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メラダー元帥1

俺は、身支度をしている。

ルシフルエントに頼まれた平定の準備を。


「と言っても、すぐに帰れるから、最低限の準備でいいのかな?」


光の装備を王様に返したので、ギルムアハラント内で手に入る装備を探し、部屋に掛けて見定めている。


「う~ん。迷う。こっちは重いし、こっちは防御力に疑問がある。こう考えると、光の装備ってすごいよなぁ。フルプレートに盾付きなのに、この革の鎧より軽いんだから」


革の鎧を手に取りながら考える。


「やっぱり……この胸当てだけ金属の機動性重視の服かなぁ?いや、いっそのこと、普段着で行くというのはどうだ?戦闘になることは極力避けなきゃいけないんだし」


俺は思い出す。

ルシフルエントから、危害を加えてはいけないと言われたことを。


「まあ、いざとなったらルフェちゃんの回復魔法があるから普段着でいいか」



そう言った瞬間、扉が開く。


「おまえ様!!これを着ていくが良い!!」


ルシフルエントが不気味な鎧を魔族の大男に持たせて入ってくる。



しかし、これは無いだろう?



「あのさ……この骸骨の鎧は何?」

苦笑いしか出てこなかった。


「これはすごい品じゃぞ!各パーツ伝説級の魔族の骨を加工し作られたデビルアーマーと呼ぶべき一品じゃ!軽くて、魔力耐性も抜群じゃし、もちろん固い!光の装備には負けるがの」

ルシフルエントは胸を張り、自信を持って語る。


俺は溜息をついた。


『こんなの着てたら本当に魔王じゃん』

元勇者としてコレを着るわけにはいかなかった。


「ルフェちゃん……ありがたいけど、遠慮するよ」


「どうしてじゃ!万一怪我でもしたらどうする!?」

俺の肩をつかみ力いっぱい前後に振るルシフルエント。


「いや……こんなの着たら、戦う気満々だろ?今回は話し合いだよ。話し合い」


「……それもそうじゃの」


「それにさ、今から着なくても、すぐに戻ってこれるんだし大丈夫だよ。だから、普通の恰好でいこう?旅をしやすいようにさ」


「旅?何を言っておる。魔族の各部族には転移魔方陣を張ってあるから移動はすぐじゃぞ?」


「え!そんな便利な物があるの?」


「当たり前じゃぞ。移動に何日もかかっておったら時間の無駄じゃ。転移魔方陣の維持などマナに祝福された魔族においては容易いものじゃ」


「だって……この前、王都に行くときは魔族の背中に乗って行ったじゃん!」


「あれは、人間世界に行くためだからじゃ。人間世界は不便で転移魔方陣のネットワークも貧弱じゃ。いまだに馬車移動が主じゃろう?妾はあんな揺れる乗り物は好かん。飛行魔族に乗せてもらった方が何倍も速い。そうは思わんかえ?」


