第53章:遺言(前編)
はい、どーも。作者です。久々にこの欄を書いてます。最近部活がかなりハードなもので・・・はい。さて、文字数がようやく20万を超えそうな感じになってきました(ストック含めると確実に超えてる)!更にPVも15000を突破しそうです!嬉しいです!これからもガンガン読んでください!なお、記録更新投稿はこれで変えさせてください。それでは本編をお楽しみください。
前章で、その前にサミュエルさんが倒したはずのガラクトスが突然起き上がり、タレーランさんを黒い剣で刺殺、自らはまたどこかへ逃げていってしまったのだった。
ザック!ザック!
俺達は百年松の根元に穴を掘っていた。カプセルとかを使った方が早いのかもしれないが、やはり自分達の手で彼女を葬ってやりたかった。
思えば彼女には随分世話になった。突然俺の家にやって来たかと思うと、特訓を受けることになり、中濱をこの戦いに引き込んだ(今では引き込んでくれてよかったと思っているが)。そしてサミュエルさんとの再会・・・。彼女はこの約一ヶ月の間に様々なことを経験したと思う。
「なあ・・・中濱。」
俺は彼女をそっと抱き上げながら尋ねた。
「・・・何だ?」
「タレーランさん・・・、こんな人生で幸せだったのかな?」
「・・・さあ。人生の『幸せ』なんてもんは他人が決めるものではないだろう?彼女がどう感じているか、だよ。」
中濱は後ろを振り返らずに答えた。彼はたまにこういういい発言をしてくれる(勿論普段は酷いが・・・)。それだけでも俺には有り難かった。
こうして俺達は彼女を丁重に葬ると、そこら辺の枝を二本組合せて十字架を作り、その頂上に突き刺した。そして深々と頭を下げて、合掌した。
しばらく黙祷を捧げた後で、俺達はアナハイムの面倒を見てもらっていた糞箱のことを思い出した。
「そうだ、中濱。糞箱の奴のところに戻らないと。」
「そう・・・だな。また後でこっちに戻ってくるか。」
中濱は残念そうに墓を見ると、クルッと後ろを振り返り、そのまま駆け出していった。
ダッ!
「あ、待てよ、中濱!」
俺もそれの後を追うように走り出した。
「ん?あれ、中濱じゃないか!?おーい、中濱!」
そう言って声をかけてきたのは、久々の登場である井伊だった(最後に登場したのは第20章)。
正直今ここでは会いたくなかった。
「お、おぉ、井伊じゃねえか。」
中濱も流石にちょっと驚いた様子だった。
「どうしたんだよ、中濱。そんなに固い表情して。あ、さては俺に隠し事でもしてるな?」
む、鋭い。そこが井伊の怖いところでもある。まあ、それだから剣道があんなにも早く上達してるのかもしれない。
「ギッギギギックー!ギクギクー!ななな、いきなり何を言い出すんだよ?」
中濱よ。どんだけ驚いているんだ。そんなんじゃ何か隠し事をしているのが見え見えではないか。
「・・・どうやら図星のようだな。」
井伊はため息をつきながら言った。それみろ、一発でばれたじゃないか!鈍感な俺が気付くのだ、普段から勘の鋭い井伊に敵うはずがあるわけがない。
「あ、井伊。悪いんだけど今ちょっと急ぎ気味だから・・・、また明日学校で話すよ。じゃあな。」
俺は井伊の質問責め攻撃に入る前に(そうなると真実を話すまで止まらなくなる)、彼を振り切る様にして話を打ち切った。
「お、おぉ。じゃあまた明日な。」
中濱もそれに同調した。
ダッ!
