第22章:決行
はい、どーも。作者です。ご無沙汰してます。ようやく41章の執筆が終わったこともあり、投稿しました。まだまだ先は長そうです。ぐだぐだにならないように、精一杯頑張ります!それでは本編をお楽しみください。
前章で皆があれこれ画策した計画を、遂に実行する日が来たのだった。
「おはよう。」
今日はいつもより少し早めに教室に入った。
「あ、おはよう。」
唐沢も普通に挨拶を返してきた。とにかく今日はまず作戦を決行するために、ばれることだけは絶対に回避しなければならない。だから俺は平静を保つように努力した。それだけでも結構大変なのである。
ここで計画の説明を簡単にしておこう。まず俺が計画を悟られないように、普通に授業を受ける。そして、昼休みに上手く唐沢を人目につかないところに呼び出す。それはお客様設定で来たサミュエルさんにお任せしてある。サミュエルさんなら相手も作戦会議だと思ってついてくるだろう。
そういうところで、隙を見てタレーランさんが得意だと豪語する鞭でホログラムキーを発動させて、唐沢ごと亜空間に連れていき、俺と中濱で救出するという作戦だ。
この作戦のポイントは間違いなくタレーランさんだろう。彼女がミスれば全てが台無しだ。そこだけが俺は気にかかっていた。
「どうしたの?」
「あ、いや、何でもないよ。担任の授業があるのがつらいだけ・・・。」
そうである。作戦前の鬼門、それはあのエロ担任(剣道部顧問)による数学の授業だ。よりによって昼休み前にありやがる。といっても、数学は毎日あるんだが・・・。
それまでの授業は無難に乗り切った。
体力を温存するために、ばれないように少しずつ寝ていたのだ。
特に国語は多分半分位寝てたかもしれない。
幸いどの先生にもばれなかったが、数学だけはそうもいかない。もし寝ていたのがばれた瞬間に必殺の黒板消しからのチョーク三連星が飛んでくるのだ(第6章参照)いくら修行していても至近距離からの豪速球ならぬ豪速チョークをかわすのは物理的に不可能だ。だから寝るわけにはいかない・・・筈だった。
Zzz...
ダメだ。うつらうつらしてきた。せっかく前半戦は粘ったのに、くじけちゃだめ・・・
「ほほお。この前のテストが良かったからか?随分と余裕だなあ。」
俺は睡魔と格闘して朦朧としている中、担任が俺の横に音もなく立つ気配を感じた。
「せっかくこういう時のために開発したから皆に見せてやろう!喰らえ!必殺・チョーク五稜郭!」
どうやら担任は三連射だったチョークを一度に五発、まるで五稜郭のごとき星のような形で打ち込むという荒業をマスターしたらしい。余計なもんをマスターしてんじゃねえよ。そんなことやってる暇があるなら剣道やってろよ。俺は眠気の中でそう思っていた。
シュバババババッ!
俺はそんななか確実に飛んでくるチョークの音を察知することが出来た。そして・・・
パパパパパッ!
・・・奇跡だ。全て受け止められた。しかも右手一本で。俺は最初、何が起きたかわからなかった。けれども、これは修行の成果といっても間違いはないだろうと納得させた。
そんな俺の半ば奇跡的な、というか神懸かり的な一芸に一同から賛辞と、驚きの拍手が巻き起こった。よ、よせよ。なんか、照れるじゃねえか・・・。
しかし、俺はその時大事な事に気付いたのだった。今日こんなに目立ちすぎてどうすんだよ!目立ったら作戦が実行できねえじゃねえか!
その時、なんか唐沢の方からものすごい痛い視線を浴びせられている気がした。その視線は、正に
「氷の眼差し」そのものだったように思えた。
キーンコーンカーンコーン!
お、終わった・・・。俺は遂に耐え抜いたんだ!いよっしゃぁ!俺は心の中でガッツポーズを繰り返した。さあ、いよいよ作戦の決行だ!
「な、なあ、中濱。例の作戦、上手くいくと思うか?」
サミュエルさんとタレーランさんが作戦を決行しようとしている間、俺と中濱はストレッチをしていた。その時に俺は少し不安になって中濱に聞いてみたのだった。
「うーん・・・なんともいえないかもしれない。」
中濱から返って来たのは気のない答えだった。俺がとにかく前向きな答えを彼に求めようとしたその時だった。
ピンポンパンポン!
