表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

動き始めた歯車

あの日。

異例の子供が、わたくしの娘が産まれて十年の月日が流れた。

幼名をリアノとした我が子は、アースクレイア神の申し子とされたとしては、とても体が弱かった。

すぐに熱を出し、寝込む。

最近、やっと丈夫になって、わたくしの後を着いて歩くようになった。


十年

それは様々なものが、変化するには充分な時間だった。

穏やかで優しかった夫が、娘が産まれてから、人が変わったように酒色に溺れるようになった。

側室たちの数が増え、後宮の財や王宮の財を湯水のように使い、仕舞いには民の税まで手を着けた。

臣たちの意見に耳を貸さず、重臣たちを遠ざけた。

心ある者たちは、王に見切りを付け、王宮を去った。

未だに王を見捨てず、使えている者など『五大臣』と『参謀』のみ。

その他に使えている者など、悪心を持ち、民を苦しめ甘い蜜を啜る者ばかり。

後宮は、フィオルナという側室が権力を握り、わたくしの地位を脅かしつつある。

思えば、フィオルナが来てから夫がおかしくなった。

たかが側室一人に、と最初は思っていたことが間違いだった。

今のわたくしには、フィオルナを遠ざける力はない。

今のわたくしにあるのは…。


「お母様、お庭の百合が咲きましたの!」

百合の花を大事に抱えた少女が、こちらに駆けてくる。

白銀の髪。深紫の瞳。

まごうことなき、王家の証。

―――わたくしの愛する娘。

夫には、帝王には、この子以外の子供は産まれていない。

これは、神々がこの子を帝王にせよ、という思し召しなのだろう。

だが、帝王になること自体この子は難しい。

女の子だから、という理由で。


「お母様?」

百合の花を大事に抱え、怪訝そうにする愛らしい娘。

「リアノ…、運命に……」

運命になんて、敗けては駄目よ。

幸せになって。

帝王になんて…、ならないで。

王妃は、神々に祈る。

―――どうか、来るべき運命が一日でも遅くなりますよう。その時まで、娘を我が手で守り徹せますように

リアンティーア王妃が知らない間に、歯車は狂っていた。



外宮中央殿。

そこは、政治の一切を取り仕切る帝王の仕事場である。

そこに入る者は限られており、大臣以上の位を持った、いわゆる『重鎮』しか立ち入り出来ない。

しかし、最近は『重鎮』以外の人物が帝王の傍らにあり、その者が政治を、国を牛耳っている。

帝王の側室―――フィオルナ。

肩書きだけを見れば、数十といる側室の一人に過ぎないが、この場において一番の発言権と決定権を有している。

傾国、阿婆擦れ、女狐。

この三つの言葉がこれ程似合う女は後にも先にもいない、と参謀ジェイダーンは思う。

側室の身で王妃の立場、地位を脅かし、政治を牛耳り、帝王の心ですらも自由に操る。

この女を王宮から、追い出さなければ‼

そう、心ある者たちが思い立った頃には、全て遅かった。

真の忠臣たちは、身に覚えのない罪で左遷、降格、処刑された。

危機を悟った者は、この国を去った。

今、王宮を仕切っているのは、女狐の息のかかった者だけ。

帝王を諌め、女狐の力を抑えることが出来なくなっていた。


帝王の発言に耳を疑った者は真の忠臣だ。

帝王の発言が悪い夢だと思った者は良い常識人だ。

裏に女狐が絡んでいるのは間違いない。


「朕は異端の子を産みし王妃の罪を糾弾し、廃妃とし死を命じる。子も同罪である。次の妃を筆頭側室、フィオルナとす」

随分間が空いてしまいました。申し訳ありません。次は主人公目線での物語進行です。今回の進行は王妃と参謀でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