第63章:ガドリニウム(4)
はい、どーも。作者です。本日二度目の投稿になります。いやあ、久しぶりにアクセス解析したらユニークが5000を突破し、更にはPVが25000を突破しようという勢いなので、こうして投稿させていただきました!佳境を迎えたガドリニウム戦、一体どんな結末が待っているのか!?それでは本編をお楽しみください!
前章でいよいよガドリニウムと、奴の操るゾンビ軍団との対決が始まった俺達三人は、それぞれで苦しんでいた。俺はガドリニウムの謎の分身攻撃を攻略出来ずにいたし、中濱は最後の二体となったゾンビ軍団から放たれた痺れる骨で動きを止められ、最大のピンチを迎えていた・・・。
しかしそこに現れたのが前章で一番最後に喋った男である。
「おいおい。俺のダチに手を出すのはよしてくれないか?」
中濱は薄れた意識の中でもすぐにこの言葉の声の主を理解した。
「井・・・伊・・・?」
「全く。世話のかかる野郎だぜ。俺の右足がなかったらお前、今死んでたぞ?」
その言葉で中濱は、井伊が必殺のシュートでガイコツの剣を正確に弾き飛ばしたということがわかった。
「ほれ。治療虫だ。さっさとこれで回復しとけ。」
そう言って井伊は懐から瓶を取り出すと、それを中濱に振り掛けた。
「ピーピー!」
井伊は話にしか聞いていないが、この前ガラクトスと戦った時に治療虫がほとんどやられてしまったので、種の交配を積み重ねて新たな治療虫を完成させたらしい。名前を・・・確か『ウルトラ治療虫』とか言ったな。センスのかけらもない名前だがな。
「ぐっ・・・!」
中濱は一瞬顔をしかめるそぶりを見せたが、傷は少なかったので、すぐに回復した。
「おぉ・・・!流石新種。回復力が凄すぎる!助かったぜ、井伊。」
彼が井伊に軽く頭を下げると、彼もキラースマイルで返してきた。
「まあ、これからが勝負だぜ、ゾンビ軍団さんよぉ!」
「い、一体どうなってやがる・・・!」
俺はもう何がなんだか分からなくなっていた。何故何もそんなそぶりを見せていないのに、数が増えているんだ?しかも今も・・・。
そうである。先程から徐々に増えてきたガドリニウムの分身達は、今はもう10体位になっていた。
「ヨホホホホ。残念ねえ。あなたたちは今ここで屍になるのだからねえ!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ブシュッ!
「なっ・・・!?」
いきなり奴らが動き回ったかと思うと、俺の身体から激しく鮮血が噴き出した!いつ攻撃されたのかも全く分からなかった。何てスピードなんだ・・・!
「う・・・。まだまだあ!」
俺は素早くゴーレムに体を変え、腕を伸ばして体を回転させた!
ブオン!
ブオン!
ブシュッ!
「ぐああっ!?」
今度は音すら感じなかった。どれだけのスピードであの重たい一撃を繰り出しているというのだ。
「ヨホホホホ。どうした?さっきまでの威勢が全く感じられないわよ?そんなレベルで私に盾突こうだなんて、10億年は早いわ!ヨホホホホ!」
体中に刻まれた切り傷に悶えている俺を嘲笑うかの様に、ガドリニウムが言った。
「くっ・・・!何か、何かこれのトリックはないのか!それでなきゃこんなスピードは有り得ない!」
俺はゆっくり立ち上がるのがやっとの状態だった。そしてそうでも考えないと気持ち的にやっていけないのだ。もうそれだけ切羽詰まった状態なのだ。
そう考えていた時に、一つ、俺は大事なことを忘れていることに気付いた。しかしそれを使えるだけの体力は正直残っていなかった。それに出したところで一体何になるとさえ思えていた。
ドゴオオオォォ!
