マウントシュバッテン王2
昼食を済ませ、着替えて謁見の時間になる。
玉座の間の中央の一段高い位置に座るマウントシュバッテン王。
そこに、リヒテフント帝国よりかなり遠くにある、交易海洋国家ソリ王国の派遣団一行が入ってきた。
先頭は金髪の髪を無造作にポニーテールにした美女で、豪華なドレスを身にまとっている。
身長は平均的王国女性と変わりないぐらいだった。
マウントシュバッテン王はにこやかに笑顔を作り待つ。
「お初にお目にかかります。マウントシュバッテン王。私はホリー・メイレント・カマルギウス・ローレンツ・ビクテム・ソリです。本来なら父が来訪するべきところではございますが、お許しください」
ホリーは優雅に挨拶する。
「これはこれは、お噂はかねがね聞き及んでおりますよ、ホリー王女。僕もハタチなんで同い年ですよね?ぜひ今後とも仲良くしていただきたい。……そういえば、噂の魔道召喚士さんはいらっしゃるんですか?」
大げさに立ち上がり、両手を広げて言う。
「もちろんです!アル・リビレント・フォン・ソウニャ、前へ」
「は!はい!!」
栗色の豪華なローブを羽織った若者が前にでる。
顔は中性的で、化粧をして女性ものの服を着たら、女性と間違えるのではないかと思うほどの整った顔立ちをしている。
身長もホリー王女とあまり変わらない。
「アル・リビレント・フォン・ソウニャです。私などを存じていただき恐縮至極でございます」
深々とお辞儀するアル。
マウントシュバッテン王は、アルにわざわざ歩いて近づき、握手をする。
「この世界で2人しかいない魔道召喚士だ。知らないはずがない。今夜の晩餐会はもちろん出席するであろう?ぜひ色々な話を聞かせてくれ。同い年だから遠慮は無用だ」
「はっ!ありがとうございます」
すこし、顔の赤くなるアル。
マウントシュバッテン王は玉座に戻る。
「では、閣下。今夜の晩餐会楽しみにしております。では」
ホリーたちは優雅に挨拶して、退席した。
次の謁見。
「閣下!隣の領主であるミルダー子爵をどうかおとり潰しにしてください!!このままでは犠牲者が増えるばかりです!!」
コトレン男爵は入ってくるなり、そう訴えた。
玉座に肩肘をつき、ジト目で睨みつけるマウントシュバッテン王。
「……見苦しい」
「は?」
「この2年間色々してやったが……全く改善しない。僕はもう飽き飽きだ」
「そんなぁ!閣下!!」
「無能は貴族としては不適格だ。明後日までに連名で誓約書を持ってこい。……じゃないと、領地没収だ」
「ええ!!移動だけでも2日はかかりま……」
「誠意を見せろ。下がれ」
「え~!!どうにか!!もう少し日にちを~」
すがろうとするコトレン男爵を衛兵が捕まえる。
そして、外に引きずって行った。
次の謁見。
「ミドルガルド子爵です。リヒテフント帝国の情勢を報告に参りました」
フルプレートを纏ったミドルガルド子爵がハッキリした声で言う。
「ご苦労、ミドルガルド子爵。帝国はどうだ?」
「それが……国境付近に最近になって拠点を築きつつあり、防備を固めています。隣の領主である、カッタネン男爵とも話しますが、同様の様子で……」
「ふむ。まあ、魔界の脅威が取り払われた我が国が、リヒテフントに向かうことを警戒しているんだろう。……無駄な浪費だね。僕は戦争なんて非生産的な事は極力避けたいんだけど」
「領土的野心の強い、先軍国家である帝国がそのように思ってくれるでしょうか?」
「ありえないね。だから、拠点なんて維持管理費がかかる物を作るんだよ。防備を固めた後、満を持して攻撃する。帝国の20年前からやってるドクトリンさ」
「では……いかがいたしましょう?」
「いろいろ意見を聞いたが、こちらは生産的な手で行こう。お前の国境付近にヨルー川とメルケン川を結ぶ灌漑用水を建設する。広さは底が浅くていいから幅を広くして堀のような形にする」
「なるほど、周りは開墾するのですか?」
「もちろんだ。堀を越えたらぬかるんだ農地が待っている。さぞ侵攻しずらいだろうねぇ。収穫できれば税収も増えるし、小作農の所得拡大にも寄与する。どうだ?」
「一石二丁ですね」
「まあ、投資はいる。そこでミドルガルド子爵に下賜をやる。有効に活用せよ」
「はっ!お心遣い感謝します」
「また、カッタネン男爵や、帝国と領地を接する領主の事を考えると、不足分も生じると思うから臨時徴収金を募ることになった。随時送金するので、頑丈な灌漑用水路を作ってくれ」
「重ね重ね感謝します。では、領地に戻ります」
「ああ。わざわざご苦労様。また何かあったら報告してくれ」
ミドルガルド子爵は深々と礼をして、退席した。
謁見が終わった玉座の間。
「やれやれ、今日も一日が早かったな」
背伸びをする、マウントシュバッテン王。
玉座の間から見える窓には夕日が見えていた。
「お疲れ様です。しかしこの後晩餐会がありますのでご準備を」
コーネリアが深々とお辞儀をする。
「ああ。わかっている。……しかし、実は楽しみでもあるのだ。ソリの王様には感謝だな」
「王女と魔道召喚士ですか?」
「そうだ。実はいうと、僕はあまり友達がいない。同い年と話す機会なんて早々ないから色々と聞いてみたいのだ」
「……珍しい」
「何か言ったか?」
「いえ、あの合理主義の塊みたいな閣下が……友達などと」
「僕だって思うところがある。しかし、本音をいえば、同盟交渉の布石でもあるし、なんともいえんな」
「安心しました。いつもの閣下ですね」
「コーネリア……お前は少し毒が過ぎるぞ」
「申し訳ありません。毒使いを生業としていましたもので……」
「ハハ!まあ良い。ソリは小さいが役に立つ。あの魔道召喚士が居るだけでリヒテフントより数倍大事だ。せいぜい仲良くお友達になるか」
「了解しました。では、ご準備に向かいましょう」
コーネリアは深々とお辞儀をする。
「ああ」
そういって二人は玉座の間を後にする。
戦乱の香りが漂う中、マウントシュバッテン王はさらに忙しくなりそうだった。




