魔法勝負1
魔法勝負は青の宮の傍にあるコロシアムで行われる。
かなり広い場所で、部族全員は入れそうなほど広大な敷地と観客席を有していた。
開場前になぜ勝負をするのか、ホウデガーから説明してあるのでボルテージも上がっている。
ホウデガー配下の部族で超満員になったコロシアムは異様な熱狂に包まれていた。
「久しいのう……観客席に魔法が飛んでいかんか?」
「防御専門の魔導師を配置しております。今回は更に増員し万全を期しています」
ホウデガーは敬礼した。
「よろしい……妾と旦那様は近くで見るぞ?良いか?」
「はい!ルシフルエント様の防御魔法であれば心配ないかと。両陣営にはいざというときの救護が居りますので万全です」
「ふむ……よろしい。始めよ」
ホウデガーは右手を挙げる。
大音量で音楽が鳴る。
すると、さっきまで騒がしかった魔族達は一斉に静かになり、敬礼をして、小高い場所に建ててあるポールを見る。
音楽に合わせて先ほどの部族旗がゆっくりと上がる。
『人間くさいなぁ……軍隊みたい』
俺は、王国の騎士達の出陣式を思い出した。
音楽が鳴り止むと同時に、部族旗も上がりきる。
「皆の者!ルシフルエント様の御前である!中央!注目!」
司会の魔族が凛とした声で叫ぶ。
観客席の全員が一斉にルシフルエントに向いて敬礼をする。
「なおれ!」
司会の号令で全員が直立不動になる。
「苦しゅうない。座らせよ」
ルシフルエントが司会に言う。
「座れ!」
司会の号令で一斉に座った。
『スゲ~。一糸乱れぬ動きって言うのはこういう事だなぁ~』
魔族の忠誠心に感動する。
「此度はルシフルエント様の取り計らいで、このような勝負を行う事となった。正々堂々と行い、結果についても厳粛に受け止めよ!」
ホウデガーは叫ぶ。
「おぉーーー!」
会場から地響きが起きたんじゃないかと思うぐらいの声がする。
一斉に叫ぶ魔族の声はかなりの迫力で、久しく感じていなかった恐怖心を俺は感じた。
ホウデガーはココの手を取りみんなに言う。
「この者は、ルシフルエント様の旦那様の第2夫人にして、あの大元帥ホホロン様を打ち破った正真正銘、勇者の一人だ!」
「おぉーーー!!」
先ほどよりも力強く、殺気が入り交じった返答がある。
「では、正々堂々行うために誓いの握手を!」
司会が叫ぶ。
ホウデガーとココはしっかりと長い時間をかけて握手をした。
「おまえ様……すまぬな」
ルシフルエントが突然、俺に話しかける。
「なにが?」
「先ほどの殺気混じりの声……ホホロンの事は皆、納得はしておるが……感情までは抑えきれんのじゃ。許せ」
「しょうがないよ。事実だし。しかし、倒すには惜しい人を倒しちゃって後悔ばっかりだよ……まったく」
俺は正直な感想を口にする。
これまでの大部分の事にホホロンの名前は出てきた。
全ての魔族はホホロンを頼りにして付き従い、その恩義に報いろうと絶大な忠誠心を寄せていた。
今、そのホホロンが俺の仕事を手伝ってくれれば、こんな事にもなってはいないだろう。
大元帥の名前は伊達ではないのだ。
そんな魔族を俺は倒した。
「そうじゃな……あいつはマメじゃったからなぁ。口うるさくもあったが……それも、懐かしい」
ルシフルエントは懐かしそうな瞳で空を見つめていた。
ココは一応準備体操をする。
あまり魔法とは関係ないが、緊張をほぐすためにやってみたのだ。
「ココ……大丈夫か?」
俺は声をかける。
「あったりまえじゃない!この数ヶ月間、お師匠様の地獄の修行をしたんだから見てなさい!」
胸をはり、自信満々に答えるココ。
俺は肩を掴む。
少し、震えていた。
「うん!大丈夫だ!信じてるぞ!ココ!!」
肩をポンと叩く。
俺は笑って言った。
「任せなさい!!圧勝してやるんだから!!」
ココも笑顔で答える。
そして、ホウデガーと相まみえる。
ホウデガーは仁王立ちで待っていた。
「準備は良いか?ココ・ラクエンド・フォン・フリュー!」
「いつでも良いわよ!ホウデガー将軍!」
ホウデガーとココは鋭い目つきで睨み合い、魔法の構えをした。
「ルールはお互いの得意な魔法をぶつけ合い、打ち勝った者が勝者とする!私の始め!の合図で打ち始めます。いいですか?」
司会は叫ぶ。
「了解した!」
「いいわよ!」
二人の声が重なった。
ホウデガーからかなりの魔力放出が出てくる。
ルシフルエントは防御魔法を唱える。
「おまえ様よ。近うよれ。かなりの魔力同士のぶつかり合いじゃ。流れ弾でも相当なダメージじゃ」
「そうだな……ホントにすげー。魔力の流れが目に見える」
「流石はホウデガーじゃ。アレは……水系の魔法かのう?しかし……ココも負けてはおらんぞ?」
ルシフルエントは腕を組み傍観する。
俺はココを見る。
「!!」
今まで見た事がない魔力放出だった。
まるで炎の渦がココを包むように回り、ココを通して魔樹で作られた杖に流れ込む。
しかし、回りに流れている炎は魔力そのものだ。
まさに『煉獄の大魔導師』という言葉の通りの姿だった。
「ほう……ホルスの指導もなかなかじゃなぁ。あれほど潜在能力を引き上げるとは、まるで集まる魔力まで燃やす勢いの力を感じる。妾と対峙した頃より数倍強いぞ」
ルシフルエントは少しだけ汗をかいていた。
熱くはない。
ココの魔力の渦に緊張しているのだ。
「……」
凄すぎる。俺は言葉がでなかった。
お互いの魔力がどんどん高まり、コロシアムが悲鳴を上げる。
観客席からも響めきしか起こっていない
「なんだ……こんな魔力放出…初めてだ」
「魔力の渦まで炎に見える……恐ろしい」
近くの観客席からもそう言う感想が聞こえてくる。
よく見れば、始まりを告げる司会者も震えている。
後ろにはすでに防御専門の魔導師も防御魔法を唱えて待機しているが、かなり緊張している。
「これは……妾も本気を出さねばな」
ルシフルエントは両手を開き、集中する。
目が赤く光り、魔力が虹のようにきらめきながら防御魔法の壁に流れた。
「頑張れ……ココ」
俺は両手を組んで祈る。
「それでは……………始め!!!」
司会者の絶叫が会場にこだました。




