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黒龍について

大陸地図の部屋でアルシュタインはしばらく泣いていたが、何とかなだめすかして話を元に戻す。


「と言うわけで……明日は王都に行く。一応、王様からの召喚状だから服装には気を付けてね」


「おまえ様よ。そういうおまえ様は服をもっとるのかえ?」


「一応、一通りは持ってるけど?」


「そうじゃない。領主的な服は持ってるの?ってことよ……ちなみに、私は今までカールのそんな服は見た事無いわよ?見間違いかしら?」

ココは腕を組みながら呆れたように言う。


「そう言われてみれば、領主的な華美なやつは無いかも……兵士用の正装セットしかない気がする……今まで王宮には鎧でしか入った事しかなかったからなぁ」


「それでしたら一度、私の実家に寄って行かれませんか?騎士用でよろしければお父様のがまだ残っていたと思います。身長も同じぐらいなので何とか大丈夫かも……」


「アルシュタイン……急に伺っても大丈夫?」


「大丈夫です!それより……カール様ぁ、ちょっといいですか?」


「なに?」


「その……お母様にご挨拶をしたいんですが……」

アルシュタインがモジモジしながら言う。


俺は少し血の気が引いた。


「そうだった……正式な挨拶してないよね。どうしよう?」


正式な挨拶……これから結婚しますよという公式な承諾の事だ。

この際なので、行為の方が先だったという順序は置いておくとして、こういう事は意外としきたりがうるさくて、魔族のように宣言すれば完了というモノではない。

それなりの両家が納得する作法とモノが必要なのだ。


ココや俺は両親が元々いないし、ルシフルエントはまがりなりにも済ませたけど、貴族の末席であるアルシュタインはそうもいかない。


支度金なり、それなりの物を用意して出向かないと失礼にあたる。


俺が個人で持っているお金では到底足りるモノではないのは明らかだ。


「まあ、急ですし……また今度って言いますよ!」

アルシュタインは心配させないように無理して笑う。


「そうだ!アルだけ先に帰って、服を持ってきて、王宮で用事を済ませる。そして、サンプルをとりあえず売って、それを支度金に充てるってのはどう?」

ココが人差し指を立てて言った。


「う~む……あまりコソコソ動きたくは無いし、捕らぬ狸の皮算用のような気もするが……この城には一銭の金も無いし、しょうがないのう。……せいぜい人間どもに高く売りつけてやるか」

ルシフルエントも渋々納得する。


「アル……迷惑かけるね」


「お気になさらないでください。第3夫人ですから……一蓮托生ですぅ!」

アルシュタインは笑みを浮かべて言った。




話は変わって、黒龍こくりゅうの話になる。


「ルフェちゃん。黒龍こくりゅうの事を聞いていいかな?」


「そうじゃのう……まあ、やつを一言で表すなら頑固爺じゃ」


「……頑固爺って」


「本当に頑固でのう。魔族のくせに、妾達とは契約で同盟を結んどるって言い張るのじゃ。ホホロンが取り持っておるときは関係良好じゃったんだがのう……今は最悪じゃ」


「どれくらい最悪なの?」


「このままだと、どこかに行くと言っておった。……奴らは他の元帥達のようにきゅうを持たぬ。だから、すぐにでもガルガン山脈なぞ捨て置いてどっかにいける。生物的絶対強者のドラゴンじゃから、魔力の依存度も他の魔族より低いからのう。妾達も強気で話せんのじゃ」


「それって不味くない?」


「なにがじゃ?ココよ」


「例えば、リヒテフント帝国とかと契約して戦争の道具とかに使われたら最悪じゃん。ドラゴン一体でもめっちゃ強かったのに……」


そう言えばその昔、俺たちはドラゴン狩りを一度だけした事がある。

王国に紛れ込んだ、どちらかと言えば成人したてぐらいのはぐれドラゴンだった。


相当強くて、かなり苦戦した。


「やつは意外と律儀じゃ。まあ、律儀すぎて頭が固い。話し合いが終わるまではそんな事は無いと思う」


「ホントに?」


「たぶん……としか、言えんな。それほど、妾達と黒龍こくりゅう一族はドライな関係なのじゃ」


「強いの?」


「ああ……間違いなく最強の部類に入る龍じゃ。まさに生ける伝説と呼ぶにふさわしい黒い龍。ホホロンが戦っても勝てる確率は7:3ぐらいかのう?もちろん3がホホロン。それが黒龍こくりゅうの強さじゃ」


