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第61章:ガドリニウム(2)

前章でいよいよ十二魔将のNo.2であるガドリニウムを、唐沢から引き離して仕留めることを決意した俺達三人は、今日の6時間目にやることになっている手つなぎ鬼を利用して亜空間に引きずり込み、そしてそのまま一気に仕留める作戦をとることにした。

最大の問題点であった

「範囲は学校の敷地内全部」というルールに対しても、ルルーに協力を求めることによって、逆探知による居場所の確認をすることができるようになった。

というわけで残る問題は

「どうやって唐沢を追い詰めるか」だった。しかしそれは俺達にある秘策があった。その秘策についてはまた後で話すことにしよう。


こうして俺達はひとまず教室に戻って授業を普通に受けることにした。

しかし俺達の作戦が感づかれて先に手を打たれないようにすることだけは避けたかったので、怪しく思われないように注意しながら、休み時間の度に監視をしていた。おかげで肝心の授業の方はほとんど聞いていない。大丈夫。それに関しては後で糞箱の野郎に教えてもらえば十分なのだよ。いちいちあいつの話など聞いてられるか。

ヒュアッ!

む。チョークだ。あの野郎、ついに無音術をマスターしやがったか。しかし甘い。俺にそんな攻撃が通用するかぁ!

フッ。

若干頭にきたので、あいつと同じように無音で全て防いでやった。しかし担任よ。段々人間離れしてきたぞ。


とかいう無駄な事件も乗り越えて、とりあえず昼休みを迎えた。ここでも俺達三人は一度裏教室に集まることにした。

「どうだ?唐沢の行動に何か怪しいものはあったか?」

俺は二人に尋ねた。

「なかったぞ。今のところは・・・な。」

井伊は少し思い出すようなそぶりを見せてから答えた。

「俺が見るかぎりでもなかったな。あれはどこからどう見ても普通の女子高生だぜ。」

中濱も少し呆れた表情を見せながら答えた。

「そうか・・・分かった。今日の午後の授業って何だったっけ?」

俺はそういえば、と思って尋ねた。

「えーと、日本史と・・・英語か。」

井伊が時間割表を見ながら答えた。よかった。別に何も聞いてなくても特に困らない授業だ。安心して体力の温存が可能である。

「よし。それじゃあロングの時間、ここで確実に仕留めるぞ!」

「おお!」




時間は過ぎてロングの時間・・・

「さて、今から何で決まったか忘れたけど、手つなぎ鬼を始めたいと思います。」

司会進行は学級委員である井伊だ。一応唐沢もちゃんと出席するらしい。普通に女子と話している。確かにこの点は普通の女子高生であった。

「それじゃあ鬼を決めなくちゃならないんだけど・・・。やってくれる人はいますか?」

井伊が皆に呼びかけた。

「はい!はい!」

中濱が速攻で手を挙げた。流石に手を挙げるのが早い。

「はい、晋也と。あと三人出して。」

ここで俺は敢えて手を挙げなかった。実はこれは唐沢サイドの出方を探る作戦でもあった。ここでもし唐沢がここで鬼になったら俺は鬼にならずに作戦Aを遂行する。鬼にならなかったら俺は鬼になって作戦Bを遂行する。まあ、どちらも終着点は同じなのだが。


「私もやるわ。」

少しして唐沢が静かに手を挙げた。よって俺と井伊が行う作戦はBということになる・・・はずだった。


それから残りの二人は瀧口と女子が一人となった。女子の名前は特に触れる必要もないのでここでは割愛させていただきたい。

「さあ、鬼の四人は二人一組になって手をつないでください。」

井伊が四人を促した途端、予想もしなかった事態が起きた。

スッ。

なんと唐沢自身から中濱へと手を差し出したではないか!これはやりにくい展開になった。もしこいつら二人がくっついてしまうとルルーに逆探知を頼んだ意味もなくなるし、何しろ作戦を遂行する方法を変えなければならない。頼む、中濱!それだけはやめてくれ!

