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既視感

3日後、完全回復した俺は、クップメントに頼んで魔剣を取り込む練習をしていた。


心配そうに見るルシフルエントやココ。


最初はうまくいかなかったが、無口だが教え上手のクップメントのおかげでだいぶ上達してきた。


さらに3日かけて練習する。


やっと、自我を保ちつつ取り込む事ができるようになった。


「おお!!できた!!」


クップメントは何も言わずパチパチと手を叩く。


「すさまじい魔力反応じゃ……」

「そうね……あんなの、誰もかないっこないよ」

ルシフルエントとココが呟く。


それくらい、すさまじい力が内包している。

取り込まれた魔剣から魔力供給を受けて、俺の身体能力は恐ろしいまでに高まっている。


『この感覚って……どこかで?』

俺は既視感デジャブを感じ思い出す。


「飛べば雲まで届き、その一撃は巨石も砕く。何者にも貫けない鋼の体を持ち、その力を悪しき心で使うと世界を滅ぼす。神の与えし全能なる聖なる剣、それがこの光の剣じゃ」


光の剣を貸してもらったとき王国の長老から聞いた言葉だ。


初めて聞いたときはそんな馬鹿な事あるか?と思っていたが、今はまさにそれが可能のような全能感がある。


『あれ?なんで光の剣に同じような伝承があるんだろう?』

俺は少し考えたが、今は他にやる事があるため後で考える事にした。


俺は魔剣を取り出して、ルシフルエントとココを呼んだ。


ルシフルエントとココは俺の所に来るなり抱きついた。


「やったのう!!おまえ様!これでおまえ様はこの世界で唯一無二の最強の魔族じゃ!!」

キラキラした目で語りかけるルシフルエント。


「何言ってるの!!カールは人間!唯一無二の最強の人間よ!!」

ココが突っかかる。


二人はジト目になり、目線で火花を散らしている。


「まあまあ……」

俺は苦笑いしか浮かべ濁した。



「まあ、それは置いといてじゃ。クップメントよ……これで、そのマナ・エッセンスが使えるのかえ?」

ルシフルエントは緊張した面持ちで聞いた。


「……理論上は可能です。ただ……莫大な魔力を必要とします。失敗は許されませんし、準備も必要です。……少しお日にちを頂いてよろしいですか?」


「膨大って……どれくらい?」

ココが小首を傾げて聞く。


「現状ではこの付近を守護するマナの挿し木が枯れる可能性もあります」


「なんと!!」

ルシフルエントは驚く。


「そんなに凄い事なの?」


「凄いどころではない!!なんと言えばいいか……ココの最大級の魔法を100発撃ってもそんな事はありえんぐらいの魔力消費じゃ。それぐらい、マナの挿し木が枯れるなぞ考えられん事態なのじゃ」