ゴクリ。

俺は思わず生唾を飲んだ。


大元帥ホホロンが、3割の確率でしか勝てないというだけでも俺たちにとっては考えられない強さだ。

その上、ルシフルエントが伝説とまでいう相手……正直、未知の領域だった。




また話は変わる。


「そう言えば、ホウデガーは弟子にしたの?」


「しょうがないじゃない!第1夫人が『責任は取れるのか?』って迫ってくるんだもん」

腕を組み怒ったように言うココ。


「妾は当然の事を言ったまでじゃ。失意のまま帰ったホウデガーが感情から離反する可能性がある。それであれば、師弟関係で縛った方が確実であろう?」


「人のことペロペロ舐めてくる弟子なんてイヤよ!もっとこう……従順なのがいいの!」


「やつは従順じゃぞ?やれと言われれば、お前の靴でも舐めるぞ?」


「そんな変態なスキルはいらない!!」


「……で、おまえ様はどう思うのじゃ?」

ルシフルエントは俺に話を振ってきた。


「どうって……これでホウデガーが強くなるなら良いんじゃない?」


「へ~。そうやって厄介ごとは私に振るんだ~。ふ~ん」


「でも、優秀だよ?」


「性格に問題ありまくりじゃない!あのクップメントが匙を投げたのよ?」


「ココも一緒に修行すればよい。やつはかまってちゃんじゃから、かまってやらんとアノ手コノ手で気を引くんじゃ。普通に修行してたらあんなことはせんはずじゃ」


「うわ!めんどくさ!」


「ココもそう言うなよ……ホウデガーは魔法に対して一途なんだから、その気持ちに失礼だよ……少し行動が常軌を逸してるけどね」


「まあ、カールがそこまで言うのなら我慢する……でも、代わりにいっぱい甘えさせてよ?」

ココは少し頬を染めながらふくれたように言う。


「うっ!……ぜ…善処します」


「第2夫人は策士よのう……ホウデガーをダシに使うとは」

ルシフルエントはジト目でいやらしい笑いをしながら言う。


「別にいいでしょ?ホウデガーはカールの配下なんだから……部下の責任は上司が取るモノよ?」


「……はぁ~」

俺は気が重くなった。



その日の夜。

準備や食事を済ませ、居室に戻ると、ベッドが2倍ぐらい広くなっていて驚く。

そして、俺の夫人達の3人も広いベッドではしゃいでいた。


「おお!広い!注文通りじゃ!!」


「さすがルフェちゃん!」


「ホントに広いですぅ~!」


「これはどういう事?」


「この間は狭かったじゃろう?さすがにあのベッドで4人は厳しいと思ってなぁ……ホウデガーの所に行く前にキルに頼んでおいた。これで思う存分、頑張れるぞ?」

ルシフルエントはニヤニヤしながら言う。


「なるほど……そういう事か」

俺は冷静に受け止める。


そして、欲望を開放することに決めた。


考えてみれば、領主生活になってから1日中ストレスフルな毎日を送っている。

夜は夜で多勢に無勢で防戦一方だ。


プライベートぐらい主導権を握っても良いだろう?


幸い、俺の体力その他諸々はこの角のおかげか非常に強くなっている。

いつまでも受けだと思ったら大間違いだ。

今日は徹底的に攻めてやる。


自然と顔がにやけてくる……俺ってこんなに変態だったとは思わなかった。


「おまえ様どうした?何やら少し変な顔じゃぞ?」

状況を察したのかルシフルエントは少し動揺して聞いてくる。


「ん?いやなに……角が生えてきたおかげか、男として自信が持てるようになったんだ。だから、今日は本気を出そうと思って」

ニヤニヤが止まらない。


俺の体の奥から黒い感情が沸き立ってくる。


女性陣が引く。


「え……前回って、かなり激しかったじゃない?」


「そうじゃぞ?妾も少し意識が飛びかけたのに……」


「ふぇ~……そうなんですかぁ?」


「そのためにベッドが広くなったんでしょ?じゃあ、遠慮は無用ってことだよね?」

俺は黒い感情に流される。


無言でうなずく夫人達。



そして、俺は獣になった。



その日は荒れに荒れて、ついに俺は夜の主導権を奪い取った。


3人の安らかな寝顔を見て俺は思う。


「……何やってんだろう?」


俺は少しだけ感情に流されたのを後悔した。

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