第26章:過去(中編)
はい、どーも。作者です。早いもので5月です!五月病になんてなっていませんか?俺はバリバリ元気です!執筆は止まってますが・・・。さて、この章は友人であるプラスチック爆弾氏からも太鼓判を押されました傑作です!それから彼の作品もよろしくお願いします。「不機嫌な人々」です。それでは、本編をお楽しみ下さい。
前章で、過去の私は家族との楽しい時間を過ごすはずだった。しかしその時、激しい爆発音と地響きが私の家に響き渡ったのである。
「え!?一体何があったの!?」
母は当惑しているようだった。それも当然である。なにせ、いきなりの襲撃だったから。
当然私も驚いた。窓から外を見ると、少し向こうの方から煙と炎が上がっていた。しかし、それだけではなかった。
ヒュルルルルルル・・・
ドドドドドドド!
空から無数の光の筋が落ちてきたかと思うと、激しい爆発音と共に、さらに大きな炎が巻き起こったのである!
私はその目に入ってくる光景が信じられなかった。街が、家が、学校が燃えている・・・。私はその光景を信じられなかった。いや、信じたくなかったと言った方がいいかもしれない。
「ねぇ!パパ、これは一体どうなってるの!?怖いよ〜!」
私は泣きながら父に抱き着いた。父はその悲惨な光景をただ真っすぐに見つめながらも、私の肩をそっと持ってくれた。
「あなた!?一体どうするの!?ねえ!」
母はもう完全にパニック状態だった。
「落ち着け!!」
父の怒声に母は黙りこくった。
「いいか?こんなことをする奴はあいつしかいない。」
父は冷静に言った。私はその言葉に耳を疑った。
「あいつ?パパ、あいつって・・・あ!」
私はガク然となった。父が言った
「あいつ」というのが分かったからだ。あいつとは、そう、ガラクトス一味。今朝の新聞でそれはもういかつい顔をして写っていたことを覚えていたからだ。それに私はもう一つ理由が分かった。彼らが捕まってた理由。それは・・・
いろいろな星を壊滅させていることだった。
「ねえ、パパ!私達の星は、一体どうなっちゃうの!?」
私は泣きながら父に聞いた。恐怖で涙が止まらなかった。それだけ目の前に広がる光景は悲惨なものだった。
「タレーラン。実はな、近くにシェルターを作ってあるんだ。今からそこに避難しよう。」
父は言った。
「いやだ!まだ私の誕生日ケーキ、食べてないもん!」
私は食卓を指差しながら、父の言葉に反対した。それだけは嫌だった。
「タレーラン!自分の命を守るためだぞ?今はパパの言う通りにするんだ!」
父は少し声を荒らげた。それに、いつになく目に力が漲っていた。
「・・・パパ。きっとこの家に帰ってこれるよね。またママのおいしい料理、食べられるよね?」
私は父に尋ねた。
「ああ、もちろんだ。またちゃんとこの家に帰ってきて、ママのおいしいご飯をいっぱい食べような!」
父はとびきりの笑顔で答えた。
「うん!」
私も今できる最高の笑顔で答えた。きっと父の笑顔に触発されたのだろう。不思議と顔がほころぶのだった。
「さあ、今すぐシェルターへと向かおう。早くしないとこの家も吹き飛ぶからな。」
父は冷静に言った。
「ええ、わかったわ。タレーラン、いくわよ!」
「うん!わかった!」
私は父からのプレゼントである小さな熊のぬいぐるみを持って、私達家族は着の身着のままでシェルターへと向かうことになった。
外へ出てみると、それはもうひどい状況だった。一面が焼け野原と化していた。
家を吹き飛ばされた人達はさてこれからどうするか、と考える余裕もないまま、方々へと逃げ惑っていた。けれども、皆どこかしら怪我をしている。足に火傷を負っている人、明らかに腕が折れている人、更には腕が吹き飛ばされたらしく、片腕の肩から先が消し飛んでいる人もいた。そのせいか、至る所に紅い血が飛び散っていた。私はその時、私達はまだマシだということを悟った。
私はこの受け入れたくない現実に、思わず目を背けた。すると父が私の頭を持って、ぐいっとその光景まで戻した。
「何するの、パパ!?私、こんな景色見てられないよ!」
私は父の手を振り払いながら言った。
「いいか?タレーラン。これは夢とかなんかじゃない。紛れも無い真実なんだ。こんな現実から目を背けたい気持ちも分かる。けれども、しっかりと今を見つめるんだ。パパはお前にこの景色を忘れないで欲しい。それだけだ。」
父はこれまたいつになく重たい表情をしたまま、私の肩にポンと手を置いた。そしてただじっと前を見つめていた。
それからしばらくして、私達家族は気を取り直してシェルターへと走り出した。