そして俺達は全力疾走で井伊を振り切り逃走した。
「あれ・・・。あいつら、あんなに速かったかな・・・?」
「おい、糞箱!」
井伊から逃れた俺達が糞箱のところにたどり着くのに5分もかからなかった。
「ちょっ、来るなり何やねん!いきなりそないな呼び名で呼ぶんはやめなはれや!」
奴はいつもの様にツッコミを入れた。うーん。関西スピリッツ全開だな。
「あ、そうだ。アナハイムさんは?」
中濱が尋ねた。
「ああ。彼ならさっき出ていきなはったで。よう分からんけど、『我、行かねばならぬ。』だそうやで。」
糞箱の野郎はモノマネも交ぜながらノリノリで答えた。どうやら俺達が来るまでにかなり練習したらしい。出来はまずまずだったが、なるほど、似てなくはない。
「お、そうやった。タレーランはんとサミュエルはんは?」
奴は俺達の回りを見渡した。
「いや、それが・・・」
俺と中濱は顔を見合わせて目配せをすると、今まであったことを簡単に説明することにしたのだった。
俺達は持っている語彙力をフルに使って説明した。
時には身振り手振りも使った。
タレーランさんが拉致されたことに始まり、サミュエルさんがアナハイムのアジトに単身乗り込み、銃対弓の不利な状況を乗り越えて倒したかと思ったら倒れて生死の境をさ迷い、俺達のところにガラクトスが現れ、仕留めようとしたけれど逃げられ、タレーランさんを護る為に必死で戦って、そのうえ命を賭した技を使い絶命し、さらに俺達が来た時に、タレーランさんに黒い剣を刺したあげく逃走し、治療虫をフル活用したけれど、結局間に合わずに死んでしまったことまで事細かに話した。
「そうか・・・。そう・・・やったんや。」
いつもは明るい糞箱の野郎も、流石にショックを隠しきれない様子だった。
「ああ・・・。」
俺達もただ頷くことしか出来なかった。
しばらく堪え難い沈黙が流れた後に、一番最初に口を開いたのは糞箱の野郎だった。
「あ、そうやった。あんたらにサミュエルはんから『これを渡してくれ。』と頼まれたんやった。先に渡しとくで。」
カパッ!
そう言って奴は蓋を開けた。中には丁寧に折り畳まれた紙が一枚と、茶色い封筒が一つ入っていた。
「ありがとな。俺達は先にオニキスのトルム会長のところへ行ってくる。それからこれは見てみることにするよ。よし、ご苦労!」
カチッ。
それらを受け取った俺はもう奴に用は無いので、ホログラムキーのスイッチを押して、奴を俺の家に転送した。
「ちょっと待ってえな!せっかく久々の登場なのにぅわあああ・・・。」
憐れ糞箱。奴は何事もなかったかの様に消えていった。俺と中濱はそれを見送った後、別の意味で合掌した。
「さてと、中濱。報告に行ってこなくちゃ。」
「そうだな。ちょっくら行きますか・・・ね!」
カチッ。
シュン!
一方その頃ガラクトス一味の宇宙船では、新エンジンの開発が佳境を迎えていた。
「ほらお前ら!そこのネジが一本足らないぞ!」
「イー!」
「おーい、こっちにやすりを持ってきてくれ!」
「イー!」
上司の命令に下っ端達は素直に従わなくてはならない。というわけで下っ端も結構必死なのだ。
「どうだ?ちゃんと進んでるか?」
そこにやって来たのはウェーデルンだった。
「これはこれはウェーデルン様。ようこそお越しくださいました。」
「いや、実はもう一人いるんだが・・・。」
そう言って彼は後ろを指さした。その指の先にはいつもの様に気配を消して立っているラングラーの姿があった。
「あ、これは申し訳ございませんでした!ラングラー様!ご無礼をお許しください!」
話を聞いていた技術班の班長が深々と頭を下げた。
「気にするな、顔を上げるんだ。元々そうだからな。気をつけてないと私達でも見つけるのは至難の技だからな。」
そう言って彼は顔を上げさせた。
「ところで、新エンジンの完成は後どれくらいかかりそうだ?」
ウェーデルンが尋ねた。
「はい。おおよそですが、後三日もあれば確実に終了します。今最後の調整に入って試運転をしている途中ですね。それで足りない部分を少しずつ微調整するような感じですかね。」
班長が答えた。
「そうか、ご苦労だった。よし、ラングラー、行くぞ。」
「・・・」
ラングラーは首を一度縦に振り、ウェーデルンの後をのそのそとついていった。
それからウェーデルンがガラクトスのところに呼ばれたのは、それから大体10分後くらいだった。彼が呼ばれるときは、何かしらの重大な話の時が多い(簡単な話だったらもっと下の連中を使うから)。だから彼はそれなりに緊張していた。
「失礼致します・・・んなっ!?」
入って彼の目に飛び込んできたのは、傷だらけのガラクトスだった。
「ガラクトス様!?一体何が・・・?」
「おお、これか。この傷は全部タレーランとサミュエルとの戦いでついた傷じゃ。まあ、両方始末しておいてやったがのお。ホッホッホッ。」
彼は体中についている生傷を見ながら笑っていた。しかし、彼には自然治癒能力があったはず。このくらいの傷ならすぐに回復していても不思議ではない。
その時彼はある異変に気付いた。左腕にあった義手が・・・失くなっていた。
「ガラクトス様・・・!う、腕が・・・!」
幾多の戦いを生き抜いてきたウェーデルンも、流石に度肝を抜かれた。誰が一体こんな大ダメージを与えたんだ?
