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王都3

宿屋に一度戻る。


宿屋に戻ると、開口一番ココがルシフルエントに噛みついた。


「ちょっと!どういう事よ!!全然意味がわからないんですけど!!」


「うん?どういう事とは、どういう事じゃ?ロリ魔導師の頭では理解できんかったかえ?やっぱり子供じゃのう」


「ムキーーー!!」

ココが憤慨して地団駄を踏む。


「おい!下に響くだろ、ココ!……ルフェちゃん。実は俺もよく状況が理解できないんだけど」


「妾の勇者は可愛いのう。あの王が言った通りじゃ。妾とおぬしは結婚し、かの地の新たな領主として統治をおこなう」


「なんで!!なんでそんなことが決定しちゃうのよ!!王様も王様だわ!!人間と魔族……しかも、よりにもよって魔王と勇者をひっつけるなんて!!」


「話しは最後まで聞け!アホ魔導師。これは国家の大計だ」


「ギニニュ~~!!悔しい~~!!」

「おい!ココも落ちつけって。話しが進まない」


ココは盛大に歯ぎしりしているが、静かにはなった。


ルシフルエントは「全ては妾の推測で話しておるがな」と前置きして語り始めた。


「まあ、あの王の利点を考えれば単純明快じゃ。グレートアルメラント王国は大穀倉地帯を有し、人間世界の国々においては有力な国。しかも、かの地と国境を挟んでの隣同士じゃ。それ故に、地域の平和のため、かの地の魔族をどうしても無力化せねばならんジレンマがある。それはわかるか?」


「ああ、俺たちが討伐を命じられたのも、その為だった気がする」

「そうそう」


「しかし、魔族は強い。大規模で攻めれば勝てるやもしれんが、それでは犠牲が大きくなる。なので、先代の王はおぬしを妾の元に使わした。頭さえ取ってしまえば烏合の衆だと言わんばかりの単純さよのう?」


「そりゃ……そうだな」


「まあ、魔族も色々あるが、それは後に語るとして、結果として、このような結果で魔王を連れて帰ってきた。正直、妾も先代王が相手だったらあんな話にもならず、王を殺して勇者を連れて、かの地に帰るところじゃった」


「そんな物騒な作戦だったのか」

俺は苦笑いを浮かべた。


「じゃが、あやつは違う。決して過小評価はしていない。その点においては利口じゃ。そして、どうにかして、犠牲を出さずに無力化したいとも考えておった。じゃから、当初は妾を許し、相互不可侵条約などを結ぶつもりじゃったのじゃろう。あの口ぶりではな」


「へ……へー。そうなんだ」

俺とココは顔を見合わせる。


あの会話の何処にそんな話しがあったのか、まるでわからない。


「それがどうじゃ?魔王は引退して子飼いの勇者と結婚し、その勇者が、かの地の新領主となり努めて税も納めてくれる。しかも、魔王は魔族を抑えると言ったのじゃ。魅力的じゃろう?」


「確かに……犠牲もなく、支配したようなものだな」


「じゃろう?こう言えば文句は有るまいと思っておったが……しかし、妾も奴を見くびっておったわ、堂々と間者を使わすとは……しかも、勇者をダシに強引に……不覚」


「間者?」


「あの……アホタレンシュじゃったか?間の抜けた天然娘と30人の秘書官じゃ」


「アルシュタインでしょ?」

ココがきっぱりと言う。


「おお、そいつじゃ。とにかく、これでは内部が筒抜けじゃ。注意して行動せねば」

ルシフルエントは目を輝かせながら言った。


「もしかしてさ……」


「なんじゃ?妾の勇者よ」


「ルフェちゃんはこの展開を予想して話してた?」


「当然じゃ。魔族の長として交渉するために妥協点を考えるのは当然じゃろう?さすがにあのような奴が相手で焦ったが、うまくいった様じゃ」


俺は改めてルシフルエントの知略の深さに驚く。


「でもなんだか、魔族にとって不利なことばかり何だけど、魔王がそれで良いの?」

ココが冷静につっこむ。


「妾にとってもっとも喜ぶべきは、これで当分の間は人間どもの進行を防げるという事じゃ。グレートアルメラント王国の領地に攻撃をしかけてくるバカは、リヒテフント帝国ぐらいのモノじゃろう。……それに妾は引退せねばならんしな」


「それよそれ!なんで引退しないといけないの?やっぱりあんたが統治すればいいじゃない?」


「いやじゃ!さっきも言ったとおり、妾は可愛い奥さんになりたいのじゃ!!」

ルシフルエントは一生懸命、叫んだ。



結局それが理由かい!!