私は父に手を引かれながら、一心不乱に走った。そして右手にはしっかりと、父がプレゼントしてくれた熊のぬいぐるみが抱かれていた。私はそれを決して離さないことを心に誓ったのだった。
どれだけ走ったかは正直分からない。ただ、周りの景色が見渡す限りに何もなかったのだけは目に焼き付いている。
程なくして、ようやく父の作ったシェルターにたどり着いた。
「よし、やっと着いたぞ!」
父も母も、それから当然私も、皆へとへとだった。ただ、私の右手にはしっかりと、熊のぬいぐるみが抱かれていた。少し砂埃で白茶けてしまったので、私は疲れた体で必死に熊をはたいた。物凄い砂埃が巻き上がり、私はかなり噎せた。
「さあ、タレーラン。中に入るとしよう。早くしないとガラクトスの連中が来てしまうからな。」
父は私に中に入るように急かした。
「分かったわ。」
私は父に連れられて、シェルターの中に入っていった。
思ったより中は広かった。そして、小さいながらもある程度の生活用具がしっかりと整えられていて、ちゃんと布団もあった。
「いやあ、ここを買うのには苦労したんだよ。競争倍率高かったからなあ。」
父はしみじみと言った。しかしそんなことは気にならないまま、私は倒れ込むようにして寝てしまった。
「ほら、起きろ。タレーラン、起きろ。」
私は次の日の朝、父に揺り起こされた。ちゃんと近くには昨日もらったぬいぐるみもいた。私は少し安心した。そうだった。私は今シェルターとかいうところにいるんだっけ・・・。私はまだ眠い眼を擦りながらそう思い返した。
思えば昨日はいろんなことがあった。
私の誕生日ということもさることながら、何だか知らないけどガラクトス一味がこの星を壊滅させようと襲撃を開始して、私達家族は着の身着のままこのシェルターに逃げ込んできたということも、紛れも無い真実だった。考えたくもないけど、受け入れなければならない現実・・・。私にはそれがとにかく辛かった。
「あ、そういえばパパ。学校は?会社は?」
私は思い出したように聞いた。
「ああ、今日は全部お休みだってさ。まあ、こんな状況だからそれも仕方ないか。」
父はやれやれという感じで答えた。
そこで私はシェルターの中で遊んでいることにした。といっても、持ってきたものは熊のぬいぐるみだけ・・・。私は熊の目線まで寝転がって話してみることにした。
「ねえ、あなたは一体どこから来たの?」
よくよく考えればありきたりな質問だった。
「・・・」
熊は何も答えなかった。
「それじゃあ何か好きなことでもある?」
私は気を取り直して、更に質問を重ねた。
「・・・」
しかし、それでも熊は何も答えなかった。
「え〜っとねえ・・・そうだ!あなたの友達ってどこにいるの?」
私は今心の中で1番思っていることを聞いた。
「・・・」
しかしながら、相変わらず熊は何も答えなかった。
「・・・ねえ。何か答えてよぉ。・・・ぐず・・・ねえったらぁ!うわああああぁぁぁ!」
そこまで言うと、私は泣き崩れた。とめどない涙が溢れ出してきた。
本当は分かっていた。ぬいぐるみが何も喋らないことなんて。けれども悲しかったのだ。とにかく悲しかったのだ。
今のこの攻撃の状況を見ると、友達は少なからず怪我をしているだろう。場合によってはもう二度と会えないかもしれないのだ。だからどうしても話し相手が欲しかったのだ。
私は泣きに泣いた。涙が枯れそうになるくらいまで泣いた。もうこの悲しさは一生忘れられないだろう。
しかし、このあと惨劇が始まりを告げるのだった。
ドガアアアァァァン!
何やら物凄い音がする。危険だ。私は子供ながらにそれを素早く察知した。だから私は怖くてたんすの中に身を隠したのだった。
「おぉい!ガラクトス様からの命令だ!この星で怪我をしていない者は、全員ガラクトス様の船へと連行されることになった!」
大変だ!ガラクトス一味がこんな所まで来ている。もう私にはどうすることも出来なかった。
「もちろん逆らうようなことがあれば、お前等の首が飛ぶぜ?」
という発言の後に、チャキッという音がした。どうやら刀かなんかを両親に突き付けたらしい。殺される・・・。私はそう感じた。けれども私はたんすから出れなかった。行けばやられることくらい分かっていたからである。
「さて、こちらへ来てもらおうかな。そこのたんすに隠れているお嬢ちゃんもね。」
私はその発言に耳を疑った。どうして分かった?私にはそれが複雑でたまらなかったが、ここは素直に従うことにした。
私は渋々たんすの中から出て来ると、何も言わない熊のぬいぐるみをしっかり持って、両親と一緒についていくことにしたのだった。
しかしながら、この選択がいかに間違っていたかを、私はまだ知らなかった・・・。
To be continued...