「えー、生徒のお呼出しを致します。唐沢夏紀さん、唐沢夏紀さん。お客様がお呼びです。至急玄関まで来て下さい。」
運命のアナウンスが校舎に響き渡った。
「よし!中濱!いくぞ!」
「おお!」
俺達はホログラムキーに手をかけて、一足先に亜空間に向かった。
その頃、サミュエルは唐沢を呼び出していた。
「なあに?せっかくこんな可愛い女の子にとりつ・・・いや、可愛い女の子をわざわざ呼び出すわけ?」
「いや、すまない。」
サミュエルはいつになく緊張していた。この作戦はある意味組織に対する裏切り行為にあたる。だからこのことを悟られることはまかり通らないのだ。
しかし、彼はその時確実に感じ取った。コイツは薄々作戦の事を感じているのではなかろうかと。しかし、そんなことは言ってられない。今は確実に自分の任務を遂行するだけなのだ。今の自分に出来ることは、コイツを人目に付かないところに誘い出す事、ただそれだけなのだ。
「で、どんな御用件で?手短に頼むわよ。」
唐沢がサミュエルを急かした。
「あ、いや。実は組織の話でちょっと相談事があってな。ここで話すと、意味不明な集団に思われるから、どこか人目に付かないところで話をしよう。」
サミュエルはとりあえず用件を話して、彼女を誘い出そうとした。
「まあ・・・それもそうね。そうしましょう。」
唐沢は少し考えたが、結局納得してくれた。
「よし!とりあえず成功した!後は頼んだぞ。タレーランさんとやら。」
サミュエルは心の中でそう思っていた。
「あぁ〜!どうしよう。すごい緊張するんだけど・・・。」
その頃タレーランは、サミュエルが唐沢を連れてくる予定のある鬱蒼とした茂みの中の岩影に隠れていたのだった。
「今までこんな実戦、なかなかなかったからなあ・・・。」
彼女は大きくため息をついた。
そうである。
彼女は正義の組織、THE・ブラッドオニキスに所属はしているものの、下っ端もいいとこで、普段は部屋の掃除と薬品調合が主な仕事だった。しかも、最前線にはなかなか連れていってもらえず、今回の護衛任務が彼女にとって、デビュー戦ということになる。ただ、今までは回復とか後方支援とかだけで済んでいたから、こういう任務は初めてなのだ。
彼女が豪語していた鞭捌きも、確かに訓練時では一番だったが、今は見る影もないくらいに衰えているのは間違いない。だから彼女はものすごく緊張していたのだった。そんなこんなしていた正にその時、
「ねえ。わざわざこんな所に呼び出しといて、まさか、私を汚す気?」
来てしまった。彼女は身と息を潜め、二人の会話を聞きながら、じっくりと機会を待った。
「馬鹿野郎。俺はこんな年下に興味等ない!」
「え〜!?じゃああなたの部屋にある、あのフィギュア達は一体なんて説明をつける気?」
・・・どうやらサミュエルさんはロリコンらしい。これはいい情報をゲットした。後で言い触らしてやろう。彼女はそう思っていた。
「え、いや、あれは・・・。」
あの冷静沈着なサミュエルさんが珍しくテンパっている。結構面白い。
「まあいいわ。とにかく本題に入りましょう。で、組織の話って、一体何なの?ガラクトス様から指令でも預かって来たとでもいう訳?」
唐沢は少し苛々しながら聞いた。
「いやさ、ラグーンの事なんだけどな。」
サミュエルは少し無理矢理話題を作った。
「何?まだ引きずってるわけ?男らしくないわね。もう少ししゃきっとしたらどうなの?」
唐沢は物凄い無表情でさらりと言った。この時、サミュエルの頭の中で、何かが弾け飛んだ。無性に腹が立ったのだ。自分の弟のような存在をこけにされたからである。サミュエルの心の中では、メラメラと憎しみの炎が燃え上がって来ていた。
「おい。お前今、ラグーンの事をこけにしただろ?」
「え?何言ってんの?」
「ラグーンを・・・ラグーンを馬鹿にするんじゃねえぇ!」
シュゴゴゴゴゴゴ・・・。
唐沢の目には、サミュエルの怒りがみてとれた。それもそのはず。彼の体からは、本当に炎が燃え上がってきているではないか!そうである。彼の特殊能力、それは自分の感情を炎に変えられるというものである。
「許さん!食らえ!等等場苡緒武愚羅美手位(ららばいおぶぐらびてぃ!)」
彼の愛弓の弦が引き絞られた。よし、今だ!
彼女は素早く飛び出した。そして得意なはずの鞭を唸らせて、一気にホログラムキーに押し込もうとした。しかし・・・
シュバッ!
唐沢が一気に飛び上がって鞭をかわされてしまった!
任務失敗。この四文字の言葉が彼女の脳裏をよぎった正にその時、
ストッ。
ドサッ!
静かな音を立ててサミュエルさんが放った弓が唐沢に突き刺さった!それじゃあ死んじゃうよ!彼女が助けに行こうとしたときだった。よくみると傷口がない。綺麗にぎりぎりの所で止まっている。
「サ、サミュエルさん!何してるんですか!?」
彼女はあまりに驚いて、彼の所に駆け寄った。しかし彼は何も言わずに、矢の方を指差した。矢先がなかった。
「当たると電流が流れる奴だよ。これなら傷つけずに動きを止められるだろ?」
確かに名案だ。実戦にはこういうテクニックもあるんだと彼女は痛感した。
「よし!亜空間に送り込むぞ!」
「は、はい!」
シュオオオォォ・・・!
はてさて作戦は成功するのか!?四人の運命はいかに!
To be continued...