俺とココは唖然として言葉を失う。



「まあ……それにな……」

ルシフルエントはさっきとはうって変わって憂いの表情で言葉を濁す。


「それに?」


「……人間と魔族が争うのはもう沢山じゃ。母君が人間だったせいか、人間に恨みもない。そして……魔族がこれ以上、傷つくのも魔族の長たる妾は看過できん。それでは動機が不純かえ?妾の勇者よ」


ルシフルエントの真っ赤な瞳は、真っ直ぐ俺を見つめていた。


「……ルフェちゃん」



「……まあ、一番大量に殺したのはおぬしと、そこのアホ魔導師じゃがな。魔族が減りすぎたというのも理由の一つにはある」


俺とココはその言葉を聞いて固まった。


「それに……統治を始めると色々と問題が出てくるじゃろう。色々とな。のう?妾の勇者よ」


「例えば?」


「魔族の離反が最大の問題じゃな。まあ、最終的には話せばわかると思うが……数が多くなれば平定の長期化も覚悟せんとな」


「えーーー!それって、どうするの!?」


「まあ、人間とはいえ大元帥ホホロンを倒したそなた達じゃ。どの魔族もその実力は認めておる。話し合って、怪我をしない程度に実力を見せれば納得するじゃろう」


あの魔族おっさん……そんなに強かったんだ。

まあ、俺は光の剣を王様から借りてたから何とか勝てたんだけど。


「ねえ……その戦力の中にもしかして私も入ってる?」

ココがジト目でルシフルエントを睨みながら言う。


やばい。なにか嫌な予感がする。


「もちろんじゃ。そなたは妾の勇者に惚れておろう?玉座の間でも、そう言っておったではないか?妾はおぬしも娶ることには賛成なのじゃぞ?何が不満なのじゃ?」


「ちょっと!ちょっと!勝手に決めつけないでくれる!!……あの時は、みんな…話しを…聞かないから…好きって…事に…しただけで……本心では……」

だんだんと声が小さくなり、顔を真っ赤にして呟くココ


「どうにもよく分からん小娘じゃ。勇者は嫌いで、力は貸せぬと言うのじゃな?」


「いや……そういう訳じゃ……」


「いったいどういう訳じゃ?ほれ……言うてみろ?」


詰め寄るルシフルエント。

後ずさりするココ。


ドン!

ルシフルエントは、とうとうココを壁際に追いやって壁ドンをかます。


やばいやばい!


俺は慌てて間に入る。


「ルフェちゃん!これ以上、追い込むのは……」


「妾の勇者は優しいのう。しかし、こういう事はきっちり聞かんと妾の気が済まん」


「……!」

うつむくココ。


「ほれ。なんとか言ってみい?」


「…うっさい」

小さくココが呟く。


「はあ?聞こえんのう?」


「ヤバ!」

これは不味い。噴火した。


「うっさい!!うっさーーーーーい!バカカール!!バカ魔王!!もう知らない!!」


耳鳴りがするほど大声で叫んだココはルシフルエントを押しのけ、宿屋を飛び出した。


「ちょっ!ココ!!」

俺は引き留めようとしたが、ルシフルエントに止められた。


「やめとけ。あんな分からず屋のヒステリック・ロリ魔導師。追っかけるだけ無駄じゃ。まったく」


「でも、何かあったら……」


「やつの魔力は膨大じゃ。妾に匹敵するものがある。そんな魔導師になにかできる存在など万の軍勢か、妾の勇者のみじゃ。ほっとけ」


「でも……やっぱり探してくるよ。仲間だし」


少しだけ何かを考えてたルシフルエントだったが、いきなり、俺に抱き付いてきた。


「……そうか。やっぱり、妾の勇者は優しいのぉ。でも……妾の元に必ず帰って来るのじゃぞ。じゃないと……妾は……悲しい」

そういってポロポロと涙を流すルシフルエント。


俺は、そんなルシフルエントをぎゅっと抱きしめる。


ルシフルエントの体は、以外と細く。暖かかった。


「……あったかい。まさに妾が思った通りの勇者じゃ」

胸に顔を埋めながらルシフルエントは呟く。


「なんか……全部背負わせちゃってごめんな。俺……勇者なのに、剣を振るう以外できなくてさ」


「大丈夫。魔族の長たる妾の定めじゃ。そこら辺の事は補助する。だから、妾の勇者は妾から離れないで欲しい」


「努力はする。だから……」


「わかった。名残惜しいがここまでじゃ」

そういうとルシフルエントは離れた。


「さあ、妾の勇者よ。あの小娘と話してこい!」


「ああ。行ってきます」


そう言うと、俺は夜の街にでた。

9月5日タイトル変更

10月15日一部改稿

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