第39章:謁見
はい、どーも。作者です。テスト期間中でも送っちゃいます。ちなみにPVが7000を超えていたので、本当は明日投稿するところを今日投稿しました!それでは、本編をお楽しみください。
「う、うわあああああああ!」
前章で俺達はトルムと名乗る会長の許へ向かうために、転送装置によって本部まで送られていた。
しかし、いっこうに本部にたどり着く気配が感じられない。
「なあ、中濱。」
「何だ?」
「なんか・・・長くね?」
そうである。いつもなら遠くても2、3分で着くはずだ。それが10分経っても着かないのだ。
「確かに・・・長いな。っていうかこの空間、なんか止まってねえか?」
中濱に言われて辺りを見回してみると、確かに止まっているように見える。一言でまとめると
「危険な状態」と言うのが1番しっくりくるだろうか。
「え!?じゃあ俺達一体どうやって・・・?」
「ばぁか。決まってんだろ?俺達のやることは一つ!」
中濱が自信満々に言った。俺は彼の言葉の意味がすぐに判った。
「まあ、それが1番早いか。いくぞ、中濱!」
「おぉ!」
俺達は二人同時に黒いカプセルを取り出すと、これまたほぼ同時に口に放り込んだ。
以前にもこの空間の壁を破壊した時にも、この黒いカプセルで二人同時に壁をぶん殴って壊したのだ(第15章参照)。完全漂依で叩けば普通に考えて壊れるはずだった。
しかしその考えは後に大きく崩れることになる。
俺達はゴーレムへと変化し、すぐに完全漂依に持って行った。
「それじゃあ早速・・・せぇーのぉ!」
ドゴオオオオオオオオオオオオ!
俺は右腕、中濱は左腕を振るって、渾身の一撃を叩き込んだ!この前空間の壁を壊したときはこれで問題はなかった。しかし!
グググググ・・・
バチイイイイイイイイイイッ!
一瞬壁にめり込んだかと思うと、鈍い音を立てて拳が弾き返された!あまりの勢いに俺達は後ろにのけ反る。
「なっ!?これでダメだと!?」
俺達は激しいショックを受けた。理由は簡単だ。その壁には、俺達が全力で叩き込んだのにも関わらず、傷一つ付いていなかったから。
「うむむ・・・なんか良い手はないものかな?」
俺は冷静に考えることにした。中濱には言わないつもりだが、これはおそらく俺達を試しているのだろう。だったらなおさらここから早く出なくては!しかしそう焦るたびに余計考えがまとまらずにいた。
そんな時、俺はある作戦を思いついた。
「中濱中濱!ちょっと協力!」
俺は中濱を呼んだ。
「ん?お前、一体何する気だよ?」
「それが・・・ごにょごにょ。」
俺は誰にも聞こえないように中濱の耳にそっと打ち明けた。
「えぇ?それで壊せたら問題ない気がするんだけど・・・?」
中濱はどうやら乗り気じゃないらしい。
「仕方ないだろ?やらないよりはよっぽどマシじゃないか?」
俺は彼を説得にかかった。
「まあ・・・そうだけどさぁ・・・仕方ない。一回だけだぞ?」
中濱は渋々納得した。
「いくぜ!せぇーのぉ!」
俺達は両手をがっちりと組み合わせ、大きく振りかぶって、そのままさっき叩き込んだところにぶつけた!これでダメならまた考えるしかないと思っていた。そして・・・!
ズドオオオオオオオオオオオ!
何も無い壁に鈍い衝撃音が響き渡る!しかし!
バチイイイイイイイイイイッ!
ズタァッ!
