第41章:交錯(前編)
はい、どーも。作者です。執筆スピードが落ちてきて、少し困ってます。そんな僕の稚拙な小説を読んでくれる方がいてくれて、大変嬉しい限りです!PVも8000に到達しました!10000の大台目指して突き進みます!それでは本編をお楽しみください。
前章でガラクトスサイドは新たなエンジン作り、中濱は小さな女の子と二人で逆探知の支度、そして俺はトルム会長と二人で修業に行こうとしていた。
ドサッ!
「・・・いってぇ・・・。一体どこだよ、ここは・・・?」
あまりにも突然連れて来られたので、俺はいつもと違って思いっきり尻餅をついてしまった。
落ち方にもよるが、気をつけないと尾底骨(尻の少し出っ張っている骨)を強打して、痛くて堪らなくなる。現に俺は中学の時の体育のバレーボールの授業で、珍しくスパイクを決めてやったと思ったら激しく尻餅をつき、一週間くらいろくに走ったりできない状況になったことがある。
しかし幸いそんなことはなかった。というのも床が凄い柔らかい。ふわふわだ。足に力を入れたらそこが抜けて落ちそうだ。
「トルムさん、ここは・・・?」
「ハッハッハ!ここはブラッド・オニキス特設の修業場じゃ。部外者は本当は使ってはいけない所じゃが、今回は特別じゃぞ?」
会長は笑いながら答えた。
「でも、この床以外に、どこら辺が特別なんですか?」
俺は辺りを見渡しながら答えた。どこをどう見ても何の変哲もない亜空間だ。明らかに
「特設」とは言い難い。
「これこれ。それはこれを見てから言うんじゃよ。」
そう言って彼は懐に入っていたリモコンを取り出すと、真ん中にある赤いボタンを押した。
カチッ!
ヴヴヴヴヴ・・・
そうすると、俺の回りに一瞬にしてよくある日本庭園に早変わりしたではないか!ちゃんとした枯山水まである。
「うわわ!すっげえ・・・!」
「ハッハッハ!驚いたじゃろう。ここでは数々のデータを組み合わせて、様々なシチュエーションで訓練が出来るようになっておる。この装置を作るのにワシは三年近く費やしたんじゃ!」
会長は得意げに言った。確かにこれなら色々なシチュエーションに対応策を練ることが出来る。
「よいか?君には一つ、必ず修得してほしい技がある。君が『フォーム・アドベント』を使える人材であることはタレーランからの報告で周知しておる。この技は君にしか出来ん。」
更に会長は話を続けた。
「その技の名前は『ブリッツ』。」
「『ブリッツ』・・・ですか?」
「そうじゃ。この技はちょっとした方法で『フォーム・アドベント』の威力を飛躍的に向上させる体術じゃ。これをマスターすることで戦略の幅が一気に広がるぞ?」
「ほ、本当ですか!?凄いじゃないですか!それさえマスター出来れば・・・」
本当に願ってもない技だ。それをマスターすればガラクトスなど赤子の手を捻るように倒せるかもしれない。
「ただこの技は非常に危険なんじゃよ。ワシもこれを修得するのに、殴られたりしたわけでもないのに肋骨を何回折ったか解らないくらい折ったもんじゃ。下手をすると内蔵が破裂するかもしれん。君にはその覚悟があるかな?」
俺は一瞬たじろいだ。迷った。けれどもここで後に引くわけにはいかない。リスクが高い方がリターンも大きいとはこのことだ。
「・・・はい。」
俺は静かに首を縦に振った。
一方地球のとある場所にあるアナハイムのアジトにはタレーランさんが連れてこられて、がんじがらめに縛られていた。口にはもちろんガムテープが貼られている。
「やりましたね、アナハイム様!」
部下の一人が言った。
「・・・」
しかしアナハイムは寡黙な男だ。部下の振りに全く答えなかった。
「ん〜、ん〜!」
タレーランはその後ろで必死にガムテープと縄を解こうと身をよじらせた。しかし逆に縄はどんどん体に食い込んでいく。
「おい、うるせえぞ!静かにしてろ!」
もう一人の部下が言った。
「電気。」
アナハイムは基本的に単語でしか喋らない。今の発言はどうやら一遍電流を流して黙らせろ、ということのようだ。
「はっ!了解しました!」
そう言って部下が電流のスイッチに手をかけて、それを一気に引き下ろした!
