第30章:真実
はい、どーも。作者です。投稿ミスが起きてしまい、申し訳ございませんでした。しっかりと直しましたので、本編をお楽しみ下さい。
前章で、サミュエルさんがタレーランさんを誘い込み、彼の宇宙船に連れ込んでいった。
今回のお話は、そこでの二人の会話が中心となります。
しばらく、タレーランさんの視点でお楽しみ下さい。
私は心が躍りに躍っていた。もうカーニバル状態だった。
何せ、知り合ってまだ三日かそこらの男性から、
「もしよかったら、俺の宇宙船に来てくれませんか?」
だって!いやあ、私、どうしよう!もしかして、告白されたりとか、ひょっとしたらベッドに押し倒されて、あんなことやこんなことまで・・・。私の妄想は膨らむばかりだった。けれども、もしそれが本当だったら、私、別にそれでもいいかなぁ、とまで思っていた。
なんて思ってる内に、私は自分の宇宙船に戻ってきた。私は普段、ここで暮らしている。
中に入ると、簡単なキッチンセットとユニットバス、それにベッドと通信用のトランシーバーくらいしかない。あとはコックピットが奥にぽつんとあるだけである。
「はあ〜あ。」
私はベッドに寝転がると、大きく溜め息をついた。正直いって、こんな状況は初めてだった。しかし、折角呼んでもらったのだ。ここはひとつ、女の子らしく何か料理を作って持って行こう。私はそう考えると、ベッドからゆっくり起き上がり、キッチンへと向かった。
私はこう見えても、料理には自信がある。簡単な料理くらいなら全然平気なのだ。これが私の数少ない特技の一つでもあった。
「えーと・・・なんかなかったかな・・・。」
私は棚の中を漁った。そうすると、小麦粉と、卵が数個、それからひき肉が少し出てきた。
「さあ、これで何か作るとしようか!」
私は早速、小麦粉に水を入れて、じっくりこね始めた。
しばらくして生地が出来たので、ひき肉を炒めながら、卵を流し込み、できたモノをそのまま生地にぶち込むという無茶苦茶な行為を発動した結果、何とか食べられそうなものができた。
ちなみに普段はもっと適当に料理を作っている。食糧といえば三日に一度、オニキス本部から送られてくるくらいである。だから気をつけていないと食糧がすぐにそこをつくので、なかなか贅沢が出来ないのが現状だ。
「よし!これでいいわね。」
私はパックにそれを詰めると、今できる最高のおめかしをして、彼の宇宙船に向かうことにした。
「てんたてんたてんとんっとと〜!」
私は気分がよかったので、鼻歌を歌いながら行った。何だか誰かにつけられてる気はするけど、そんなことは気にならなかった。
「よし、やっと追い付いたぞ。」
そのあとをつけている人物は、この俺(主人公)だった。さっきその一部始終を聞いていた俺は、彼女にばれないように、こっそりと尾行をしていたのである。はたから見れば単なるストーカーに思われてしまうので、ばれないようにすることは必至だった。
10分後、タレーランさんはサミュエルさんがいるらしき宇宙船に到着した。俺はすぐ後ろの木に隠れた。
PING-PONG!
「はい。あ、タレーランさんですか。どうぞ、こちらに上がってください。」
中からはサミュエルさんが出てきて、彼女を中へと招き入れた。彼女は一緒に中へと入っていった。
「よし!早速作戦開始だ!」
俺はそっと彼の宇宙船に近付くと、二人が話すであろう部屋の壁にこっそり盗聴器を仕掛けた(良い子の皆は絶対に真似しちゃダメだよ!犯罪だからね!)!
それから俺はまたゆっくり近くの木へと戻って、ぎりぎり聞こえる音量まで小さくしたヘッドフォン(盗聴器から声を聞く為)を付けて、彼らの動向を見張ることにした。
ここからはより臨場感を出すために、再びタレーランさんの視点でお楽しみ下さい。
「あ、どうぞそちらにおかけ下さい。」
サミュエルさんは私に席を勧めてくれた。私は素直にそれに従って、席についた。
「・・・」
長く耐え難い沈黙が流れる。そんな中で、先に口を開いたのはサミュエルさんだった。
「あ、今日呼んだのにはちょっとした訳があるんですよ。」
サミュエルさんは真剣な顔で答えた。その顔があまりにも真剣だったので、私は一瞬どぎまぎした。
「え・・・、どうかしたんですか?」
私はひたすら照れ隠しをしながら答えた。
「いや、実は、君に謝らなければいけないことがあるんだ。」
彼は続けた。
「いえいえ、とんでもない!私は謝られるほど大それた人間ではありませんよ。」
私は彼の話を咄嗟に否定した。
「いや、謝らなければならないんです。何せ、あなたの過去に関する話ですからね。」
私は彼のその一言に、戸惑いを隠せなかった。どうして彼があのことを知っているの・・・?どうして彼がここで謝らなければならないの・・・?私には理解できないことだらけだった。
「え・・・?あなたが私の過去を知っている訳が・・・」
「いいえ、知っているんですよ。」
私が否定しようとした時に、彼が割って入った。
「なぜなら・・・」
彼は一度、私から目線を反らしたあとで、ゆっくりと重い口を開いた。
「なぜなら、あの時君の両親を守ったのは・・・俺だったんだ・・・。」
私は突然言われた衝撃の一言に、開いた口が塞がらなかった。もうどうしようもなかった。
ドサッ!
