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練習

俺は上半身裸で、下半身はマワージという伝統的なピタピタの半パンを履いてまるくんに挑む。


しかし、この競技は意外と奥が深い。


お互いの両手を組んでいるので、単純に力押しかと思っていたため、号令と共におもいっきり押したら、そのまますっころんだ。


原因は単純。相手がおもいっきり引いたのだ。


「引くのってアリなの?」


「もちろんっすよ。とにかく相手の背中に土をつければ勝ちっすからね」


「よし……もう一度」


両手を組む。


号令と共に今度はまるくんも押してきた。


少しだけ、引いてみる。


そしたら、まるくんは体ごと動かして懐に飛び込んできた。


『マズっ!』

そう思ったが、もう遅かった。


組んでた両手はいつの間にか離されて、抱きつかれる。


そして、両手でつり上げられた。

ヒョイッと投げられる俺。


何とか受け身はとったが、背中から落ちたため当然負けだ。


「ふむ……おまえ様よ。魔剣を取り込まんのかえ?」


「感覚を掴むまではちょっとね……なんだか力技だけじゃないみたいだし」


「そうか……痛ければ言うのじゃぞ?妾は心配で、心配で」

オロオロするルシフルエント。


「ぷっ!なんっすか姉御。かーちゃんみたいな事いってるっすよ?」


「旦那を心配するのは妻の勤めじゃ。お前も伴侶を持てばわかろう」


「ふ~ん?……そんなもんっすかね?」


丸々一日使って、基礎を何とか習得した。


最初は苦戦したまるくんだったが、コツを掴めた後半からは負けることはなくなった。


「ほー!なかなかやるっすね。まるくんは年齢別では一・二を争う強豪っすよ?正直1日でここまでとは驚きっす!!」

パチパチと手を叩くリリー。


「はぁ……はぁ…疲れた」

肩で息をする俺。


「今日はもう遅い。食事にするかのう?」


「そうしてくれると助かる」


「いいっすね!!さっきココが腕によりをかけて作るって言ってたっす!」


「お前も食うか?リリーよ」


「さっすが姉御!ご相伴になるっす!ゴチです!!」

両手を広げて、大げさに喜ぶリリー。


『リリーは、ホント自由気ままだな……でも、悪い子じゃなさそうだ』

俺は汗を拭きながらそんな事を思った。




洞窟に戻ると良い匂いが漂っていた。


洞窟前に焚き火を起こし、その回りに奥から持ってきた石でできた椅子と机を置いて、バーベキュー形式をとっている。


俺は着替えて椅子に座る。

野外で食べるなんてルシフルエント討伐の時以来だったので少し懐かしかった。



ココとゼロとホウデガーは鍋から皿にポトフを入れる。


「は~い!ココ特製、謎肉のポトフよ~」


「謎肉とはなんじゃ?」


「知らないわよ。龍達がいろんな種類の肉を持ってきたんだもん。だから謎肉」


「なんだかワイルドで力が出そうだね?」

俺は笑いながら言った。


「でしょ?力をつけて黒龍ちゃんに勝ってもらわなきゃ!!」


「おほほ~!良いオイニーっす!いただくっす!」


全員分の皿が行きわたり、食事タイムになった。


ガツガツと食べるリリーの勢いはすさまじい。


しかし、そんな光景もなんだか微笑ましくて俺は頬を緩める。


「おまえ様?どうしたかえ?」


「いや……なんだか、懐かしくてね。この雑多な肉を煮詰めたポトフも、よく冒険者時代に食べてたなぁって思ってさ」


「そうそう。生臭い肉も多くてさ~。いろんなハーブを入れたり、香辛料でごまかしたりしたモンよ」

ココがスプーンをクルクルしながら言う。


「ほう……第2夫人はそう言うところは達者じゃのう?」


「そうっすよ!こんな小難しい料理なんてうちらはできないっす!ねー、姉御?」


「馬鹿!一緒にするでない!妾はできる!朝食だって作ったことあるんじゃからな」


「へー!驚きっす!あの骨ごと肉をボリボリ食ってた姉御らしからぬ言葉っす!!やっぱり結婚すると違うっすね!!」


『……今でもそうなんだけどね』

俺は苦笑いを浮かべる。


「ねえ。どんな朝食だったの?」

ココは聞いてきた。


「あ……え~っと」

俺は内心ヒヤヒヤしながら思い出すフリをして、辺りを見回す。


ルシフルエントと目があった。


なんだか顔を真っ赤にしてこちらに訴えかけてるようだ。


『ははぁ……恥ずかしいんだな』

俺は少しだけ腹黒くなった。


「たしか……ウサギだったかなぁ?」


俺はルシフルエントの顔を見た。


驚き、『違う!』と、手で一生懸命ジェスチャーしている。


『やっぱりな』

俺は予想が当たりにやけた。

俺の前ではあれだけ『肉は肉』と豪語していたが、あの一件以来こっそりと料理の練習をしているのを聞いている。

ルシフルエントにおいては、王都でのあの朝食の内容は黒歴史なのだ。


「そうそう!ウサギだ、ウサギ!それを皮がついててそのまま……」

俺はゆっくりと反応を見ながら言う。


ココやホウデガーは『え?』と、いうような顔をしていた。


ルシフルエントは顔を真っ青にして今にも飛び出して来そうな感じだった。




「そのまま…………じゃ食べれられないから、ちゃんと処理をして、パンに挟んで食べたよ。サンドロウィッチていうソリ王国の食べ物に似てたなぁ。おいしかったよ」


「なんだ……てっきり、リリーが言ってたみたいに生で食べたのかと思ったじゃない?」


「そうっすよ!言い回しが変でわかりにくいっす!!お詫びにもう一杯ポトフを注ぐっす!」


「はいはい」

俺は笑いながらリリーの器を受け取り、注いでやった。


ルシフルエントも近づいてきた。

そして、耳元でささやく。


「おまえ様……ワザとじゃろう?」


「ワザとだよ?」

そう言うと背中をつねってきた。


「イタタ!」


「あとで、覚えておくのじゃぞ?」

ルシフルエントは、目は笑っていたが明らかに怒っていた。


そんな談笑をしながらの食事はおいしく、楽しかった。

久しぶりの外での食事は身も心も癒された感じだった。


日もすっかり落ちて、汗を流し、就寝する時間になる。


部屋は多くあり、一人ひとり個室で寝ることになった。


しかし、俺の部屋には来訪者が一人いた。



「ルフェちゃん?」


そこにはベッドにくるまってふて寝するルシフルエントがいた。


「……」

反応がない。

ワザと無視しているようだ。


俺は遠慮なく入る。


そしたら、いきなり布団を絡め取られた。


俺はルシフルエントの顔を覗き込む。


頬を膨らまし、おもいっきり膨れてる顔があった。


『か……可愛い』

俺は思わず笑いそうになる。


「妾をいじめるおまえ様なぞ知らん!凍えて風邪でもひくがよい」

そう言ってそっぽを向く。


「じゃあ、ココの所にでも行こうかな?」

俺はベッドから離れようとした。


しかし、服の袖を掴まれて引っ張られ立ち上がることはできなかった。


振り向くとルシフルエントは布団からでていた。

俺は笑いながら聞く。


「なに?」


「……いじわる」

そう言ってルシフルエントは袖を掴んだままそっぽを向いた。



『……やっぱり俺の奥さんは可愛いなぁ』


俺はルシフルエントに抱きついてやった。


ベットに飛びついた瞬間、妙な視線を感じたが、気にせず続けて寝た。

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