「……確かに」

苦笑いを浮かべるしかできなかった。


「まあ、話し合いだけなんだから普通の服装で良いだろ?動きやすいし」


「そうか……まあ、そうじゃな。では、妾も準備してくる」


「あまり、荷物は持っていくなよ?鞄一個ぐらいだからな?」

俺はクギを刺しておく。


「わかったぞ!おまえ様」

ルシフルエントは鎧と大男と共に俺の部屋から出た。




各々準備をして朝食をとる。


そして、アルシュタインと打ち合わせをしてギルムアハラントの中にある転移魔方陣の部屋に行く。



「キル。ギルムアハラントに何かれば伝言を飛ばせ。そして妾たちが帰るまで持ちこたえよ」

ルシフルエントがキルの肩を叩く。


「はっ!この名前に誓ってお約束します!!」

キルは直立不動で答える。


キルの隣にはアルシュタインも立っていた。

ルシフルエントはアルシュタインの前に立つ。


「アルよ。お前の政策は正しい。魔族のために頑張ってくれ」

ルシフルエントはアルシュタインの肩を叩く。


「はい!粉骨砕身、努力します!!」

アルシュタインはいつものメイド服で敬礼した。


「さて、おまえ様。行こうかの?」

ルシフルエントは笑いながらこっちを向く。


「ああ。ところで最初はどの部族だ?」

そういえば、聞いていなかったので質問する。


「最初は炎を操るメラダー率いる獣魔族の部族じゃ。ホホロンの下に魔族元帥四天王という組織があって、その一角じゃ。普段はメラダー元帥と呼ばれとる」


「へぇ~、そんなのが居たんだ」


「おまえ様とロリ魔導士はいきなりギルムアハラントに殴り込みに来たから知らんじゃろう?」

ルシフルエントはニヤニヤしている。


「まあ、ギルムアハラントは王都から近いしね」


「そうは言っても、いきなりは無鉄砲すぎやしまいか?あいつらはそう思って、遠くのコッポル平原で待ち伏せしとったのに」


「当時の俺は世間知らずだったからね」


「半年前じゃぞ?」


「この半年は……色々あったから、そう思うよ」


「妾と会って良かったか?成長したか?」

ルシフルエントは目を輝かせて言う。


「ああ!もちろんだ!!」

俺は笑いながらハッキリ言ってやった。


ルシフルエントは抱き付いてきた。


「嬉しいのう!流石はおまえ様じゃ!」


絡みつくルシフルエントの顔が近くにある。

俺は思わずキスしようと思った。


「ゴホン!!」

キルがわざと大きな音で咳払いをする。


俺はビックリして振り向いた。


そこには顔そそむけるキルに、顔を真っ赤にして目を輝かせたアルシュタインがいた。


「良いですぅ~!!羨ましいですぅ~!!」

頬を押さえ、恍惚の表情で妄想するアルシュタイン。


俺は恥ずかしくなって顔が火照ってきた。


『そういえば……まだ、出発してなかった』

ついつい話に夢中になってしまった。


俺はルシフルエントをお姫様抱っこする。

突然の事で驚いていたが、嫌ではなさそうだった。


「行くぞ。大丈夫か?」

優しい口調で言う。


「もちろんじゃ!!おまえ様!!」

ルシフルエントは笑いながら答える。



俺達は転移魔方陣の中に入った。




魔方陣を出ると、獣魔族が列をなして並んでいた。


「魔王様自らお越しいただき恐悦至極でございます」

流暢な言葉づかいで頭を垂れる獣魔族の代表。

白銀の毛並みに、額に大きな刀傷があり、大きさは人間の腹のあたりまである大きさの犬のような魔族だ。

炎を操る部族なので、尻尾からは常に炎が出ていた。


俺は、ルシフルエントを下ろして、会釈をする。


「おお。ミレではないか?」

ルシフルエントが名前を呼び、頭を撫でる。


ミレは「グルル」と喉を鳴らした。


「お久しぶりでございます、魔王様。メラダー元帥様はあちらに居ます。どうぞ付いて来てください」


そういうと、クルッと反転して、大小様々な獣魔族が左右に並んでいる真ん中をゆっくり歩きだす。


俺達も、ついていく。


そして、ひときわ大きい、ドーム状の建物についた。


「久しいのう。赤のきゅうか」


「赤の宮?」


「ああ。マナの神殿もかねておる、メラダー元帥の城じゃ」


「なるほど」


俺は少し緊張する。


重苦しい、重厚な扉が開いた。


ドーム状になっていて、広場広いホールの中には、ひときわ大きい獣魔族が立っていた。


白銀と赤のまだらの毛並みに、炎のたてがみを生やし、四つん這いの状態で人よりも少し大きいくらいの体躯があった。


「ご足労いただきありがとうございます。魔王様」


まるで歴戦の兵士と話してるような重みを感じさせる声音に俺は緊張する。


「よろしく頼む。さて、紹介しよう。隣にいるのが次期魔族の長であるカール・リヒター・フォン・スベロンニアじゃ。妾の夫でもある」


ルシフルエントがそう言うと、メラダー元帥が鋭い眼光でこちらを睨みつけてきた。


俺は強烈に殺気を発するその視線に少しだけ緊張した。

9月30日炎の宮→赤の宮に変更

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