ココの最大級の魔法……エクストリーム・バーストと言うが、野外に大量の魔物が出たとき使う超一級広範囲爆裂魔法である。

一説によれば一撃で千体の魔物を屠ることができる。


その魔力消費量も膨大で、王国の一級魔導師である宮廷直属の魔導師が命からがら一発撃てるか撃てないかの魔法だ。


ココは大魔導師ホルス様に炎系魔法の才能を見いだされ、修行した結果、エクストリーム・バーストを数発撃てるほどの魔力回路を獲得した。

こんな事ができるのは世界でも、ホルス様とココだけなのだ。


「……対策はあります」


「どうするんじゃ?」


「黒の宮をキャパシタとして使い、魔力を供給する事で影響を最小限に止めます」


「そのような使い方が……流石はクップメント。用意周到じゃの」


「いえ……全て、初代ルシフルエント様のご配慮です」


「先見の明が凄いね。流石は魔族を統一しただけの事はある」


「えっへん!妾のご先祖様をもっと褒め称えるのじゃ!!」

ルシフルエントは胸をはり、鼻高々に言う。


俺は苦笑いで答え、ココはジト目で抗議し、クップメントは無表情のままパチパチと拍手を送る。


「それで、どれくらいかかりそう?」


「最低で、8日ほど頂ければと思います。しかし、情勢によってはもっとかかるかもしれません。先にホウデガーや黒龍こくりゅうに話をしに行かれてはいかがですか?」


「そうじゃのう……では、準備ができ次第、ギルムアハラントに連絡してくれるか?」


「……はい。おまかせ下さい」


「そうじゃ。クップメント……おぬしホウデガーと縁があるじゃろう?協力するよう手紙の一つでも書いてはくれぬか?」


「……はい。では、すぐに用意します」

クップメントは深々と礼をして、黒の宮に戻った。


俺たちも休憩を兼ねて黒の宮に戻る。


「ホウデガーってクップメントの知り合いなの?」


「やつは元々クップメントを師事し、メキメキと魔法の腕を上げた凄腕のロードウィザードじゃ。やつの部族……それは、多種多様な魔族から広く魔導師を集め、切磋琢磨して魔導師を養成する魔導部族……まあ、魔導師軍団といった方が正しい表現かのう?」


「へ~。王国の魔導学校のようなモノかな?」


「近いな……ただ、奴らは本当に排他的でのう、しかも独立心が強く、ホウデガーも自ら魔導将軍などと名乗っておった変わり者での」


「なんだか、人間くさいね」


「本当に面倒くさい奴じゃった。戦闘などでは、他の魔族とは一切協力せず、もっぱら魔法で遊撃をしとってなあ。その事で、よくメラダーと喧嘩しとったぞ。支配地域も隣なのにようやるのう、と当時は思っとった」


「面倒そうなやつね。話とかきいてくれるの?」


「まあ、クップメントの言葉は信じるじゃろう。なにせ元師匠じゃ。ココも師匠の言葉は信じるじゃろう?」


「まあね……でも、あの性格だけは度し難いわ」

ココはうぇー!と何かうんざりしたような顔で言った。


「はは……たしかに」

俺は少し思う。


確かに大魔導師ホルス様の性格は捻くれている。

俺みたいな付き合いの浅い人間にはそこまででないが、ココやナナちゃんを見ているとその言動には疑問符が付く事ばかりだ。


基本的にはいい人だがあまり深くは付き合いたくない人ではある。


「ふむ……そうかのう?妾はそうは感じは無かったがのう。非常に協力的で話のわかる良い奴じゃったではないか?」


「あんたとお師匠様は性格が似てるんですよーだ!二人ともサディスト!根っからのS」


「ふむ……そうかの?じゃあ、おぬしはマゾヒストじゃの?そんな師匠に師事するぐらいじゃから」

ニヤニヤとルシフルエントは言い返す。


「違いますーー!私はノーマル!!どノーマルです!!」


「まあまあ……」

また始まった……俺は苦笑いで濁した。


そうこうしていると、クップメントが封書を持って部屋に入ってくる。


「……どうぞ」


「手間をかけてすまぬな……クップメントよ。長い間、世話になった。では、後を頼む」


「……はい」

深々と礼をするクップメント。


「本当にありがとうございます」

「また、お手玉教えてねーー!」

礼をする俺に対して、かなり軽い調子で言うココ。


「おい……年長者に対して失礼だろ?」

俺は思わず苦言を呈した。


「構いません……私はカール様の配下。いかようにも接して下さい」

深々と礼をするクップメント。


外見は子供だが、その態度は本当に大人だ。


「気を遣わせてすいません。では、後をよろしく」


「……はい」



クップメントはわざわざ転移魔方陣の手前まで見送りをする。


無表情のまま、軽く手を振るクップメント。


その一方、俺たちは、やれ、態度が悪いだの、性格が悪いだの騒がしくしながらギルムアハラントに戻る。


まあ、騒がしかったのはルシフルエントとココの二人だけだが……とにかく俺たちは一旦戻った。


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