私の目の前は一気に真っ暗になって、そのまま気を失ってしまった。
「・・・丈夫ですか?大丈夫ですか?タレーランさん?」
気付くと、私は彼のベッドに寝かされていた。
「あれ・・・?私は一体・・・?」
私はゆっくりと起き上がろうとした。
「あ、まだダメですよ!そんなに急に起きたら・・・。」
彼の温かい手が私の肌に触れて、そのままベッドに再び寝かされた。私は顔が一気に赤くなるのを感じた。
「なんか・・・ごめんなさい。いきなりあんな話をすれば、気を失うのも当然ですよね。」
彼は気を遣っているようだった。
「いえ・・・良いんです。そう・・・だったんですね。」
私は少しうなだれた。あの時、私の両親を命を賭けて守ろうとしていた人が、まさかサミュエルさんだったなんて・・・。私は未だにその状況が飲み込めずにいた。
「それにしても・・・あの時、どうしてあそこまで命を賭けて、私を、それから私の両親を救おうと思ったんですか?普通に考えたら、おかしいじゃありませんか!」
私は彼に尋ねた。すると、彼はニッコリ笑って、
「ああ、あの時は君の健気な瞳を見て心を打たれたからだよ。つまり、君が僕をあそこまで突き動かしたんだ。」
と言った。私は言葉が出なかった。男性にそんなことを言われたのは初めてだった。しかし私はそのまま彼の胸に飛び込みたい衝動を必死にこらえ、彼に更なる質問をした。
「でも・・・それにしてはあの時の面影が一切ありませんけど・・・?」
すると彼はこれまた笑顔で答えた。
「ああ。あの時の凄まじい攻撃で、体がボロボロになってしまったんですよ。だからそのついでに整形を施して顔を変え、声も半ば無理矢理変えちゃったんです。そうすればまた組織に戻って色々と謀略を練ることが可能でしょ?」
私は確実に聞いてはいけない質問をした気分だった。彼もまた、辛い過去を背負ってきた一人なのだと実感した。
私はその瞬間に涙が零れてきた。私の気持ちを分かってくれそうな人がいる。私はそれだけで幸せだった。私はサミュエルさんの胸に飛び付くと、そのまま泣き崩れてしまった。
「え、ちょっと、どうしたんで・・・」
「お願い。このままでいさせて・・・!お願い・・・!」
私がそう言うと、彼は私をそっと抱きしめてくれた。私はそのまましばらく彼からずっと離れなかった。
しばらくして、私はそろそろ彼の宇宙船をあとにすることにした。
「あ、そうだった。これ・・・私が作ったんです。よかったら食べてください・・・。」
私は来る時に持ってきた、自信作の入ったパックを取り出して、彼に渡した。
「ありがとうございます。後でゆっくりといただきます。」
彼は笑顔で受け取ってくれた。私はただそれだけで嬉しかった。
「それじゃあこれからも、あの子達の指導、よろしくお願いしますね。」
私は彼に頭を下げて、宇宙船をあとにした。
「うんうん。いい話だなあ。」
この一部始終の全てを盗聴していた俺はジーンときていた。サミュエルさんがあの時の少年だったことには驚いたが、過去を知っている二人ならもしかしてこのままFall in loveというパターンも有り得るかもしれない。よし、俺は二人を陰ながら応援するとしようか。俺はそう決心した。
それから俺はゆっくりと木から降りて、さっき仕掛けた盗聴器を回収することにした。でもここでばれたら、今までの苦労が水の泡になってしまう。だから俺は始めよりも集中して挑むことにした。
そろっ・・・。そろっ・・・。
俺はゆっくりと宇宙船に近付いていく・・・。
「むっ!くせ者!」
シュバッ!
サミュエルさんはどうやら察知したらしい。流石は十二魔将といったところだろう。俺は間一髪、彼の一矢をかわし、宇宙船の下に身を隠すことが出来た。
「くそっ!いくらなんでも強すぎるぞ?仕方ない。こうなったら実力行使だ!」
俺はそう思った。俺は素早く体を少しだけ出して盗聴器を捩り取ると、覚悟を決めて全力で走り抜けた!
その素早い決断のおかげで、俺はサミュエルさんの容赦という文字が見当たらない矢の雨を、どうにかくぐり抜けたのだった。
「いやあ、危なかったわぁ。」
宇宙船から大分離れた後に、俺はホッとため息をついた。
それから今日は他にすることがないので、俺はホログラムキーを取り出して、自主修行をしに行くことにしたのだった。なんとしてでも、一刻も早く
「フォーム・アドベント」をマスターせねばならない。俺は少し焦っていた。今は誰も襲って来なきゃいいけど・・・。
しかし不幸にも、俺の予感は的中してしまったのである!
To be continued...