あまりに弾かれた衝撃が強かったので、俺達は後ろにのけ反った勢いでクルッと一回転してこけてしまった。
「いってぇ・・・これでダメかよ・・・。」
俺は打ち付けた頭を摩りながら言った。
「あぁ・・・。どうしようか・・・。」
中濱も頭を抱えている。
さて、万策尽き果てた、とはまさにこのことであろう。昔の人はよく言ったものだ。俺は個人的には昔の人の言葉ほど嫌いなものはなかったが、今なら気持ちが分かる気がする。
しかしこのままではここから出られないのだ。何とかして脱出せねばならない。他に何か手はないものなのか。
あれこれ考えてるうちに、俺はある一つの方法を考えついた。しかし俺にはそれを出来る自信なんてかけらもなかった。しかしそんなことを考えて立ち止まっている暇なんてない。この間にタレーランさんの命が危うい可能性だってあるんだから。やるしかない!
俺はすっ、とそこから立ち上がると壁の前に立った。そして深呼吸を一つすると、そのまま壁に拳を向けた。
「お、おい。お前、一体何を・・・?」
「このままフォーム・アドベントで威力を足して突き破る。」
俺は止めようとした中濱の言葉を遮るように言った。
確かに
「フォーム・アドベント」にはカプセルを飲まずに能力を発動する効果がある。しかしそれはあくまで生身の人間の状態での話で、そうじゃなければ不可能だと自分の中でも思っていた。でもそれじゃあダメなのだ。生身の拳などたかが知れている。壁に弾かれて拳を壊すのがオチだろう。だからこそこの不可能に挑戦する必要があるのだ。
「お前、そんなことできると思って・・・」
「出来るかは知らねえ。でもやるしかないんだ!やらないで出来ないなんて決め付けるなんて絶対嫌だ!」
そこまで言うと、俺は激しく気を吐いた!
「うおおおおおおおおお!」
ドシュウウウウウウウウ!
俺の周りにまばゆい光の渦が巻き起こる!
俺は念じた。なんとしてもここから脱出する。そして、トルムとかいう糞爺の鼻を明かしてやる!
「うおらあ!」
俺が右腕を振り上げたその時!
ヒュオオオオオッ!
俺の拳に白い吹雪が宿った!出来た!そしてそのまま壁にその冷気の拳を叩き込んだ!
ドガアアアアアアアアッ!
ここまではさっきまでと同じだった。しかし!
ピシピシピシピシピシピシ・・・
拳に宿った冷気が壁を凍らせているではないか!そして!
パリイイイイイイイン!
凍った所が薄くなったのか、その壁は音を立てて崩れ落ちた。
ギュルルルルルルル!
崩れ落ちた所に凄い勢いの渦が巻き起こり、俺達はそこに吸い込まれていった。
「う、うわあああ・・・」
ドサドサッ!
俺達が落ちた目の前には巨大な地下への階段が広がっていた。間違いない。ここがブラッド・オニキスの本部だ。
「さて、行くぞ、中濱。」
俺はすぐに立ち上がると、その階段をゆっくりと降りていった。
「あ、おい!ちょっと待てよ!」
中濱も某有名グループのイケメン歌手のモノマネをしながら俺の後をついてきた。
カンカンカンカンカン・・・
鈍い金属音が鳴り響く。結構長い。疲れた。
「なあ・・・まだかよ・・・?」
中濱も流石に息が切れてきたようだ。
「さあ・・・な。知ら・・・ねえ・・・よ。」
そう言う俺ももうふらふらだ。足が上がらない。
そこからしばらくして、俺達はようやく最下層にたどり着いた。長かった。途中で3回くらい休憩した。
「すみません。会長に呼ばれて来ましたが・・・。」
俺は必死にジャパニーズ・スマイルを浮かべながら尋ねた。
「あ、会長なら奥にいらっしゃいますよ。」
そう言ってその人は奥の部屋まで案内してくれた。
「こちらが会長がおられる部屋になります。」
こうして、俺達は言われるがままに中に入っていった。
「失礼します。」
俺達は深く一礼した。
「おお。わざわざ遠いところからよく来たのぉ。」
見ると、そこには毛むくじゃらで髭が胸の所まで生えた大男が座っていた。予想は何となく当たっていた。