しかしその時、中濱と井伊が戦っている辺りで、何かが壁にたたき付けられるような音がした。
「ま、まさか!そんなことが・・・!?」
その時俺が目にした光景は、二人があのスカルゴンを壁にぶつけて崩れ落としたところだった。
「そうだ・・・。あいつらもぎりぎりのところで戦ってんだよな・・・。ここで俺が何とかしなければ、始めから戦ってきた地球人代表としての名が廃るってもんだぜ!」
俺は傷だらけの体を起こして立ち上がると、まずは麒麟に変身した。スピードだけならこれが1番だと思ったからだ。
「ヨホホホホ。何に変身したって同じこと。ここをお前の墓場にしてやるわ!」
何に変身したって同じこと・・・。それは俺も十分分かっていた。でもたった1%でも運命を変えられる可能性があるのだとしたら、俺はそっちに賭けようと思う。今なら何だって出来てしまう気がする。負けているのに、不思議と。
俺は深く深呼吸をすると、静かにこう言った。
「『ブリッツ』。」
「畜生・・・。なんて体力してやがる!」
ズズズズズ・・・
俺がガドリニウムと激しい戦闘を繰り広げていたその頃、中濱と井伊は最後の一匹となったスカルゴン相手に大苦戦を強いられていた。何しろ倒しても倒してもすぐに復活するのだ。これならキリも何もあったもんじゃない。
「どうやら精確に核を叩かないとダメらしいな・・・。」
中濱が角を構えながら言った。
「どこだか分かれば苦労しないんだがな・・・。」
井伊も新たな気弾をセットしながら言った。さっきのシュートもこれだったらしい。
「それじゃあ・・・、これならどうだっ!」
バシュウウウウ!
彼が振り抜いた右足から放たれた気弾は右サイドから大きく孤を描き、奴の顎を捕らえた!
パカアァァン!
「やったか!?」
ズズズズズ・・・
しかし井伊の強力なカーブシュートも核は捕らえられていなかったのか、またゆっくりと復活していった。
「んだよ!これでダメなのか!?他に狙うところなんて・・・!」
完璧に捕らえたと思っていた井伊は、流石に動揺の色が隠せない様子だった。
「おい、井伊。一箇所だけあった。」
ふと中濱が声をかけた。
「はあ?一体どこにあるって言うんだよ!」
当の井伊は、中濱もついに頭がイカレちまったか、と思っていた。
「あるだろ?気付けよ。俺達にだって共通することだぜ?」
中濱が不敵な笑みを浮かべて言った。
「!?ま、まさか!?」
井伊も感づいたらしい。
「おい、ふざけんなよ!せっかくなるべく下ネタを使わずやってきたのに、どうして使わなければならん!」
そして井伊は中濱に突っ掛かった。
「おいおい。下ネタ?俺は『眼』を狙うって言ってんだぜ?そんなところ、狙いたくもない。」
しかしあまりにもはやとちりだったらしく、結局関係なかったらしい。
「井伊。俺を蹴飛ばせるか?」
中濱が尋ねた。
「うーん。蹴飛ばすのは無理だけど・・・そうだ!」
そう言って井伊は一旦変身を解き、中に入っていた黄土色?のカプセルを取り出して口に放り込んだ。
カッ!
すると彼は筋骨隆々とした土の怪物になった!ゴーレムとはまた一味違い、体はさほどでかくはないものの、ゴーレムよりもどっしりした感じの印象があった。そして胸の所には大きな何かの紋章が描かれていた。
「今俺がお前をスローインで、奴の眼を狙って投げる。そして眼の核に傷を付けろ。後は俺が何とかしてやる。」
「お、おい!何をいきなり・・・!」
「いいから!」
井伊は躊躇う中濱を目で制す。
「・・・分かったよ。お前がそう言ったときは言うこと聞かないもんな。さあ、そこまで言うんだったらキメて下さいよ!」
中濱は中濱の腕に飛び乗った。
この時井伊は不思議な感情を抱いていたらしい。どうしてそんなに軽く感じるのか?いや、中濱が軽くなったんじゃなくて、俺の筋力が異常に上昇しているようだ。
「いくぜ。ロスタイムの始まりだぜ!」
ブワッ!
そう言って井伊は軽く助走を付けると、いつもより力を込めてスローインした!
ギュルルルルルル!
中濱の体が激しく回転し、一つの大車輪のようになる!
「いっけえええぇぇ!」
ガギイイィィン!
ピシッ!
「グオオオッ!?」
その強烈な大車輪によって振り下ろされた角によって、スカルゴンの右眼にダメージを与え、その眼は何か石みたいなモノで出来ていたのだろうか、とりあえずひびを入れることに成功した。
「今だ、井伊!」
中濱が叫んだ。
「ハアアァァ!」
キュイン、キュイン、キュイン、キュイン、キュイン・・・
井伊が全身に力を込めると、胸部に付いていた紋章が徐々に光だした!
「食らえ!これが会長と編み出した必殺技、繪荼閼儺髏・黼落鑄だ!」
バシュウウウウ!
