第2夫人
夜。
食事を終えて、部屋に戻ると、なぜかココがいた。
「なんで、俺の部屋に居るんだ?」
ジト目で抗議する。
「いいでしょ。別に」
ココは頬を膨らまし、ベッドに居座る。
『ははぁ……何か話したいことがあるんだな』
俺は思い出した。
二人っきりでじっくり話したいとき、ココはこんな行動をする。
基本的に寂しがり屋なのにツンデレなのだ。
俺は、魔法の道具袋から果実酒を取り出した。
そして、ココの隣に座る。
「飲むか?」
「うん」
唇を尖らせそっけない様に返事をする。
『久しぶりに見ると可愛いやつだな……』
俺はそんなことを思いながら果実酒を注ぐ。
「ベッドにこぼすと厄介だからこっちで飲むぞ」
俺は応接セットに座り、ココの分のコップをテーブルに置いた。
ココはコップを取り、俺の隣に隙間なく遠慮なしに座った。
「おい!飲みにくいだろ?」
「いーでしょ!まったく」
ココの匂いがする。
久しぶりの感じに冒険者時代の時を思い出した。
「そういえばこの果実酒、旨くなってると思わないか?ほら、王都を出た後の、田舎の爺さんに貰ったやつだよ」
「ああ。そういえば見たことあると思った……なんだか、味がまろやかになった感じでおいしー!」
ココはいつも通りチビチビ飲む。
そう。ココはあまり酒に強くない。
そうこう言ってるうちに、顔が赤くなってきた。
「ふふん!ふふふ!うふふふふ!」
ココが不思議な笑いをしながら頭を俺に擦り付けてくる。
「おい!変なマーキング止めろよ?この絡み酒め」
「いーのいーの。やっぱりカールは、カールだわ」
「はぁ?」
「気にしないで、独り言よ。ひ・と・り・ご・と」
果実酒を一気に飲み干し、グラスを開けた。
「飲むか?」
俺は果実酒の瓶を持つ。
しかし、ココはコップを置いて、俺に抱き付いてきた。
「……」
俺は瓶とコップを静かにテーブルに置き、ココの頭を撫でる。
「……みんな酷いよ。まったくぅ!乙女の純情を何だと思ってるんだ!」
「そんなに怒るなって」
「怒りますー!だって、好きになったのは私が一番早いのに奴隷扱いよ!奴隷!まったく!」
頬を膨らますココ。
「ははは!そんな事で怒ってたのか?お前?」
「そんな事って何よ!そんな事って!!ただでさえ、のじゃ姫魔王に先越されたのに奴隷扱いよ!殺そうかと思ったわ!!」
ココは俺の腹にボディーブローをかます。
地味に痛い。
「別にいいだろ?気にしなければ」
「気になるわよ!」
「なんで?」
「だって……これ以上…誰かの先を……越されるの………いやだから~」
ポロポロと涙をこぼし、小さく嗚咽を交えながら絞り出すように言うココ。
俺は頭を撫でるのを止めて、ココの顎を軽く上向きにするように持った。
ココは目を閉じる。
俺はココにキスをした。
そして、唇が名残惜しそうに離れる。
「これでもまだ気になるか?」
ココは微笑み首を左右に振った。
「熱いのー。此処だけ砂漠の様に熱いぞ!どうなっとるんじゃ?おまえ様よ」
微笑みをたたえ優雅に果実酒を飲むルシフルエント。
その冷たい視線が俺らを突き刺していた。
俺とココは一瞬で顔色が青ざめる。
「いつから居たの?」
「ロリ魔導士がこの部屋に入って来た時からに決まっとろう?」
「えーーー!」
「妾を出し抜こうなど100年早い。思い知ったか?アッハッハ!」
ルシフルエントは高笑いをした。
「??」
どうも様子がおかしい。
アルシュタインの時のような刺々しさがない。
「さて、ココ・ラクエンド・フォン・フリューよ。これ以上踏み込むという事は……わかっておるよのう?」
「なにがよ!」
「第2夫人として節度ある行動をとってもらうという事じゃ」
「どういう事よ!」
「第1夫人の妾を立て、場合によっては外交交渉などの実務を行うという事じゃ。もちろん第3以降の嫁が来たら常に見本となる立ち居振る舞いをせねばならん……覚悟はあるか?」
「なんだってやってやるわよ!!カールと一緒なら!!」
「なら良し。今宵は十分に楽しめ。明日以降は……どうなるやら、楽しみじゃのう」
そう言うと、ルシフルエントは立ち上がり部屋を出ようとする。
「ルフェちゃん?」
「おまえ様よ……これも、第1夫人としての配慮じゃ……我慢するのじゃぞ?」
「なにを?」
「そこまで、無粋な事は妾の口からは到底言えん。まあ、すぐにわかる」
そういって、ルシフルエントは部屋を出て行った。
「なんだったの?」
「さあ?」
俺と、ココは見つめ合った。
途端に、意識してしまって顔が火照ってくる。
ココもいつの間にか顔が真っ赤になっていた。
そうして、俺達は初めて同じベッドで寝た。
次の日。
すっかり寝坊して起きた俺は、隣のココを起こして、急いで服を着て、朝食を食べに行く。
「おはようございます。マスターと女」
「おはようございます!カールさん!ココ!」
さわやかな二人の人形メイドから挨拶をうける。
「ちょっと!女って何よ!!」
いきなりココは噛みついた。
ゼロは無表情のまま小首を傾げる。
「あなたは女性ではなかったか?」
「お・ん・な・よ!でも、だからって女って呼ぶのはどうなのよ?」
「ゼロさん……ココって呼んであげて」
苦笑いを浮かべる7号。
ナナちゃんナイスフォロー!俺は心の中で褒める。
「ココ?」
「ふん!今日はそれで、許してあげる」
ココは腕組をしながら言った。
「そういうことで頼むね。ゼロちゃん」
「わかりました。マスター」
「では、お食事をお持ちしますね!ちなみに、ルシフルエント様はもう、準備に行かれました。急いでくださいね」
「ありがとう。ナナちゃん。急ぐよ」
ナナちゃんは本当に優秀だ。
まるで、秘書の様に必要な助言をしてくれる。
俺達は急いで、食事を済ませ、準備をして、ルシフルエントが待っている大陸地図の部屋に行った。
「遅い!!遊びすぎじゃ!」
ルシフルエントは地団駄を踏みながら待っていた。
「ごめんごめん。で、今日から行く場所は?」
「西のクップメント元帥の支配地域じゃ。これ以上、帝国からちょっかいを出させないためにもあそこの協力は得たい」
「了解。俺と誰が行く?ゼロちゃん?」
「いや、妾と、ココとおまえ様の3人で行く。あまり多くても怪しまれる。それに、アンデットなので、炎系の魔法を得意とするココが良いじゃろう」
「ゼロちゃんは?」
「あやつは、隠し玉みたいなものじゃ。あまり公になると後々めんどくさい」
「わかった。じゃあ、転移魔方陣で早速行こう!」
「準備は大丈夫かえ?」
「昨日のうちにしといたわ。こういう準備だけは怠らないのよ。私は」
ココが胸を張って言う。
「わかった、わかった……そんなに、無い乳を出すな。悲しくなるぞ?」
ココが顔を真っ赤にして胸を隠す。
「うっさいわね!早くいくわよ!第1夫人!!」
「気合だけは空回りせんで欲しいのう……第2夫人」
二人は悪態をつきながら転移魔方陣の方に歩いて行った。
『……ホント仲がいいなぁ』
俺は、そんな事を思いながら後をついていった。