バリバリバリバリ!
「!?んうううううううう!」
瞬間、耐え難いほどの強力な電流が彼女の全身を駆け巡った!致死量寸前の電流だ。絶叫をあげるのも無理はない。
そうして彼女は気を失った。髪の毛は逆立っていて、どれだけ電流が強かったのかを物語っている。
「射殺。」
アナハイムがまた一単語を口にした。そして彼はゆっくりと椅子から立ち上がると、無表情で銃を構えた。
「お前、生きる、許さぬ。後生、許せ。」
そうして彼がその引き金を引こうとしたその時!
カキィン!
「!?」
一本の矢が銃を弾き飛ばしたのだ!この速さで矢を打てる奴は一人しかいない。
「あ・・・。」
部下達はあまりの衝撃に言葉が出なかった。
「サミュエル。お前、何、した、分かっているか?」
アナハイムは顔を上げずに言った。
そう。そのアジトの入口にはサミュエルが覚悟を決めたような顔で立っていたのだ。彼女を命懸けで守る覚悟、そして死ぬ覚悟も。
そしてさらにその頃、中濱は前章でも登場した女の子と一緒に作っていた逆探知装置がようやく完成していた。
「よし!とりあえずできたぜ。」
中濱は額に出た汗を手で拭った。
「やったわね!さあ、とにかく逆探知かけるわよ!」
そう言って彼女はスイッチを押した。
カチッ!
ポワワワワ・・・
最初はなんか音波みたいなものがでてきた。が、しかし!
プシュウウウウウウ!
しばらくして装置からいきなり白煙が飛び出してきた!
「お、おい!なんか凄いことになってるぞ!?」
「大丈夫よ!このくらいじゃこの装置は・・・」
キュボン!
彼女がそう言いかけた途端に装置は勢いよく爆発した。色々あったありとあらゆるボタンが、全部無惨に飛び出している。
「大丈夫じゃねえじゃねえかよ!何だ?漫画で実験に失敗した時みたいになってんぞ!?」
「う、五月蝿いわね!人には誰だって失敗があるのよ!」
「失敗してる場合じゃねえだろ?時間がねえんだよ!」
中濱が語調を強めた。
「ぅ・・・ひっく、分かってるわよぉ・・・。」
なんと突然彼女が泣き出したではないか!
