルエントの凛とした声に、アルシュタインら30人の秘書官たちは緊張した声で返事をする。


「着替えはこの部屋の隣……妾のドレッサールームを使用するがよい。では、急げ!」


「はい!」

アルシュタインたちは駆け足で向かった。



続々と参集する魔族たち。

その姿は多岐にわたる。


「金勘定なぞ見当がつかん。リッチやロードウィザードなどをあてがうか?」

ルシフルエントは顎に手を当て考える。

よほど真剣に考えているのか独り言が止まらない。


そうこうしているうちに秘書官たちがパリッとした王宮然とした服装で帰ってくる。


『やっぱり……不自然に見える』


王宮然とした格好の比較的若い部類の秘書官たちの前には魔術師魔族に、ゴーレムに、炎を纏う獣や4本の手があるアンデットや馬の下半身に人間の上半身の魔族なんかもいる。


よく見れば、秘書官の一人なんか怖くて足が震えてる。

そりゃそうだ。

俺も冒険の最初の頃はあんな感じだったもんなぁ。


昔を思い出しながら感傷に耽る。


「遅くなり申し訳ありません~」

最後に現れたのがアルシュタインだった。


「……何故にメイド服?」

思わず心の声が口に出てしまった。


アルシュタインはフリフリのメイド服に黒縁の眼鏡をかけ現れた。


「あの……アルシュタインさん?」

俺は思わず呼び止める。


「はい?何でしょうか?」


「いつもその恰好で仕事を?」


「はい!これが私の仕事着ですぅ!」

にこやかに笑顔で答えるアルシュタイン。


「そう……わかった。邪魔してごめんね。どうぞ並んで」


「はい!失礼しますぅ」

アルシュタインは秘書官らの列に並んだ。



アルシュタインが並んだのを見て、ルシフルエントが凛とした声で号令する。


「本日より。我が居城で働くことになった人間どもである。みなの者!こやつらの自由は妾が保証した。好きにさせるように!」


「ハ!」

魔族たちはいっせいに深々と頭を垂れる。


秘書官たちの何人かは震えていた。


「さて人間ども。これより我が居城ギルムアハラントで、この地をより強大にするために最善を尽くせ!ここにおる魔族はいかように使っても構わん。キル!前へ出ろ!」


「ハッ!」

返事と共に漆黒のローブを纏った魔導士のような魔族が出てくる。


「こやつはロードウィザードのキルという。大元帥ホホロンの右腕じゃった男だ。何か用があればこやつと話せ」


「はい!」

秘書官たちは凛とした声で返事をした。


「ではみなの者!妾の為に最善を尽くせ!」


「ハッ!」

「はい!」

魔族と秘書官は同時に凛とした返答をした。

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