「瀧口〜、お前組もうぜ!」

しかし中濱も作戦をちゃんと理解してくれていたのか、彼女にくるりと背を向けると、速攻で瀧口を捕まえて手をつないでしまった。

「え?嫌に決まってるじゃないか。どうして君みたいな野蛮な男と手をつながなければならないのかい?僕の手は可憐なレディーのためだけにあるのさ。」

しかし瀧口はその手を振り払うと、呆れた顔で言った。・・・気付いてくれ、瀧口。その発言で女子はもちろん、男子もドン引きしていることに。ちょっと吐き気さえするわ、俺。


結局中濱はあと一人残った女子の手を無理矢理とると、

「はい!い〜ち!に〜ぃ!」

突然大声で数を数え始めた。井伊も中濱の作戦に気付いたのか、

「はい、じゃあ早速スタート!」

と言い残し、全力でダッシュし始めた。他の皆もそれにつられるように散り散りに走り始めた!しかし俺はここで動かない。そして唐沢を上手くおびき寄せて、秘策を仕掛けてあるポイントまで連れていく。それが俺達の作戦Bである。

尚、今回は瀧口が唐沢と組んでくれたことに関してはむしろ好都合だった。瀧口を上手く連れてくればいい。それに関してはちゃんと手を打ってある。

サッ。

俺はある伝説のアイテム、以前瀧口が喉から手が出るほど欲しがっていた、口では言えないようなプロマイドを取り出した。

「そ、それは!唐沢さん、ちょっとすまない。」

そう言って瀧口は彼女を抱き上げると、俺の方に向かって全力疾走してきた!過去に類をみないスピードである。

「へっ!そう簡単に渡すかよ!」

俺も瀧口が走り出すのを見て、秘策を仕掛けてあるポイントに向かって走り出した!



ダッダッダッダッ!


「おい、ちゃんとおびき寄せてんのか!?」

井伊が俺と一緒に並走を始める。

「ああ、ちゃんとこれをちらつかせてるからな。」

俺はプロマイドを手にとってひらひらさせた。

「ああ・・・、それか。」

井伊は苦笑いした。

「全くそれにしてもあいつはなんつー体力をしてやがるんだ?」

そして彼は後ろを振り向きながら言った。むろんスピードは落とせない。なぜなら瀧口が凄まじいスピードのまま、俺の持っているプロマイド目当てに物凄い形相で突っ込んでくるからだ。しかも未だに唐沢を抱えている。それにもかかわらず彼のスピードはむしろより速さを増しているのである。

「・・・さあ?でも好都合だろ?そのほうが確実なんだから。」

俺は答えた。後ろは振り向けなかった。とりあえずは作戦の方を遂行することが先決だった。


しばらく走っていくと、俺達の作戦の最終目的地、

「裏教室」が見えてきた。作戦の本当の開始までもう少しである。

「よし、一旦分かれよう。ここで作戦B、遂行開始だ!」

「おお!」

俺達は一斉に教室に飛び込んだ!


「うおおおお!プロマイドオォォ!」

瀧口はスピードを変えずに右折すると、そのまま裏教室に入ってきた。

「はぁ・・・、はぁ・・・。一体どこに隠れやがった・・・?」

彼も流石に息が切れてきたようだ。

「隠れてもムダだぜ・・・。必ず見つけ出して、そのプロマイドを俺の手中に入れてくれるわぁ!」

そう言って彼はようやく唐沢を下ろすと、教室をしらみ潰しに探し始めた。しかしそのスピードが異常である。しかも探し方が半端ない。黒板の裏とかも探しているのだ。瀧口よ。いくらなんでも人がそんなところに隠れられるはずがないだろ。


ちなみに俺は掃除道具入れの中、井伊は天井裏に隠れていた。プロマイドはわざと彼の目に見えるところに仕込んでいる。このプロマイドに彼が引っ掛かればしめたものだ。確実に彼は手つなぎ鬼をやってることを忘れて、自分のコレクションアルバムのある教室のロッカーまで走って戻っていくだろう。

