第25章:過去(前編)
はい、どーも。作者です。この章からタレーランさんの長い長い過去話に突入します!個人的にはこの辺が1番気に入ってます。結構自信がありますよ。それから、PVが3500を突破しました!作者も驚きのペースです。これからも遅筆ながら頑張って書こうと思います!それでは、本編をお楽しみ下さい。
前章での敗北の後に、保健室で俺はタレーランさんから、彼女の両親が殺されたあの日のことを詳しく聞くことにした。
彼女は一回口ごもった後で、静かに語り始めた・・・。
宇宙暦2463年、私は小さな会社に勤める厳格ながらも優しい一面を持つ父と、子煩悩な母の間に生まれた。
父はよく叱ったが、私の誕生日にはいつも会社の仕事を早めに切り上げて帰ってきて、家族全員で祝福してくれた。私はそれが凄く嬉しかった。
しかし、そんな平凡な暮らしは長くは続かなかった。
それは私が10歳の誕生日の日のことだった。
「むっ、こいつら、また脱獄したのか!?いやはや、警察もどうしてコイツを抑えて置けないんだ。なあ、母さん。」
父は新聞の記事を見ながら朝食を取っていた。何やら今日は大事な会議があるらしい。いつもより早めの朝食だった。
「そうね。何もなければいいけど・・・。」
と母は少し心配そうな表情を浮かべて言った。
私は父が読んでいた新聞の記事を覗き込んだ。そこには一面にでかでかと
「ガラクトス一味、また脱獄!」という見出しと、いかにも悪い人っていうような顔をした男が掲載されていた。
「ねえ、パパ。この新聞に載っている人って、そんなに悪い人なの?」
私は父に聞いた。
「そうだよ、タレーラン。この人は昔から色んな星で悪さをしていて、宇宙手配になっていたんだ。それで何とか警察が捕まえたんだけど、牢屋から抜け出しちゃったんだ。」
父はそう答えた。
「悪さって?一体どんなことしたの?」
私は更に聞いた。
「タレーラン。それは聞いちゃダメだ。口外すると何が起きるか分からないからな。」
父は私の質問を否定した。
父が私の質問を否定したのはこれが初めてだった。いつもの父ならもっと私の話を信じてくれるのに・・・。私は子供心に傷ついた気がした。
「何さ!いつもならちゃんと答えてくれるのに!酷いわ、パパ!」
そういうと、私は部屋に戻って激しく泣いた。悲しかった。とにかくそれしか合う言葉がない。とめどなく流れ出す涙を、私は止めることが出来なかった。
それから少しして、父が会社に行く時間になった。
「あなた、今日が何の日か、忘れてないわよね?」
母が父に尋ねた。
「ああ、もちろんさ。忘れるわけがないだろう?何てったって、可愛い娘の誕生・・・あ!」
父は突然思い出したかのように、私の部屋まで駆け上がってきて言った。
「タレーラン、悪かった!俺の気配りが足らなくて、お前を傷つけてしまったな。代わりに帰って来る時に、なにか欲しいものを買ってきてあげよう。約束だぞ?」
「本当!?それじゃあね・・・可愛い縫いぐるみが欲しいの。それもあまり大きくないのが。」
私の機嫌は一発で直った。子供ってプレゼントに弱いらしい。
「え!?何でだ?もっと大きいものじゃなくていいのか?」
父は私の質問に少し驚いたようだった。
「だって、あんまり大きかったら一緒に寝れないでしょ?だからあまり大きくなくていいの。」
私はそれらしい答えを言った。
私は小さい頃から人とは少しズレていたらしい。他の子と意見の合わないこともたくさんあった。だからこんな子供らしからぬ現実的なプレゼントを父にねだったのかもしれない。
「そうか、わかった。ちゃんと買ってくるから、楽しみにして待ってるんだぞ?」
「うん!分かった!」
私は涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、笑顔で答えた。
「よし!いい子だ。さてと、パパは会社に行ってくるぞ。」
と言って、父は玄関へと下りていった。私もそれについていった。
「あなた。今日は早く帰ってきてちょうだいね。」
母がもう一度父に釘を刺した。
「もちろん!会議もきっちり終わらせて帰ってくるさ。それじゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
父はネクタイを直して靴を履くと、いつものように会社へと向かっていった。私はそれを手を降りながら見送った。
「さあ、タレーランも学校ヘ行く時間よ。支度をしてきなさい。」
「は〜い、ママ!」
私はもう一度部屋に戻ってランドセルを取ってきて、ゆっくりと朝食を食べて学校ヘと飛び出した。
ガチャッ!
