異世界へ再び
続編の内容を変更しての、再開です!。
どうかヨロシクお願いします!。
結婚式が始まる。
入り口の扉が開き花嫁が姿を現すと、式場の視線を一手に集めた。
若く美しい花嫁は、純白のドレスに身を包む、金色の髪を伸ばす頭部には冠、そこから拡がるベールは、床に着くほど長く、二人の女性が端を掴み拡げている。同じく純白のドレスの裾の端は、遥か後方まで拡がり伸びている。
花嫁の眼には、幸せを待ち侘びる……否、悲しみを蓄えてた色しか見えない。
両手にブーケを持ち、俯き加減に祭壇へと歩みを続ける。
花嫁が向う正面には、一段高い台に立つ神官が待つ。
背中を向けて、花嫁の到着を待つ新郎が神官を見据えている。
その横へ、花嫁が到着し真横に並ぶ。
付き添っていた女性が、指を放し両脇へと歩いて行った。
「ふっ花嫁がそんな顔しては困るではないか、私に笑顔を見せなさい」
花婿は、御世辞にも若者とは言えないが、覇気の衰えを見せてはいない。
「煩い……! 、誰があんたなんかにっ!」
そう言い捨てると、唇を噛んで堪えている。
花嫁の名は、元ハインデリア皇女ローゼス、花婿はガリア帝国、皇帝ハデス。
皇帝ハデスが、皇女ローゼスに結婚を提言し彼女はそれを受諾した。
神官が始まりを告げ、その二人の結婚の儀式が進んで行く。
皇女ローゼスが、何故この皇帝と結婚式に臨んでいるのか?
それは…………。
見上げる夜空に、満天の星は無い、只雲一つ無い快晴が拡がる。
そこに、一際映えて満月は浮かぶ。
…………良い夜である。
日本の、とある街角で二つの影が距離を縮め、会話を始める。
一人が素顔を曝し、現れた金色の髪が月下に煌めき、金の糸を靡かせる。
男は只……、呆然と立ち尽くす……。
暫し、時が進み。
地上に、描かれた円陣から吹き上がる光が二人の姿を包む。
しかる後、一瞬激しく瞬くと、二人の姿はそこには無かった……。
二人を包み、淡い球体は今、次元の闇を突き進んでいる━━。
一組の男女を別の世界へ、……異世界へと誘う為に。
一年前、脱出劇の最中に現代社会へと、送還されていた。
そんな俺だが……。
皇女ロゼが再び現れ、この俺を異世界へと迎えに来た。
彼女が、迎えに来れた理由に付いては謎に包まれ、興味深い。
召喚の魔法は、生涯で一度限しか使えない、と、俺は記憶している。
だが、そんな事はこの際どうでも良い、俺があの世界へ帰れるだけで満足だ。
再び、七人の女性達と逢えるのだから、細かい事は気にしない。
っとは言う物の、懸念される事柄が在るのに気が付く。
「なぁロゼ、俺を落としたり……しないよなぁ?」
「馬鹿ねっ! 、しないわよ」
そう言うと彼女は、俺の腕に自分の腕を、絡めて来た。
彼女の、甘い香りが立ち込め一瞬、頭をふらつかせ足を踏締める。
懐かしい異世界の情景が、頭に蘇ってくる。
そうあれは、一年半前だ……。
最初に俺を連れ出し、そして彼女は俺を落とした……。
その失態のせいで俺は、異世界に漂着した当初、偉い目に遭わされた
けどまぁ……、今になって思えば、その御陰で二人と逢えたとも言えなくはない。
普通に、到着していたらアネスやハルはもっと後に、或は逢えていない。
冗談でなく、普通に起こり得えた事と想うと、運命なる物を信じたくもなる。
上手い言葉が出て来ないが、結果良ければ全てヨシと収めよう。
気まずい……。
ロゼが腕を組んで、その後から、どうにもおかしい!。
何か足りない気がして仕方ない、それを考えてみると気がついた。
一年振りに再会したのに、お互いが何も確かめ合って居ない事に……。
普通は、名前を呼び合って近づいて、熱く抱擁して唇を重ね合うのが、想いが重なった者達の再会シーンではないのか?。
なのに、その雰囲気が全くと言ってない……。
それを、男から求めるのが礼儀なのか?。
ん━━━、何故かそういう雰囲気に成れない、踏み出せない。
例えて言うとしたら、デバートでエレベータに乗り込んだ時に、一人きり。
そこに、分かれた昔の恋人がエレガとして、乗り合わせていた。
確かに、元カノの筈なのに、怖くて声を掛けれないあの心境……。
今まさに、その状態と言って、間違いない……。
腕を組んではいるけど、それ以上に近寄らせないオーラが、彼女から感じる。
如何にも、彼女の様子が違う。
確かめたいが、露骨に聞くのをここは避けたい。さり気無く声を掛け、探りを入れてみる。入れては見るが、何か在ったとしても、彼女が正直に言うとは限らない。
例え彼女に……。
言いたくない事や、誰にも言えない事が在ったとしてもだ。
俺がそれを無理強いし、彼女から話を聞きだすのは、エゴと言う物。
「ロゼ、この一年間どうしてたんだ?」
尋ねながらに、横目で彼女の反応を確かめる。
彼女は、前を見据えた状態を崩さず、口を開いた。
「色々とよ…………、すぐに分かるわ」
「それだけ?」
「…………」
「秘密か…………」
何の根拠もない推論を言えば、やはり彼女は隠し事をしている。
神妙な表情を崩さないのは、不安な心境の表れで、何かに悩まされている?。
それが何かは、現地へ到着すれば表面化すると言うことか。
「もう……到着するわよ……」
彼女は到着を知らせた後に、俺の腕に巻きついていた腕と手を、強く締めた。
力を込めながら、頭と頬を俺の腕へと擦りつける。
到着間際に、彼女は自分の感情を態度に表してきたが、何故今?。
ロゼは、力を込め身体を震わせているのを、俺の腕は敏感に感じ取った。
しかも、彼女は目を見開き恐怖を?、いやあの眼は……羞恥心を表す物だ。
彼女が、何かに対して羞恥を覚えている……、何かを恥じている。
これも確証無いが、そう感じてしまっては、彼女に真相を聞くほか無い。
「ロゼ、一体何が……
「着いたわっ」
彼女は質問に返事をせずに、到着を告げる。
到着を宣告すると同時に、彼女は全ての接触を解いて離れた。
眼が眩む閃光が広がり、顔を背け眼を伏せたあと左腕で両目を覆った。
腕に付いたロゼの移り香を、いっそう強く感じる。
目を伏せる直前……。
ロゼの目から涙が毀れた様な気がしたが、気のせいだったかも知れない。
有難うございました。