それに置いていかれた唐沢を捕まえて亜空間に引きずり込み、ガドリニウムを倒す。それが俺達が考えた作戦Bなのだ。


「井伊・・・。『秘策』、使わなくてもよさそうだな。」

俺はテレパシー機能を小声で使った。

「いや、使うかな。その方が手っ取り早い。」

彼は平然と答えた。

「まあ、そうか。やってみるか。」

そう言って俺達はホログラムキーのスイッチを、出力をほんの少しにして押した。

カチッ。

・・・


目には全く見えないが、実は亜空間が少しずつ形成されている。あとは中濱が揃えば完璧だ。同じように使って三角形を作れば周りの人間に怪しまれずに亜空間まで引きずり込める。それが俺達がルルーに伝授してもらった、

「秘策」である。


「瀧口ぃ!そっちはどうだ?」

その時、裏教室に今回の作戦のキーパーソン、中濱が入ってきた。

「プロマイドオォォ・・・。どこにありやがる・・・。」

しかし彼はそんなことには一切耳を傾けず、相変わらず必死にプロマイド探しに励んでいた。

カチッ。

・・・

そこを見逃さなかった中濱は、俺達と全く出力が一緒のホログラムキーで彼女の動きを止めにかかった。彼女、つまりガドリニウムもまだこの作戦にはまだ気付いていないらしい。


「あ、これは!やっと見つけたあああ!」

そうこうしているうちに、瀧口がようやくプロマイドを発見した。

「♪あ〜、よかったな。あなたがいて。」

今彼が歌っている歌が分かったあなた、20代近くはないか?そんな歌を歌いながら彼はブロマイドを丁寧に拾いあげると、絵面を見ることもなく、自分のコレクションアルバムのある教室まで全力疾走で駆け抜けていった。


さて、これでようやく邪魔者はいなくなった。これで心置きなく戦闘に持っていける。

「よお、唐沢。いや、今はこう呼ぶべきかな。ガドリニウム!」

中濱が声を荒らげた。

「なっ・・・!?いきなり何を・・・!」

ガドリニウムはまだはぐらかそうとしている。

「おおっと、とぼけてもらっちゃ困るなあ。今から君を葬らなければならないと言うのに。」

井伊が相変わらずのキラースマイルで言う。大事な緒戦だというのに、なんという腹の座り方なのだろうか。流石サッカー部期待のエースである。

「まあ、あなたたちと戦う前に、この場から脱出すれば・・・!?」

彼女は驚いた。何しろ完全に動きを封じられていたのだから。

「どうやらほんの少しだけ、気付くのが遅かったみたいだな。ガドリニウムさんよぉ!」

俺は吠えた。

「お前の動きはこのホログラムキーを使った微弱な力で完全に封じさせてもらった!」

再び中濱が叫んだ。

「よってお前は亜空間に行って俺達と戦わなければならない!」

井伊がそれに続く。

「つまるところ、お前には唐沢から引き離された上で、あの世まで行っちまってくださいな!」

俺が大声で叫んだところで、三人同時に出力を上げた。

「お、おのれぇ!私とあろうものがこんなガキどもにぃ!」

ガドリニウムが叫ぶや否や、辺りを俺達は一気に範囲の広がる亜空間の中に引きずり込まれていった。

ブワッ!

シュウウウウウ・・・



スタッ。

全員が無事亜空間に到着した。作戦成功である。

「うぐぐぐぐぐ・・・!貴様らは一体どこまでこの私を侮辱すれば済むのだ!」

完全に裏をかかれたガドリニウムはそれはもう怒り心頭であるようだった。初っ端から出し抜かれているのだ。怒るのも無理はない。

「どこまで?おいおい、そんなくだらない質問はしないでくれよ。あんたがこの世からいなくなるまでだよ!」

いつも冷静な井伊がかっと目を見開いた。これが彼の完全なる戦闘モードである。

「さあ、この前の借り、きっちり返させて頂こうか!」


いよいよ始まるガドリニウムとの対決!果たして、少年達は決着をつけることができるのか!?

To be continued...

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