滅びの予兆
ヴォルティエ王国第65代帝王が産まれた日。
王宮では、歓喜の声が一瞬にして ――― 悲鳴に変わった。
――― おっ…女子だと!!
――― し、しかし王の証が……。
この国の王家の子は、男児一人しか産まれない。
神々が醜い跡目争いを避けるため、という言い伝えがあるが、実際はよく分かっていない。
よく分かっていないが、初代からずっと男児一人しか産まれず、跡目争い等は一切起こっていない。
産まれてくる男児たちも、大きな怪我や病気などせず成長し、帝王になり、王妃を娶り、また、新しい帝王を産み、その生涯を閉じる。
その『常識』が今、崩れ去ったのだ。
産声を上げる赤子に光の雨が降る。
神々の加護。
その場にいた者たち、『帝王の子』の誕生に関わった者たちの頭に声が届いた。
“この先の未来にて、国々は乱れ、血を好む悪魔が台頭するで有ろう”
神々の予言。
神々の予言は外れない。
“王は狂い、王妃の涙声が大地に響き渡るだろう”
国々が乱れる。王が狂う。
悲劇の予言。
“今、生まれし帝王の子は全能神アースクレイアの申し子なり”
アースクレイア神。
邪を打ち払う、正義の神。
その神の申し子。
ヴォルティエ王朝第65代帝王ファルニア・リアノ・アースクレイア・ヴォルティエが産まれた日。
様々な因縁が目覚めた日。
そして
平穏な筈だった人々の宿命が
狂い始めた日であった。
お久しぶりです。
更新が遅くなって申し訳ありません。
ここまでが、序章になります。
次回から本編に入ります。