大魔導師ホルス
「お師匠様~。なんで、こんな格好で瞑想しないといけないんですかぁ~!!」
ココは吊されながら悲痛な声をあげる。
それは、下着姿のまま麻の紐で特殊な縛られ方をされているからである。
「お前さんが、変な風に魔力回路を形成したから調教も兼ねてるんだ。この麻の紐はこの森にある特殊な麻で作られているからねぇ。3日も瞑想してたら、ある程度準備はできるだろう……クックック」
ココの側でそう言う女性。
オットマンに投げ出された足には黒い厳ついロングブーツに、パリッとした軍服のような服を身にまとっていて、木で作ったリクライニングチェアーにゆったりと座っている。
男性と比べても長身の部類に入るような人で、色白で、青色の髪を短かくそろえた髪型をしている。
馬用の鞭をしならせながらニヤニヤと笑うその顔は、いささか不気味だ。
「3日!3日もこんなカッコですか!!」
ココは涙目で叫ぶ。
「ああ。排泄の時は、お前の木偶人形に言うんだよ。そのままトイレまで持って行ってやるから。クックック」
彼女は大魔導師ホルス。
通称、木偶使いのホルスと呼ばれている。
外見年齢は30代と言ったところだが、実年齢は1000才をゆうに超えている。
「いや~!!乙女の純情が!!」
「黙れ。こーんな、矯正下着を着ける乙女がいるか!どうせ、胸を大きくしたいが為に創造系の魔力回路を形成しようとしたんだろう?お前の特徴、丸つぶれじゃないか。このバーカ」
ホルスはどこからか取り出した、ココの矯正下着をプラプラさせながら呟く。
「うっ……どーせ、私は絶壁ですよ-だ」
ココがいじける。
「そんなところにこだわるからカールを奪えなかったんだろ。この阿呆。魔王なんかに取られやがって。あの魔力回路を引き継ぐ子供を調べたかったのに……」
ホルスは本気で悔しがる。
「お師匠様……なんで、知ってるんですか」
ココは青ざめる。
「カールを連れてきたときから、お前の抱いてた感情なんてお見通しだよ。あと、私の木偶は世界中に沢山散らばっているから、どういう情報でもすぐに入ってくるんだよ」
「調べるというのは……」
「もちろん解剖だよ。死なない程度にねぇ。お前の才能とカールの才能を受け継ぐ子供だ。さぞ面白いデータが取れるだろうよ!アーッハッハッハ!」
狂喜じみた笑いが部屋に響いた。
「……マッド」
ココは静かに呟く。
その瞬間。ココの尻に馬用の鞭が飛ぶ。
「イタっ!すみません!!」
「聞こえてるよ……謝るぐらいなら最初から言わなければ良いのに…フフフ」
ホルスはニヤニヤと笑う。
「とっ、ところでお師匠様!聞きたいことが……」
「なんだい?」
ホルスは鞭をしならせながらニヤニヤしている。
「グレートアルメラントの王様が変わってたの知ってます?」
ココは必死だった。話題を変えないと鞭が飛んでくるからだ。
「知ってるに決まってるだろ!!」
ホルスは鞭を振るう。
「イタっ!そ!そうじゃなくて……何でマウントシュバッテン王になったのかを聞きたくて……!」
ココの努力むなしく鞭が振るわれる。
しかし、ココは諦めなかった。
「ふん。表向きは急病で死んだ事になってるけど、あれは毒殺だよ」
ホルスは興味なさげに言う。
「ど……毒殺!」
ココは思わぬ方向に話しが動いたのでビックリする。
「当たり前だろ?じゃないと、王家直系の男子14人が1ヶ月のうちに死ぬわけ無い。最初はあの餓鬼じゃ無いけど、便乗して殺っちまったのさ。まったく……本当に油断ならない餓鬼だよ」
「が……餓鬼って」
ココが苦笑いを浮かべる。
「最初にあったときから、本当に憎たらしい餓鬼だったよ。餓鬼のくせに論理的で合理的。自分以外は物か何かとしか思っていない節がある。もちろん、この私に対してもだ」
「お……恐ろしい」
ココは心底思う。
この齢1000才を超えるマッドの大魔導師をモノ扱いなんて。
下手したら国が滅ぶ。
「しかし……おかげで、戦争に向けて国々が動き出したからねぇ。魔界も戦乱の匂いがプンプンする!フフッ!楽しみだねぇ……!」
ホルスは口元をかなり広げて呟きながら不敵に笑う。
「……戦争狂」
ココは呟いた。
当然鞭が飛ぶ。
「イタっ!すいません!お師匠様ぁ~!!」
ココは叫ぶ。
「だから、謝るぐらいなら最初っから言わなければ良いのに。フフッ!」
ホルスは楽しそうに笑う。
「……!」
ココが震える。
「どうした?」
「あの……トイレを」
「7号!」
ホルスが叫ぶ。
「は~い!」
声変わりしていない少年のような声で返事が聞こえ、扉が開く。
そこには、フリフリのメイド服を着た精巧な14~5才ぐらいの人形がいた。
髪は茶色くツインテールをしている。
顔つきは中性的だが、どちらかと言えば少年のような印象を受ける。
しかし、露出している箇所には、皮膚の代わりに木目がハッキリと浮き出ている。
「ホルス様。お呼びでございましょうか?」
7号と呼ばれた人形は優雅にスカートを少し上げ、少し膝を曲げながら、華麗に挨拶をする。
「この阿呆をトイレに連れていけ。紐は……」
「もちろん外しません」
7号はにっこり笑って答える。
その表情は自然で、木目も伸縮しているようだった。
「な……ナナちゃんまで~」
ココは震える声で絞り出すように言った。
7号なのでナナちゃん。
ココは昔からそう読んでいた。
「ホルス様の命令ですから」
7号は苦笑いを浮かべながら答えた。
7号はスッとココを吊している紐を持つ。
そして、吊してある部分の紐を解く。
ココは標準よりは軽いはずだが、片手で持てるほど軽くはない。
しかし、7号は腕を伸ばしたまま平行移動する。
「では、ホルス様。厠に行って参ります」
7号はココを持ったまま、優雅に挨拶して部屋を出た。
ホルスは椅子に座りながら手を振る。
扉が閉まる。
「しかし……あの魔王とカールの子供か……興味深い!クックック!アーハッハッハ!」
ホルスは高笑いをした。
「一人ぐらい分けてくれないかなぁ?どんな魔力回路をしているか楽しみだ」
ホルスは不敵な笑いを浮かべた。
魔力:世界に満ちる不思議な力。この世界ではマナの木から発生する。魔力回路に供給され、様々な魔法や身体能力に具現化する。
魔力回路:魔力を具現化する体内回路。発達には個人差が大きい。魔族はマナの木に近しい存在なので生まれつき持つが、人間は持たないことの方が多い。魔力回路の発達具合により、魔法の得意、不得意がある。魔力回路が形成していないと魔力の具現化である魔法を受けずらいので、回復や支援魔法がかかりづらい。人間の子供の場合は最悪、死亡する。
こんな、イメージで設定しています。