「お、おい。お前、急に泣き出すなよ・・・。」
中濱は明らかに困惑している。
「『お前』じゃないわよぉ・・・。ひっく、ぐすっ、ちゃんとルルーって名前があるんだからぁ・・・。」
ルルーと名乗る彼女が泣きじゃくりながら反駁する。
「分かったから、ルルー。また初めから作り直せばいいじゃねえか。さ、そんな下を向いてる暇なんてないぜ?」
そう言って中濱は少し視線を逸らしながら彼女に手を差し延べた。
「!?さ・・・さっさと始めるわよ!」
ルルーも顔を真っ赤にしながらその手を掴んだ。
中濱とルルーが機材をぶっ壊して作り直しを始めた頃、俺とトルムさんの修行は静かに始まっていた。
「ほれ!その状態で腹の底から力を一気に放出するんじゃ!」
「はい!」
彼の激に俺は腹の底に力を込めた。
「フォーム・アドベント」ではカプセルでの変身中でも一部分だけは切り替えることができるようになった。しかしその先の
「ブリッツ」がどうやってもできない。さっきからかれこれ1時間近くはやっているだろうか。
「うおおおぉぉ!」
ドクンッ。
「!?ぐっ・・・。」
突然きた激しい心臓の鼓動に俺は思わずしゃがみ込む。さっきからずっとこれの繰り返しだ。下手したら俺、死ぬんじゃねえかな。段々そうも思えるようになってきた。
「うーむ。これではこのままいくと命を落とし兼ねないのお。」
会長があごひげを触りながら言った。
「そ、そうですよ・・・。さっきから心筋梗塞になりそうで怖いですもん・・・。」
俺は頑張って返事をしたが、まだ苦しい。
「仕方ない・・・。ちょっと荒業を使うかの。」
会長はごそごそとズボンのポケットを探ると、何やら怪しい薬瓶を取り出した。物凄く嫌な予感がする。
「えっと・・・何ですか?治療虫みたいなのですか?」
「そうじゃない。この薬は飲むとあっという間に『ブリッツ』を身につけることができるといわれる幻の秘薬じゃ。」
「何だ、ちゃんとそういうものがあるじゃ・・・」
「ただし!この薬を飲むと10分間はこの世のものとは思えない激しい痛みが全身に襲ってくる。この薬はそれだけ危険なのじゃ。ワシもワシの師匠から渡されて飲んだのじゃが、もう危うく死ぬところじゃった!それでもこれを飲むのか?」
そのくらいのことは最初から予想していた。そんなに楽な道などないってことも。けれども時間がないのだ。立ち止まっている暇などないのだ。
「もちろんです!今俺には時間が無いんです!タレーランさんを救わなきゃ、それから唐沢も救わなきゃいけないんです!危険だってことはしっかり心得ているつもりです。でもやります!」
俺は会長から薬瓶をもらうと、治療虫をありったけ用意した。そして意を決すると、そのまま一気に飲み干した!
ゴクッ!
ブシュッ!!
その途端、全身から一気に鮮血が吹き出した!
「!?ぐあああっ!?ぐ・・・ぅ・・・。」
ぐうの音も出ないとは正にこのことだ。俺は薄れそうな意識の中で治療虫の瓶を開けて、全身に振り撒いた。が、しかし!
ズキン!
「いててででで!」
治療虫が発する独特の激痛が俺の体を襲った!そう。俺は結局二重の痛みに耐えなければならなくなってしまったのである!正直これはきつい。
それから10分後、とりあえず痛みは収まった。ただ精神的にはまだつらい。あのダメージは反則だ。恐らく今までで1番危険な目に遭っただろう。
「どうやら収まったようじゃの。気分はどうじゃ?」
「・・・はい。なんとか・・・。」
「そうか。それじゃ、早速挑戦してみるかの。さあ、立ってみい。」
俺は会長に言われるがままに立ち上がろうとした。しかし、どうやっても立ち上がれないのだ。右足を前に出そうとするとそのまま体が崩れ落ちてしまうのだ。さながら今の俺は干からびて今にも崩れ落ちそうな土の人形のようだった。
「おい。大丈夫かいの?」
会長は俺に駆け寄ってきた。けれども俺はその会長を振り切って気合いで立ち上がった。そこまではよかったのだが、もう完全に膝が笑っている。
「・・・ふぅ。全くなんというガキじゃわい。つくづく先が恐ろしいのお。」
会長からは呆れたのと驚きが混じったため息が出てきた。
「さあ、やってみなさい。」
俺は会長に促され、思いきり体に力を込めた。
「さあ、今度こそできたろ。」
中濱が額にたまった汗を手拭いながら言った。
「ルルー、スイッチを入れてみてくれよ。」
「わ、分かってるわよ。」
そう言ってルルーはスイッチを押した。
カチッ!
ポワワワワ・・・
次回、いよいよそれぞれの思惑の歯車が一つずつ動き始める・・・!
To be continued...




