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王都1

 俺は、魔王ルシフルエントと、相棒だった魔導師のココ・ラクエンド・フォン・フリューと一緒にこれまでの事情説明と、魔王の嘆願のため、王様に謁見を申し出た。


 そして、謁見許可がでて、王様の居城ツタンに向かう。


 朝。

 泊まっていた王都の宿に王様からの使いの馬車が来て、俺たちは馬車に乗る。


 俺は王様から借りた光の装備一式を着て馬車に乗っている。



「しかし、謁見許可がえらく早く出たな」


 3年前は、魔王討伐で男爵領から無理やり俺を呼び出しといて、謁見許可が出るまで、まる15日かかった記憶がある。


 それが、今回は3日だ。


「この3年間で変わったのよ。あの時は偏屈秘書じじいに服の中まで調べられて、ぶん殴ってやったわ」

 ココは狭い馬車内で杖を振り回しながら意気揚々と語る。


 こいつは、いつもの尖がり帽子に黒いワンピース魔導士の服、そして魔樹から作られた魔導師の杖を持って馬車に乗っている。



「ほう。ロリ魔導師の服の中が気になるとは……変態じじいじゃの」

 ルシフルエントは火に油を注ぐ。


 ルシフルエントは豪華なドレスを着こみ馬車に乗っている。


 しかし、なんで俺の両端に二人は座るんだろうか?

 俺は気配を消して、嵐が過ぎるのを待った。



「だからロリ魔導師じゃなくてココ!それにちゃんと成人してます!カールと同い年なんだから!」


「どうだか疑わしいのう。童顔で、身長もわらわの肩ぐらいしかなく、胸などの膨らみも皆無……しいてあげるなら。その短いワンピースから出てる足ぐらいが女としての魅力かのう?……おや?……もしや、おぬしは男かえ?」


「なんでスカートはいてるのに男になるのよ!」


「最近は女装する男も多いと聞く。おぬしの特徴から男であっても不思議ではない」


「ムキーー!あんただって魔族なんだから両性じゃないの!?」


「妾はれっきとした女性ハーフ魔族じゃ。胸などの部位を見れば一目瞭然じゃろう?しかし……まあ、男のアレは生やせぬ事はない。魔力の固まりじゃがの」


 ……生やせるんだ。

 俺はその点に地味に驚く。


「私だってれっきとした女性です!!ほら!冒険者登録証にも女性って書いてあるでしょ!!」


 ココは必死に冒険者登録証をルシフルエントに見せつける。


「はっ!人間の作った証明証なぞ、信用に足りぬ。妾は信用せん」


「ぐにゅにゅにゅ!ああいえばこういう!!」


 ……ホントにこいつらは仲が良いなぁ。


「ちょっと!カールも黙ってないで何とか言ってよ!!このビッチ魔族に!!」


 おいおい、俺にまで突っかかってくるなよ。

 せっかく、気配まで消してたのに。

 俺は苦笑いで曖昧に濁す。


「卑猥な……あまりの教養の無さに、妾の勇者も呆れておるではないか。あと、妾の純血を侮辱するなど言語道断じゃ」


 ココとルシフルエントの目から火花が出ているような錯覚が見える。


「ほらほら!もうすぐツタン城に着くから、遊びもその辺で終わってくれよ」

 俺は遠くに見えるツタン城を指さした。


「遊びじゃない(のじゃ)!」


 俺はロリ魔導師の杖による一撃と、元魔王のパンチによる一撃を両頬に同時に受けた。


「いてーーーー!」


 痛い。本当に痛い。

 勇者としての経験がなければ死んでいるところだった。



 俺たち3人は衛兵に謁見許可証を見せて、謁見準備の部屋に通される。


 衛兵達は真っ赤に腫れ上がった俺の両頬に唖然としながらも、案内してくれる。


 そして、回復用のポーションを何も言わず置いておいてくれた。

 俺はその心遣いに涙が出そうになった。

 本当に仕事ができる衛兵さんだ。


「今回は変態じじいは来ないのね」


 ココが手持ちぶさたのように謁見準備の間をブラブラしながら呟く。


「そんなじじい……一体、何の役に立つのじゃ?危険物の検査であるならば、妾であれば先ほどの衛兵にその役目を担わせ、役立たずのじじいなんぞ、クビにするぞ」


 ひどく合理的な意見である。


「それもそうね。……そう考えると3年って、あっという間ね。カール」


「そうだな。衛兵も若い人に変わってたし。知ってる顔を探す方が難しいや」


「ほう……そんなに違うのか?衛兵などという末端まで変わっているとなると、相当な政変があったんでないかえ?妾の勇者様」


「そうなのかなぁ?そう言えば、王様も名前が違うような気がする」


「え!!王様変わったの!!」


「うん。ほら、ここが1代増えてるでしょ?それに名前が違うような……」

 俺は、謁見許可証の王の名前欄を見せる。


「ホントだ!グレートアルメラント王国第32代、マウントシュバッテンⅢ世になってる!!」


「ほう……マウントシュバッテンといえば、血筋としては分家筋だったような気がするがのう?」


「そうなの?全然知らない」

 俺は、ルシフルエントの知識に驚く。


「妾の勇者様よ。それぐらい一般教養ではないのか?」

 ルシフルエントは優雅に紅茶を飲みながら、ジト目でこちらを見る。


「一般人にとって御上おかみの家系図なんて関係ないから知らないもんだよ。俺なんかは元男爵の兵士だったから、それなりに知ってるけど、それでも本家の数人を記憶しているぐらいなもんだね」


「私も~。そんなの覚える時間があるなら、魔法の練習をするなぁ」


「ふ~ん。まあ、面白いことになりそうじゃの。ふふ」

 ルシフルエントはなにか含みのある微笑みをたたえ、紅茶を飲む。


「??」

 俺とココはよく分からなかった。



 そうこうしていると、謁見案内役がくる。

 俺たちは最後に身なりを整えて、謁見に向かった。



 謁見の玉座に着いて、俺たちは指定通りかしずく。


 コツコツコツ。

 王様がやってきたようだ。


「やあやあ!勇者カール!そんな堅苦しいカッコしてないでおもてをあげてよ!」


「へ?」

 俺たちはあまりにフランクな挨拶にビックリしながら顔を上げる。


 そこには、王様の身なりをした、非常に若い、金髪の美少年が細い目でニコニコしながら玉座に座っていた。

9月5日タイトル変更

10月15日一部改稿

12月31日誤字変更

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