「あなたが、トルムさんですね?」
「いかにも。ワシがこのブラッド・オニキス会長のトルムじゃ。別に『さん』付けで呼ぶ必要はないぞ。」
彼はたっぷりとした髭を触りながら答えた。あまりに温和でそつのない動きに、俺は圧倒されるばかりだった。
「それで、用件は何じゃ?」
「えーと、用件は二つあるんですよ。一つはタレーランさんの居場所を掴むのに協力してほしいってことです。発信機の電波の逆探知とかですね。」
「おぉ。それはお安い御用じゃよ。こっちとしてもあのガラクトスの野郎を野放しにしておく訳にはいかんからのお。」
会長は胸をドンと叩いた。予想以上に快諾してくれたので、俺としてはそれは非常にうれしかった。
「で・・・二つ目は?」
俺はわざと深く深呼吸をして質問した。
「どうして俺達をあの空間に閉じ込めたんですか?」
と。
「お、おい。いきなり何を言い出すんだ・・・」
そこまで言いかけた中濱を俺はやんわりと制した。
「ほお。それではその根拠はどこから来てるのかな?」
会長の顔は依然平然としている。
「以前『フォーム・アドベント』で出て来る様々な能力、今回は氷でしたが、それと普通にカプセルを飲んだときの能力は少し違うというのを聞いたことがあって、最初中濱と二人で全力で殴っても傷一つつかなかったのに、『フォーム・アドベント』を使ってやったら一人分の力で壁を破れたからです。」
俺は淡々と説明した。
「・・・ガッハッハ!どうやらワシの負けのようじゃの。いかにも、ワシがほんのちょっと亜空間に細工をして君達をわざと閉じ込めたんじゃ。」
会長は大きく笑ってから言った。やはり考えていた通りだ。そうでもしないとあんなに長く出れなくなることはほぼないと思っていたからだ。
「でもそれじゃあ一体何故・・・?」
中濱がようやく口を開いた。
「それは簡単じゃよ。君達を試験したんじゃ。」
「試験・・・ですか?」
「そうじゃよ。これから君達は数々の危険な状況に直面するじゃろう。時には厳しい選択を迫られることがあるかもしれん。しかし君達はそれでも戦わなくてはならないのじゃ。宇宙の平和のためにのお。だからそれの予行演習とでも考えてくれ。」
会長はゆっくり息を整えながら、しかしそれでも冷静に答えた。そして俺の肩にポン、と手を置くと
「どうやら君はワシが予想していたのよりも遥かに高いポテンシャルを秘めているようじゃの。これからも精進せいよ。」
と言った。
「は、はい!ありがとうございます!」
俺は思わず笑顔で深々と頭を下げた。
「それで・・・俺は?」
中濱が自分を指さす。
「ああ。ナカハマ・・・じゃったな。御主もなかなか筋が良いぞ。努力次第でもっと強くなれる。」
ただ彼の答え方は少し投げやりのような気もした。
「はあ・・・、ありがとうございます。」
中濱はどこか腑に落ちないらしいが、とりあえず一礼した。
「それで・・・逆探知の話を本題に移してもいいですか?」
「ああ。」
「今から逆探知を始めると、探知するまでどのくらいかかりますか?」
俺は会長に聞いた。ここが1番大事だ。あまり期間がかかるようだと、彼女の命に関わる。
「うーむ・・・、もう地球にいない可能性の方が高いから全宇宙に探知をかけるとして・・・最短でも大体20分くらいかかってしまうかのお。」
会長は腕を組みながら言った。
「あ、それじゃあよろしくお願いします。」
俺は席を立つと、彼にまた深く一礼した。
「うむ。それじゃあ早速仕事にかかるかのお。中濱君。器材の支度があるから、探知班の仕事を手伝ってきなさい。君は話があるからここに残りなさい。」
「はい。」
俺達は言われるがままにそれぞれの場所へ行った。
「それじゃあ君に大事な話をしようかの。」
果たしてトルム会長の口から語られる『大事な話』とは!?
To be continued...




