無双
魔剣は感情をくみ取り、静かに形態を変えていく。
俺たちは目の前のことで精一杯だったので気付いていなかった。
目の前の暴行が止んだ。
そして、取り囲んでいた男達が元の場所に戻る。
アッカイマンは虫の息だった。
顔中青くなり、口や鼻から血がドクドクと出ている。
ゆっくりと、こちらを向くアッカイマン。
「がは!」
盛大に血を吐いたが、その直後笑ったように見えた。
そして、俺と目があった。
口元はわずかに動き、「やってくれ」と声にならない動きをした。
俺は堪えきれなかった。
「おまえ様!!」
俺はルシフルエントの制止を振り切り、走る。
「来たか……やれ!!」
男達は吹き矢を放ってくる。
俺は避けたり払ったりしたが、何本か喰らった。
手や足が痺れてくる。
しかし、そんなことよりアッカイマンを優先して走る。
「ほう……やはり勇者、仲間思いだな……しかし、残念だ」
男はロングソードを構える。
「やめろーーー!!!」
心の底から叫ぶ。
しかし、間に合わなかった。
無情にもアッカイマンの胸に剣が刺さる。
剣は深くまで突き刺さり、アッカイマンが目を見開き、何かを叫ぶように口を開いて動かなくなった。
胸から血が溢れ出す。
「おおおおお!!!」
俺は男達の集団に飛び込んだ。
そして、剣を振り回す。
男達は下がり、距離を置く。
俺はアッカイマンを抱き上げた。
「アッカイマン!!しっかりしろ!!!死ぬなーー!!」
俺は涙を流しながら叫んだ。
しかし、アッカイマンのうつろな目は焦点が合わず。
顔も徐々に青白くなる。
胸に突き刺さってる剣から、流れ出る血の勢いも弱くなっていった。
「俺が…頼み事なんて……しなければ!…護衛をつけてれば………そもそも、俺たちの仲間なんかに……ならなければ…!!!」
俺は錯乱していた。
「おまえ様!!危ない!!」
ルシフルエントは走って俺に近づいてくる。
ココも走る。
そして、男達も俺を殺しに近づいてきた。
「死ね!!」
男達は手にアサシンナイフを持ち、振りかぶってくる。
その瞬間。
俺の黒い感情が溢れた。
魔剣が形を変えて、俺の中に入ってくる。
そんな感じがした。
カールを中心に膨大な魔力放出が起こり、爆発のような閃光が起こる。
男達は吹き飛んだ。
「おまえ様!?」
「カール!」
「ルシフルエント様、ココさん……危ないです」
クップメントはいつの間にかルシフルエントとココの側まで来ていた。
そして、魔法の壁を作り、二人をガードしていた。
「これは……一体」
思わずルシフルエントの口から言葉が漏れる。
「魔剣第2形態……彼は、運命の人だったか」
クップメントが呟く。
「第2形態じゃと!?妾はそんなモノ知らぬ!!どういう事じゃ!!」
ルシフルエントは思わずクップメントの襟首を掴んでいた。
「初代ルシフルエントが言っていました。魔剣はマナの分身。取り込むことによって、マナの力を得ると……」
ルシフルエントを真っ直ぐ見つめながら言う。
「初代……ご先祖様じゃと…!?」
驚きのあまり、思わずクップメントを離す。
カールはアッカイマンを地面に優しく降ろし、立ち上がる。
その全身から禍々しい黒い炎のような魔力放出をしながら。
その目は赤く、頭の頂点からはこぶし大の角が生えていた。
真っ直ぐに、アッカイマンを殺した男達を見ている。
「やれ!!奴は毒で死に体の筈だ!!殺せ!!」
男が指示する。
3人の男が、音もなく、風のような早さでカールに飛びかかった。
ガキッ!!
おもいっきり突き立てたアサシンナイフだったが、カールには刺さらなかった。
まるで、堅いモノに当たったかのように跳ね返されていた。
「なに!!鉄をも切り裂くナイフが!!」
男達は焦る。
カールが男めがけて殴る。
頬に当たった……勢いで男の首が2回転し、首が引きちぎれる。
血が噴水のように噴き出し、絶命した。
「ヒッ!」
驚く2人の男に、カールが容赦なく裏拳と蹴りを食らわす。
裏拳は男の体から首を吹き飛ばし、蹴りは男の腹を突き破った。
流れるような動作で、カールは元の直立不動に戻る。
そして、アッカイマンを殺した集団に向かって歩き出した。
「やれ!!殺すんだ!!」
男が叫ぶ。
しかし、集団は錯乱し怯えて動けない。
カールは、飛ぶ。
その跳躍力はすさまじく、空を飛んでいるかのような錯覚に陥るほど高く飛んだ。
そして、一気に集団の真ん中に降りた。
2人ほど踏みつぶされ絶命する。
そして、カールは無双する。
拳が振るわれる度に2~3人の腕や首が吹っ飛び、蹴りを振るわれる度に腹や胸に穴が空いた。
血しぶきがカールにかかる。
しかし、カールの無双は止まらない。
「お……おまえ…様!?」
「……カール?」
遠目で見ていたルシフルエントや、ココが呆然と立ち尽くす。
集団は瞬く間に骸になり、血が噴水のように宙を舞った。
カールの回りにはおびただしい血だまりと、体から離れた腕や首が散乱していた。
一人を残して、カールは立ち止まる。
そして、その男の向かって骸を踏みつけ、血だまりをパシャパシャ言わせながら歩き出す。
他ならぬ、アッカイマンを殺した男だ。
男は恐怖で腰を抜かし、体中からあらゆる体液をまき散らして、血だまりの骸の中で震えていた。
カールは男の前に立つ。
「た……たしゅ……!」
男の命乞いを最後まで聞かず、顔を踏みつぶした。
地面に叩き付けられた男の顔はつぶれ、顔を構成する全ての中身が飛び出した。
カールはそんなことお構いなしに、何度も何度も踏みつける。
そんな姿に耐えきれなくなり、ココはカールの元へ走り出した。
「ココ!!」
ルシフルエントは思わず叫ぶ。
ココはカールに抱きついた。
「カーール!!!もう!!もう終わったんだよ!!!目を覚まして!!」
大粒の涙を流しながら、すがりつくココ。
カールは、一瞬だけ止まり、倒れた。
魔力放出が終わる。
そして、魔剣がカールの体からいつの間にか出ていて、傍らに落ちていた。
「おまえ様!!」
ルシフルエントが駆けつける。
カールは気絶していた。
頭に小さな角を生やして。