「ギャオオォォ!」
紋章から飛び出した巨大な龍が、敵の眼、ただ一点を狙って勢いよく突っ込んでいく!奴も危険を察知したのか、避けようと体を少し右にずらそうとしていた。
「遅い!」
ドゴオォォォ!
「!ギャオオォォ!グオオオッ!ガ・・・」
ドズウウゥゥン!
彼の放った一撃が見事に突き刺さり、その放たれた龍は奴の眼を確実に食い破った。するとスカルゴンは少し痛みに暴れ回ったかと思うと、急に体から生気が抜け、そのまま力無く地面に墜ちた。
「やった・・・!俺達、勝ったど〜!」
中濱が高くいなないた。
「っぶなかったなぁ。あの作戦も正直ぎりぎりのとこだったんだよな。」
井伊もとりあえずホッと息をついた。
「そういえば、あっちはどうなんだ?」
中濱はガドリニウムのいる辺りを指さす。
「さあ。でも助けに行った方が良さそうなのは確かだな。」
井伊は息を整えながらストレッチをしている。そこはやっぱりアスリートだ。
「まあ、そうだな。ちったあ手伝ってやるか!」
「あ、ちょっと待った。」
意気揚々と飛び出そうとした中濱を彼は止めた。
「何だよ。さっさと行こうぜ!」
「忘れてたもんがあってさ。」
そう言って彼はさっきここに来る前に唐沢から貰った、小さな飴玉を口に入れた。程よい甘さが口の中に広がる。
「さあ、もういいぜ。」
井伊はゆっくりと立ち上がった。そして中濱の肩を叩くと、二人は今正にガドリニウムと死闘を繰り広げている仲間のところへと駆け出したのだった。
ギュン!
「な、何てスピードなの・・・!」
ガドリニウムは驚愕していた。何故いきなりあんなに弱かった奴のスピードが上がっているのか。傷だらけの状態でこうして渡り合うことができるのか。何から何まで予想外だった。
「ふっ・・・。これならあのガラクトス様でも苦戦を強いられる訳ね。もう魑魅魍魎の妖怪達はやられてしまったし、ここで私が止めないと!」
ガドリニウムはそう決心したのだった。
「まだまだぁ!」
ギュルルルルルル!
ドシュウ!ドシュウ!ドシュウ!ドシュウ!
俺は素早く体を入れ替えると、奴の体達に強力な雷をお見舞する!
ズズズ・・・
しかし打った攻撃は全部分身に当たっていて消えても消えてもまた復活するのだ。これじゃあキリも何もあったもんじゃない。
残念なことに、『ブリッツ』は三分間が限界だ。いくらスピードやら威力やらが上がっていたとしても、肝心の本体にダメージを与えてとどめをささなければ何の意味もない。何かいい手はないのか・・・!俺はその方法が見いだせずにいた。
「ほらほら、攻撃が当たってないわよ?ハアッ!」
ブンッ!
ピッ。
ガドリニウムの攻撃をすんでのところでかわしたが、少し避け損なったのか、頬のところをつー、と血が流れていく。
「くそっ。これでどうだ!」
俺は首を振って雷に回転エネルギーを加えると、大きく振りかぶって投げ付けた!
バチバチバチバチ!
グググ・・・
回転がかかっている分、若干球がぶれていく。所謂ムービングファストボールである。
「甘い!」
ガドリニウムは自分のエネルギーでバットを作り出すと、手にゴム手袋をはめて、その球を打ち返してきた!
カキイイイイイン!
「!?」
俺が驚いて身を退こうとしたときは、もう手遅れだった。
ドズウウゥゥン!
「ぐおあああああ!あぁ・・・、はぁ・・・」
まずい、直撃した!俺の麒麟状態の体でも耐え切れないような電流が体に走ったかと思うと、俺は不可抗力に逆らえないまま、力無く地面に倒れ込んだ。
立ち上がれない。眼の前に倒さなければならない敵がいるというのに、だ。こんな無念、とてもじゃないけど堪えられない。けれどももう体が言うことを聞いてくれないのだ。
「さあ、私に逆らった罰よ!あの世まで行ってしまいなさい!」
ガドリニウムの声と振り下ろされる刃物の音が恐ろしくゆっくり聞こえていた。
果たして、少年はこの絶体絶命のピンチにどう立ち向かうのか!?中濱と井伊は間に合うのか!?
To be continued...