「ただいま〜!」
私は学校から猛ダッシュで下校した。正直いって、学校で何が起きたかは覚えていなかった。理由はもちろん、自分の誕生日だというのに勉強してるような状況ではなかったからだ。
「あら、お帰りなさい。」
「ママ、ちゃんとケーキ焼いてくれてる?」
私は今日の2番目に大事な質問をした。
そうである。母は毎年、私の誕生日とクリスマスの日には、手作りのおいしいケーキを作ってくれるのだ。私はそれがどんな腕利きのパティシエが作った高級ケーキよりも大好きで、もちろんおいしく感じていたのだった。
「ええ。もちろんよ。今年はね・・・じゃ〜ん!ちょっと凝ってみたわ。なにしろ、あなたが生まれてちょうど10年目だからね。」
母は笑顔で言った。私が不思議に思ってケーキを見てみると、そこには大きなチーズケーキがどっかりと出来上がっていた。チーズケーキは私の大好物だった。
「やった〜!ママ、ありがとう!」
私は辺りをはしゃぎ回った。
「他にもたくさんあなたの大好物を用意してあるからね。それじゃあパパが帰ってくるまでに、ちゃんと宿題を済ませておくのよ。」
母は私の頭を撫でながら言った。
「は〜い!」
そう言うと、私は自分の部屋に上がり、ノートを開いてさっさと宿題を始めた。幸い今日の宿題は半分くらい学校でやってきたから比較的早かった。
「よし!終わった!」
私はノートをまたランドセルにしまうと、一つゆっくりとのびをした。それから私は下ヘと降りていき、父の帰りをテーブルに座って待つことにしたのだった。
「パパ、遅いね・・・。」
遅い。いくらなんでも遅すぎる。父は普段帰ってくる時間にさえも帰ってこなかった。
「ねえ、ママ。パパ、私の誕生日忘れちゃったの?」
私は少し涙ぐみながら母に言った。
「そうね・・・。忘れてはいないだろうけど、会議が長引いているのかしらねえ。」
母は首を傾げながら言った。
父の会社の会議はいつも長いことくらいは私でも知っていた。まずは社長の長ったらしい話が延々と続くというのを父から聞いたことがある気がする。
ガチャッ!
「ただいま〜!」
「あ、パパだ!お帰り〜!」
ドタドタドタドタ・・・。
私は父の声に気付き、玄関へと走っていった。
「あなた、今日はどうしてこんなに遅かったの!?あれほど早く帰ってきてねって言ったじゃない!」
母はあまり機嫌が良くなさそうだった。
「いやいや、実はさ、会議が長引いたのもあるんだけど、これを探すのに時間がかかっちゃって・・・。」
そう言うと父はガサゴソと自分のかばんを漁り、片手で持てるくらいの大きさの包み紙を取り出した。
「さあ、タレーラン。誕生日プレゼントだよ。開けてごらん。」
父は私にそっと言った。私は言われるがままにその包みを開けた。
そこには、私が欲しいと言った小さなテディベアがかわいらしく座っていた。
「ごめんな、タレーラン。これを探すのに時間がかかっちゃってなあ。」
父は少し照れながら言った。
「あなた、一体どこまで探しに行ってたの?」
それでも母はまだ機嫌が良くなさそうだった。
「え?俺の旧友がやっているおもちゃ屋に行ったけど『しばらく休業します』とかいう貼り紙がしてあってダメで、それから隣町にあるおもちゃ屋に行ったけど営業時間過ぎてて閉まってたから・・・。」
父は指折りをして数えていた。どうやらかなりの軒数を回ったらしい。
「あ、そうだった!それだから知り合いのいるベーメン星の奴に頼み込んで転送して貰ったんだった!いや〜、やっと思い出せたよ〜!」
父はホッと胸を撫で下ろしていたようだった。
「それでもあなた、転送費、結構かかったんじゃない?」
「ほら、子供の前でお金の話をするのはやめなさい!そんなこと、今はどうでもいいだろう?」
父は母の一言をすぐに窘めた。
「さあ、タレーラン。誕生日プレゼントだ。受け取ってくれるよな。」
「うん!パパ、ありがとう!」
私はとにかく嬉しくて、父に抱き着いた。父の温かい目と、熱くて優しい心は、今でも私の心に深く焼き付いている。
「さあ、おいしい夕食の時間よ。食卓に着きなさい。」
「は〜い!」
母の勧めに私は笑顔で答えた。そして、私が食卓に向かおうとしたその時だった!
ズドオオオォォォン!
どこかから激しい爆発音が聞こえ、凄まじい地響きが起きたのだ。
そして、この爆発が惨劇の始まりだった。
はたして、惨劇とは一体!?
To be continued...