「おお、これか。サミュエルの奴が放った『天・七龍拳』のせいじゃよ。」
「なっ・・・!あいつが・・・ですか?」
彼はその技の名前には聞き覚えがあった。確かその技は『史上最強かつ最凶の魔法』と呼ばれ、全宇宙の魔法使いですら手を出さない代物だ。そんな危険な魔法を覚えようとするサミュエルの考え方が、彼にはよく分からなかった。それでもガラクトス様が生き残ったのは幸いサミュエルの魔力が少なかったからだろう。
「驚いたじゃろう?あいつがこんな魔法をたった一人の女のために使ったんじゃよ。あやつも大人になったのう。」
ガラクトスはしみじみと言った。
「ま、まあそれはともかくとして、ガラクトス様。今はとりあえず休養装置でお休みになられた方がよろしいかと・・・。」
ウェーデルンは恐る恐る口にした。
「・・・それもそうじゃな。早いうちに回復しておかないと辛いからの。それじゃあ、あとのことは頼んだぞ。」
ガラクトスはそういって席を立つと、足早にその場を去っていった。
「はっ。了解しました。」
ウェーデルンは頭を下げた後、その魔法の謎を聞くべく、マリ・クレールのところへと向かった。
この時彼らは気付いていなかった。マリ・クレールの仕組んだ壮大な計画に巻き込まれていることを・・・。
さて、その頃俺と中濱はオニキスのところへと向かっていた。
「なあ、中濱。」
「何だ?」
「毎回思うんだが、いつになったら着くんだ?」
前回もそうだったが、かれこれ10分ほど周りの景色が動いていない気がする。
「知らない。でも景色は動いていないから、もうキーのスイッチを落とせばオニキスに到着すると思うよ。試しに落としてみるか。確かこの辺に・・・あった。」
カチッ!
中濱は辺りを見回して奥の壁に近づいていったかと思うと、ホログラムキーのスイッチを切った。
パッ。
辺りの景色が突然消え、目の前にはオニキス本部の入り口がぽっかりと口を開けていた。
「さ、さっさと行くぞ。」
「お、おぉ・・・。」
俺達はダッシュで地下の階段を駆け降りていった。
15分ほど降りただろうか、ようやくトルム会長のいる部屋の前にたどり着いた。
「やっと着いた・・・。」
「ああ・・・。ここは何回来てもやっぱり遠いな・・・。」
俺達は肩で息をしていた。ここは遠い。何回来てもそう思う。
ガチャッ。
とにかく俺達は中へ入り、受付に座っていたルルーに尋ねた。
「おお、ルルー。会長に会いたいんだけど?」
「えーとね・・・、じいちゃん、じゃなかった。トルム会長なら今ちょうど会議の合間ですので、会うことが出来・・・ます。」
彼女はどうやらあれこれと仕込まれているらしい。
「分かった。じゃあな。また後で。」
「え、えぇ・・・。」
ルルーは中濱の微笑みから目を逸らしながら答えた。
「失礼します。」
「おぉ、おまえ達か。随分と活躍しておるのお。」
会長は義手にゆっくりと油を注しながら言った。
「それで今日はちょっとした相談がありまして・・・」
俺達がそこまで言いかけたところで、
「ああ、話したい内容は何となく見当がついておる。さっきタレーランの通信が途絶えたところだからな。」
会長は俺達の話を制するように答えた。
「そう・・・ですか。あ、実はそれでサミュエルさんから文書を預かっておりまして・・・。」
そう言って俺は糞箱から預かった封筒と紙を取り出した。
はたして、二人が預かってきた文書とは!?マリ・クレールの壮大な計画とは一体!?
To be continued...




